映画感想:『アフタースクール』
2008年 06月 06日
母校で中学教師をしている神野は、夜中に産気づいた美紀を病院へ送り届け、出産が無事にすむまで病院で付き添っていた。その後、夏休みだが部活動のため出勤した神野のもとに、同級生の島崎と名乗る探偵が現われた。島崎はふたりの同級生で神野の親友でもある木村を探しているという。確かに木村は昨夜から美紀の出産にも付き添わず、連絡がつかなくなっているのだが…。
監督:内田けんじ
脚本:内田けんじ
出演:大泉 洋、佐々木蔵之介、堺 雅人
婦人科の検診が終わってからは自由時間~♪ ということで、せっかく休みをとっていることだし映画を観て帰ることにしました。上映時間がちょうどよかったので、今回は内田けんじ監督の『アフタースクール』に決定! 考えてみたら、今年劇場で初めて観る邦画です。わたしは邦画も好きなんだけど、劇場で観るのは洋画のほうが断然多くなっちゃいますねぇ。やっぱり大画面で観たいって思わせる迫力があるのは洋画ってことなのかしらん。
観にいった劇場はもうすぐ公開されるクローネンバーグ監督、ヴィゴ主演の『イースタン・プロミス』の上映館でもあるので、入場が開始されるまで新しいチラシなどをゲットしてのんびり待ってました。ミニシアターでさほどキャパが大きくないせいもあるけど、平日の真昼間にしてはお客の入りはまぁまぁでした。半分は席が埋まってたんじゃないかな~。
映画はもうすっごくおもしろかったです!! ミステリ小説でいうと、読んでる人間が気付かぬうちにミスリードするような文章を駆使して、最後にどんでん返しをもってくる叙述トリックが使われているような映画。映像や登場人物たちの会話から、こちらが勝手に前提としてしまう事柄が、実は間違っていたということがわかって「えぇ~っ!?」となるわけですね。でも、振り返ってみると確かに観てる人間が“そうであろう”と思い込んでしまっただけで、登場人物の誰もその前提が正しいなんてひと言も口にしてないんですよね~。
だましの構造でヒネリを効かせて「あっ!」と云わされる映画なので、物語自体はごくごくシンプルです。ひとりの男の行方を探偵と男の親友である教師が追いかけるというわかりやすいものだったのも良かったです。これでストーリーがグネグネ複雑怪奇なものになっていたら、どんでん返しが始まったあたりからわたしはついていけなくなってたかもしれませぬ。
お金に困っているらしい探偵 (佐々木蔵之介) はまぁいいとして、一見人の良さそうな教師 (大泉 洋) も、優しそうなエリートサラリーマン (堺 雅人) も、話が進むにつれて最初に受ける印象とは違う面が出てくるわけですが、別人のような人格が顔を出すわけじゃなくて、あくまでひとりの人間の隠していた (かもしれない) 面が見えてくるという感じ。この“もしかしてこの人…?”という怪しさをかもし出すところがみなさんとってもウマイ! いやぁすっかり騙されちゃいました。でも騙されても悔しさより小気味よさが勝ってしまって、お見事~ッ! と感嘆する気持ちになっちゃう映画でした。
最後に神野が北沢に投げかける「全部わかったような顔して勝手にひねくれて…」という言葉もけっこう説得力がありました。人の裏側ばっかり見てきてそれで人間がわかったような気になっている北沢と、毎日何十人もの不安定な年頃である中学生たちと正面から向き合っている神野との差がくっきり出ていて、とてもいいシーンだったと思います。大泉 洋をカッコイイと思うなんて、自分でも意外だったわ~(笑)。
そうとは知れずはられていた伏線が、後半に入ってからキレイに回収されていくので観てて本当に気持ちよかったです。なにも知らず観る1回めと、すべてわかってから観る2回めでは印象や着目するポイントが違うエピソードがたくさんあるので、リピートしたくなるタイプの映画です。個人的には山本 圭さんとか山本龍二さんが顔を出してくれたのもうれしかったな~。山本龍二さんなんて、その風貌がすでにミスリードさせる要因になってるのがスゴイ(笑)。そうそう、エンディングロールのあとにまだ1シーンあって、伏線を回収していきます。これからご覧になられる方は、劇場内が明るくなるまで席を立たないようにしてくださいね!
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