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映画や本の感想アレコレ。ネタバレにはほとんど配慮してません。ご注意! 


by nao_tya
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読書感想:ドロシー・L.セイヤーズ 『ピーター卿の事件簿』

 「修道士カドフェル」、「ホーンブロワー」と、シリーズ物を次々と読み終えてしまったので、新たにおもしろそうなシリーズ物はないかしら~? と探していて行き逢ったのがドロシー・L.セイヤーズの「ピーター卿」シリーズ。ピーター卿がホームズだとしたら、助手のワトソンには彼の執事バンターがあたるそうで、このふたりの組み合わせはP.G.ウッドハウスのバーティとジーヴスが原型と知って興味を持ったのでした。
 で、まずは手ごろな短編集を読んでみようと手にとったのが『ピーター卿の事件溥 - シャーロック・ホームズのライヴァルたち』。7つの短編が収録されておりました。本は事務所のU地さんから貸していただきました。いつもありがとうございます♪
 読んでみた感想はと云いますと、やっぱり短編集だけあってちょっと物足りないところがあったのと、シリーズを読み進むにつれて進展していくだろう、とある人間関係の結末がこの短編集で明かされてしまい、お楽しみが半減しちゃったのと、執事のバンターがほとんど登場しない! などなど拍子抜けなところもありましたが、ピーター卿がイギリス貴族らしいウィットに富んだお人で、これは長編を読んでじっくりお付き合いしてみたいと思いました。
 ↑で書いたように、モデルがバーティとジーヴスだっていうんで、ピーター卿も相当おマヌケな人なのかと思っていたらさにあらず! すごく頭の回転が速くて鋭い観察眼を持つ優秀な探偵さんでビックリいたしました。ただ、この短編集に限ったことなのかもしれませんが、普通探偵モノっていうと、依頼者が事件の解決を頼みにやってきて、探偵が捜査に乗り出す、というのが一般的だと思うんですよね。ところがこのピーター卿は特に依頼者もいないのに、友人や知り合った人たちから不思議な話を聞きつけては、自分の好奇心の赴くままにそれを調べて事件を解決しちゃうんです。依頼者もいないんだから報酬も当然ないだろうし、まさに有閑貴族の「趣味」で探偵をやっているような感じ。いやぁ優雅だなぁ(笑)。
 その最たるものが「ピーター・ウィムジー卿の奇怪な失踪」で、わざわざイギリス人であるピーター卿がスペインのバスク地方までやってきて、数ヶ月そこに滞在して人を雇ってまでして謎を解いてますよ。よっぽどお金と時間のある人間でないとこんなことできないって!
 7編のうち2編までが嫉妬に狂った男性が、妻あるいは恋人 (愛人?) を害するというパターンで、またそのやり方がかなり陰湿だったのはなんだかな~って感じもしますが、世の中で起こる事件のほとんどが、お金か恋愛を原因としていることを考えたら当然なのかな?
 ちょっと気持ちの悪い、説明のつかない不思議な話として扱われていたものが、ピーター卿の手にかかると、安楽椅子探偵よろしく話を聞くだけで絡まりあっていたヒモをほどくように事態の概要をみとおし、事件を解決していくさまはなかなか爽快です。けっこう陰惨な話もありますが、後味も悪くないし。
 助手役のバンターが名前は出てくるもののほとんど活躍してないのが残念ですが、これは長編でたっぷりと楽しませていただけるかと思います。「銅の指を持つ男の悲惨な話」では、「ぼくはその調査を、うちの執事のバンターに一任した。このような仕事だと、彼は素晴らしい才能を発揮するのだ」なんてピーター卿が云ってますしね。期待しちゃうぞ(笑)。長編第一弾は『誰の死体?』のようなので、近々本屋さんで仕入れてこようと思います♪
by nao_tya | 2006-07-23 23:56 | 読書感想etc.