映画や本の感想アレコレ。ネタバレにはほとんど配慮してません。ご注意! 


by nao_tya
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カテゴリ:読書感想etc.( 33 )

 毎年お正月休みは家でゴロゴロ~という生活なので、長編の小説を買い込んでおくことにしております。てなわけで、今年のお正月本はスティーグ・ラーソンミレニアム』3部作~! さすがに3部作を一気には読みきれなかったものの、順調に読み進めてただいま第3部の「眠れる女と狂卓の騎士」に突入したところです。

 この『ミレニアム』は第1部の「ドラゴン・タトゥーの女」が2010年の「このミス」に入ったりしたので存在は知ってたんですよね。でもタイトルがなんだか強面でどうも触手が伸びなかったのです。でも、今年の2月に公開されるハリウッド版映画の予告を観たらやたらスタイリッシュでカッコいい!! なんかこれはわたしが考えていたのとは違う感じの本かも? というわけで読み始めたのでございます。

 そしたらまぁおもしろいのなんの! 「ドラゴン・タトゥーの女」の下巻に入ったらページをめくる手が止まらず、朝の4時までかかって読み終えちゃった (もちろんその後は爆睡でした…。正月休み万歳!)。いや正直云いますと、出だしはかなりてこずったんです。もともとわたしは翻訳モノは固有名詞や名前になじむまでに時間がかかるんですが、それがスウェーデンのものなんだもの~。ヴァンゲル家の人間たちがなかなか頭に入ってこなくて、読みながら系図を自分で描いて理解につとめました…。

 だがしかし、そこを乗り越えてしまえばあとはグイグイ物語りにひっぱりこまれていきました。主人公は男女2人で、ひとりは雑誌「ミレニアム」の発行責任者ミカエル、もうひとりはかなり風変わり (という言葉ではおさまらないかも…) ながら抜群の調査能力をもつフリーの調査員リスベット。このリスベットが今までにない斬新なヒロインですごく魅力的なのです。

 自分に対する攻撃には徹底的に容赦なく反撃する性質で、敵に回すと非常にコワイ人。リスベットは社会が定めたルールではなく自分のルール、倫理観を優先させます。でもそこには一本太い筋がとおっているので、彼女の過激な行動も納得してしまうのです。「スゴイわ…」となぜか感心してしまうことはあっても、「やりすぎなんじゃ?」という疑問をこちらに抱かせない、有無をいわせぬ説得力があると云えばいいのかなぁ。

 彼女がやたらと女性にモテまくるミカエルとともに一歩ずつハリエット・ヴァンゲル失踪の謎に迫っていくのが第1部「ドラゴン・タトゥーの女」で、リスベットの人格形成に大きな影響を与えた“最悪の出来事”の詳細が判明し、彼女に迫る危険を描くのが第2部「火と戯れる女」。どちらも先が気になってなかなか途中で本を閉じることができない小説でした。通奏低音として女性への偏見や差別、そこからくる暴力などが流れており、作者であるスティーグ・ラーソンのそれらに対する怒りが感じられます。

 第3部はまだ読み始めたばかりで、これからどんな展開になるのか予想がつきませんが、ふくらんだ期待を裏切らない内容だと信じております♪
 2月には映画も公開されるし、いやぁ楽しみだ! ハリウッド版の前に本国スウェーデン版の映画も観たいなぁ。ふたつのヴァージョンのリスベットとミカエルを比較するというのはなかなか贅沢ですよね。

●ハリウッド版映画『ドラゴン・タトゥーの女』の公式サイトはコチラ

●スウェーデン版映画『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』の公式サイトはコチラ
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by nao_tya | 2012-01-16 11:00 | 読書感想etc.
 伊坂幸太郎さんの『モダンタイムス』(講談社文庫版) を読みました~。伊坂作品は大好きなんですけど、本棚ダイエットのために文庫に落ちるのをずっと待ってたんです。ひさしぶりの伊坂ワールド、堪能いたしました。

 主人公はシステムエンジニアの渡辺拓海。会社の先輩・五反田が失踪してしまったため、彼が「ゴッシュ」なる会社のシステムを改良する業務を引き継ぐことになります。問題のシステムはどうやら出会い系サイトで使用されているらしいのですが、簡単な仕様書しかないのでプログラムを解析をしたことからおかしな事態に巻き込まれていってしまいます。

 伊坂さんご自身があとがきで述べておられるとおり、『ゴールデンスランバー』とは双子のように似通ったものがあり、読むとどうしても比べてしまいます。どちらも国家権力というか、巨大な力に主人公が翻弄される、巻き込まれ型サスペンス (こんな言葉ある??) ですが、娯楽性という観点からは『ゴールデンスランバー』にわたしは軍配をあげちゃうかなぁ。でも、『モダンタイムス』は得体の知れない力に個人が押しつぶされそうになる“怖さ”という意味では『ゴールデン…』より勝ってる気がします。

 あと、やっぱりキャラクターがどの人も強烈に個性的で楽しい。本当に平凡そうな渡辺さんでさえ、まさに拷問されている最中に「勇気はあるか?」と聞かれてとっさに思い浮かんだこたえが「実家に忘れてきました」(笑)。この状況でこのこたえ、フツーの感覚ではまず出てこないですよね。そして、物語の冒頭に出てくるこの印象的な「実家に忘れてきました」というこたえが、ラストで変化するのがまた上手いのです。夫婦愛ですよ~。

 渡辺さんの奥さんである佳代子さんの職業や背景とか渡辺さんの浮気相手とか、謎のままのでもやっとした部分も残されるけど、読後感は不思議にすっきり。社会や国家というシステムが産み出す流れに対して個人ができることなんて本当に小さい。いや、ないに等しいかも。それでも自分の手でできることをやろうと試みる主人公たちは、みっともないところもいっぱいだけどカッコよかったです。やれることをやったあとなら、逃げるのも見ないフリして目を逸らすのも勇気だって納得できました。

 単行本が出版された当初は、播磨崎中学校、安藤商会、個別カウンセリングなどなど、物語に出てくるキーワードで検索するとおもしろい特設サイトにたどりついたみたいですが (えぇ、もちろん検索しましたとも~/笑)、いまは消えてしまってるみたいですね、残念~。あと単行本と文庫では、とある事件の真相が改変されているそうな。ストーリー自体に変更はないらしいので、今度そこの部分だけ単行本を立ち読みしにいこっと (貧乏人でスミマセン…)。
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by nao_tya | 2011-10-27 21:18 | 読書感想etc.
 もうすぐ公開される映画『夜明けの街で (角川文庫)』の原作本を読みました~。本は同僚のU地さんに貸していただきました。ありがとうございます♪ 原作者は東野圭吾さん。東野さんの文体はわたしにはとっつきやすく、いつものごとくするする~っと読了。しかしながら、他の東野作品に比べてどうも物語に乗りきれないままエンディングをむかえてしまいました。

 ミステリ色は薄くて、どちらかというと不倫の恋の行く末にミステリをスパイスとしてふりかけたっていう感じ。そこがそもそもわたしのツボから斜め45度くらい外れてるうえに (色恋がメインの小説って、まず自分から進んでは読まないもので)、感情移入できる人がどうも見当たらなかったのが敗因だと思うのです。恋愛モノって、極論すれば主役のふたりが結ばれるか否か、どっちかしか結末がないですよね。となると、登場人物に感情移入できるかどうか (その登場人物の恋を応援できるかと云ってもいいです) が重要なのに、この『夜明けの街で』の人々はねぇ…。

 まず主人公の渡部さん。特別なところはないごく普通の男性で、だから弱いところやダメなところもあるのはもちろん理解できるけど、それに加えて家庭があるというマイナス面を乗り越えて好きになって、それだけじゃなく不倫という行為に走るほどの魅力を、わたしは彼には感じることができなかったのです。リアルな人物像ではあるんでしょうが、中途半端にいい人で、奥さんにも不倫相手の秋葉さんにも結局は不誠実になってしまう姿に、読んでてイライラしてしまった(笑)。

 ヒロインの秋葉さん。15年もの間、大きな秘密を抱えて生きてきている女性なだけあって強いなぁとは思います。その反面、依怙地でどうにも頑なな印象が強いの。父親や叔母に対する強いいきどおりがあってこその沈黙だったのだろうけど、彼女が沈黙を守ることで守られた幸せはなにひとつないし、亡くなった人の家族は15年間気持ちを切り替えることもできず、同じところに立ち止まったままになってしまったわけですよ。それを考えるとやはり同情しきれない。それに渡部さんとの関係も、秋葉さんのなかでとっさの計算で始めた観が強くて (渡部さんに惹かれる気持ちがゼロだったわけではないだろうけど)、好感がもてないんだなぁ。

 同情できる人間がいるとすれば、渡部さんの奥さんの有美子さんでしょうかね。ただ、わたしは彼女が苦手、というよりコワイのだ~。夫の浮気を察していながら怒りや悔しさを押し殺し、いつもと変わらぬ態度で夫が自分の許に帰ってくるのを待っている姿を、健気ととるか陰湿ととるか。受け取り方は人それぞれでしょうが、つぶされちゃった卵のサンタクロースのエピソードがある限り、わたしはしんねりしたものを感じてしまうのです。つぶれさた卵のサンタクロースを偶然に渡部さんが見つけたんならまだしも、あの流れは意図的に見つけさせたとしか考えられないもん。つぶしたサンタクロースをわざわざ保管しておくのがすでにおかしいし。

 しかしまぁ、「不倫なんてするやつはバカ」とまで考えていた男が、思わぬ巡り会わせで不倫の泥沼にはまってしまう心理は丁寧に描写されています。だからその流れに不自然なところがなくて、渡部さんの身勝手な言い分にも「あぁこういう人っていそうよねぇ」と納得できたりするのです。好みの題材ではなくても、最後まで読ませてしまうところはやっぱり東野作品という感じでした。あと、渡部さんのアリバイ工作に協力する学生時代の友人の話が番外編として収録されてるんですが、本編とはまったく違うコミカルなトーンで語られるエピソードで、友人が渡部さんに協力するにはこういう裏側があったのか~と苦笑いしてしまいました。

 映画の予告編を観た限りでは、原作と大幅にイメージが違うこともなさそうです。でも劇場にまでは観にいかないな。CATVの映画チャンネルなどに登場したら観てみたいかもしれません。
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by nao_tya | 2011-09-30 17:00 | 読書感想etc.
 最近せっせと積読本解消に励んでいたら、とうとう山が消えて床が見えるようになりました。うれしい反面、通勤のときなどに持ち歩く本がないというのはなんとも心もとなく…。ここはいっちょ新規開拓でもしてみるか~と、色々よそさまのブログなどにお邪魔していた最中にひっかかったのがこちら、スティーヴ・ホッケンスミスの『荒野のホームズ』と続編『荒野のホームズ、西へ行く』。
 まったく読んだことがない、実を云うと名前も知らない作家さんではありましたが、ストーリーの紹介などからなんとなく惹かれるものがあったんですよね~。気に入ったらどうせ続編も読むだろうし、2冊とも直感買い。で、これが大正解で、2作ともとってもおもしろかった! わたしのツボをつつきまくりですっ。

 物語の舞台は19世紀末のアメリカ西部。主人公のふたりは雇われカウボーイ。要するにウェスタン物であります。ウェスタン物でありながらミステリで、そのうえホームズ・パスティーシュ。なんとも不思議な取り合わせですが、これがうまい具合にミックスされていて、ウエスタン好きもミステリ好きもホームズ好きも楽しめる内容となっていました。

 主人公ふたりは兄弟で、探偵役はホームズに心酔するオールド・レッドことグスタフ・アムリングマイヤー。物語の語り手でワトソンのように兄の探偵の助手役を果たすのは弟のビッグ・レッドことオットー・アムリングマイヤー。年齢はグスタフが27、オットーは21、22ってところでしょうか。ふたりの通称に“レッド”とついているのは、彼らが見事な赤毛だからそうな。

 グスタフはまともな教育を受けていないので読み書きができません。そんなグスタフは、ある日オットーに読み聞かせてもらった『赤毛連盟』に感銘を受け、ホームズを心の師として探偵を志すようになるのです。グスタフは教養はないけれど頭脳明晰で、日頃から観察眼や推理力に磨きをかけるのに余念がありません。そうして兄弟を雇った牧場で起こった殺人事件の謎に挑むのが『荒野のホームズ』。この2ヵ月後に鉄道探偵として乗り込んだ汽車でまたしても殺人事件に出くわすのが『荒野のホームズ、西へ行く』というわけ。

 わたしのツボをくすぐったのは、なんと云ってもこの兄弟の関係です。もともとアムリングマイヤー一家は牧場を営んでいたんですが、病気や洪水でこのふたり以外の家族はすでに亡くなり、農場も手放しています。頼れる親族はお互いだけという身の上。オットーを学校にやるため、グスタフが牛追いの仕事で家を離れていた数年間をのぞいて、このふたりはいつもべったり一緒。お互いに腹を立てることはあってもとにかくず~っと一緒(笑)。

 特にオットーは、自分がある程度の教育を受けることができたのはグスタフ (とほかのきょうだい) が自分の分も農場で働いてくれたからだということをよく理解しており、それに対してすごく恩義を感じているのです。だからグスタフが字を読めないことをバカにしたりからかったりするようなことは絶対にしません。グスタフがホームズのような探偵を志すのは、学がなくても知性があることを示したいからだろうと考えたオットーは、初めて本物の事件に関わるようになったときにも、兄がうまく事件を解決できるか心配しつつ助手役を務めていきます (たまに文句はたれてますが/笑)。

 やはり兄弟だから、兄がリーダーシップをとり弟はそれについてゆくという図式になってますが、『荒野のホームズ、西へ行く』でグスタフの意外な弱点が明らかになり、それをきっかけにグスタフは自分の内面を見つめて、ふたりの関係もちょっとずつ変化を見せるところがまた良かった! 互いに対する思いやりとか感謝の気持ちをきちんと出すようになって、弟を世話する兄と兄に世話される弟というだけではなく、少し対等になった感じ。でもあくまでも兄弟なんですよね。

 今まで知らなかった雇われカウボーイの生活なども丁寧に書かれていて興味深いし、語り口もユーモアたっぷりでとても楽しいです。『荒野のホームズ』より『~、西へ行く』のほうが活劇が増えてて、話のテンポも良くなっているように感じました。1作めは作者の初長編らしいので、2作めでぎこちなさが消えてきたのかな~。すでにこのシリーズの原書は長編だと第4作まで出ているそうなので、早く翻訳本も出版してほしいです! 原書で読むにはちょっとカウボーイの専門用語やらスラング (しかも19世紀末の!) が多そうで、手ごわそうなんだもん。早川書房さん、お願いしますよ~。
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by nao_tya | 2009-07-29 12:22 | 読書感想etc.
 コーマック・マッカーシーの『The Road』 (ペーパーバック)、なんとか5月末くらいに読み終えることができました! マッカーシーというと、映画『ノーカントリー』や『すべての美しい馬』などの原作者さんで、この『The Road』は2007年のピュリッツアー賞を受賞するなど、とても有名な作家さんのようです。がしかし、わたしは今まで一度もこの方の小説を読んだことがございません。なのになんだっていきなりペーパーバックを読む気になったのか。それはひとえにこの『The Road』の映画化作品にヴィゴが主演することになったから~♪

 映画が日本で公開されるのを期待して、まぁそれまでにボチボチ読めばいいや~と、昨年末に本だけは手に入れてのんびり構えていたら、6月18日に翻訳本が出版されるっていうじゃないですか! 一旦翻訳本を手にしてしまったら、辞書を引きながらじゃないと読めないペーパーバックなんて手に取らなくなるのは目に見えてます。しかし、買っちゃった以上それはちょっともったいない。てなわけで、ようやく重い腰をあげて辞書と首っ引きになって悪戦苦闘しておりました。

 しかし、一旦読み始めてみるとこれが意外なくらいおもしろかった! ストーリーとしては、文明崩壊後のアメリカ (←多分) のどこかが舞台で、メインの登場人物は40代くらい (これはヴィゴが演じるので自動的にこの年齢を想像してしまった/笑) の父親と、10代と思しき少年のふたり。なにもかもが焼き尽くされたような世界は、すべてのものが塵と灰に埋もれ、昼間でも太陽は灰にかすみ、夜ともなれば明かりひとつなく凍るような寒さが襲いかかってきます。親子は少しでも暖かい土地を求めて、ひたすら南へ、海への道をたどっていくのであります。

 世界がなぜこんな状態に陥ったのか、核戦争が起こったのか、大規模な自然災害のせいなのか、そういうったことは一切明かされません。男と少年の名前も最後まで語られることはないし、男がどういったバックボーンを持っているのかも不明です。ただ、会話やケガの手当てをする様子から、もしかしたら男は医者だったのかな~と思わせる程度。こういう風にわからないことだらけだし非常に淡々とした話運びなんだけど、読んでいるとこのふたりが最終的に物語の結末でどうなるのか知りたくて、どんどん話のなかに引き込まれていってしまいました。

 荒廃しきった世界では新しくなにかが生産されることもなく、人々は残された乏しい資源 (水、食料はもちろん、衣服や燃料などすべてのもの) を漁って生きています。資源をめぐっての奪い合いはもちろん、より簡単に調達できる食料としておぞましくも人が人を食べることも珍しくない状況なのです。当然、親子の他人に対する警戒心もハンパなものではなく、道中でたまに人と巡り合うことがあると語り口は静かなのにたちまち緊張のボルテージが上がっていくので、全編にわたってかなりスリリングな展開です。

 ほかの人間からもたらされる脅威のほかにも、手持ちの食料や水が底を尽きはじめても、次にどこで・どうやってそれらが手に入るのかわからないことへの不安、体調の心配など、果たして生き残ることができるのかどうか、そして生き残った先になにがあるのか、という疑問も常に親子につきまといます。何度も“もうこれまでか…”という事態に陥りながらも、“It's okay”と自分自身に云いきかせるようにどうにかサバイバルしていく男の不屈の意志は、息子を死なせたくないというただその一心に支えられています。幼い息子の存在は未来への希望そのものを象徴していて、だからこそ男はあの最後の決断をしたんじゃないかと感じました。

 ホントにね、こんな危機的な状況のなかでも親子の間に流れる愛情やその絆の深さには胸を打たれました。父親が息子を思うだけでなく、幼い息子も精一杯父親を思っているのがわかるのです。少ない食料を息子に食べさせようとしても、「パパも食べなきゃダメ」という息子のいじらしさとか、切なくて泣けてきます。会話は“ ”でくくられていないし、辞書をひきながら読むと最初はどっちがどっちのセリフだか混乱しちゃったりしましたが(笑)、少ない言葉のなかに込められた思いはしっかり伝わってきました。

 男はきっと息子には美しいもの、良いものだけを見せてやりたいと願っていたと思うけれど、この終末の世界ではかなわぬことで、逆に目に映るのは残酷で醜悪なものばかりです。最初は無邪気そのもののようだった少年の言動が、段々暗く厭世的に (←10歳かそこらなのに!) なっていくのを、どうしようもなく見つめる男の視線が痛々しかったです。それでも、自分の内側に“carry the fire”ということだけは教えようとする姿は感動的でした。ラスト近くの親子の会話は読んでいて涙が出そうに…。

 なにせ乏しい英語力で読んだために細かな意味がわからず、読み飛ばしてしまった部分も少なからずあるので、もうすぐ出る翻訳を読むのが非常に楽しみです! もちろんただいま編集中という映画化にもすごく期待してます (日本で公開してくれ~)。ペーパーバックを読み終えてから、情報解禁ということで映画のスチール写真とかも観ましたが、かなりわたしのイメージに合ってて期待が膨らみます~っ! 

●翻訳本
ザ・ロード
 コーマック・マッカーシー (早川書房)
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by nao_tya | 2008-06-13 23:44 | 読書感想etc.

 ロイス・マクマスター・ビジョルドの『チャリオンの影』がとにかくおもしろかったので、以来ぽつぽつと彼女の作品を読みすすめています。SFのマイルズ・シリーズももちろん楽しく読んではいるのですが、とっかかりがファンタジーだったため「ビジョルドのファンタジーはほかにないもんかいの~」と、『チャリオンの影』の続編『影の棲む城』以外で、唯一翻訳されているらしいファンタジー、『スピリット・リング』を手にしました。

 時代はルネサンス、ところはイタリアの小国モンテフォーリア、主人公は16歳の少女フィアメッタであります。フィアメッタの父ベネフォルテは金細工師であり金属に関する魔法についてはほかの追随を許さない大魔法使い。フィアメッタはベネフォルテの才能を受け継いでいるものの、女の子であるということでベネフォルテから正式に魔法の手ほどきを受けることができず、かといって持参金がないために結婚することもできそうにない、という状況にいます。

 けっこう鬱屈していてもおかしくないフィアメッタですが、彼女が勝気で口が達者(笑)、とことん前向きなコなので、モンモンとしたうっとうしさが物語のなかには出てこず、気持ちよく読み進めることができました。ただ、彼女が最初からかなり自分というものをしっかり持った女の子なので、物語の最初と最後で彼女自身が大きく変化したっていう感じではないんですよね。むしろ変化したのは彼女の環境で、自分の能力を周囲に認めさせて自立する術を掴み取るサクセス物といった雰囲気。少女の成長物語を期待して読んだら、それとは少し違っていた気がします。

 そしてもうひとりの主人公はモンテフォーリア公の近衛隊長ウーリの弟で、鉱夫であるトゥール。かなり背が高いという設定やその性格から、読んでいるうちにわたしのなかのヴィジュアル・イメージはすっかり海外ドラマ『スーパーナチュラル』のサム (ジャレッド・パダレッキ) に固定されちゃいました(笑)。だってね、純朴で誠実で勇敢、それでいてちょっとヌけたところもある好青年という設定、すごくぴったりなんだもの~ (年齢はトゥールのほうがちと若いですが…)。というわけで、近衛隊長であるおにいちゃんのヴィジュアル・イメージは自然とディーン (ジェンセン・アクレス) になってしまいました。でもこれもなかなかハマってると思うんですけど、どちらの作品もご存知ってかた、どう思われますでしょうか??

 で、こんなふたりが、モンテフォーリア公を殺害し、邪悪な黒魔術によってベネフォルテの魂をスピリット・リング (死霊の指環) に封じ込めようとするロジモ公と魔術師ヴィテルリという敵と戦うことになるわけですが、物語の展開が早くて中だるみなく一気に読めます。最初にちりばめられていた伏線がラストにむかって次々と拾われていくところも、パズルがひとつずつはまっていくような感じで爽快感がありました。

 フィアメッタ側の人間はそれぞれに力は持つものの欠点もあり、ひとりではとても対することのできない敵に、みなが自分の役割を果たしていくことで打ち勝つというところもいいです。圧倒的な能力を持つ人間がひとり活躍するのではなく、ひとりひとりが自分の領分のなかで必死の努力をして、それが結果的に大きな力になるというのがスリルを生み出し、読んでる間じゅうハラハラすることができました。あちこちにユーモラスな場面が盛り込まれていて、最後までクスッと笑わせてくれるところも楽しいです。

 翻訳者さんが解説で述べているとおり、簡単に触れられているだけで謎めいたフィアメッタの母親をめぐる続編があってもおかしくないと思うのですが、そちらはあまり期待できなさそうな雰囲気なのが残念です。鉄火肌のフィアメッタと、そんな彼女に振り回されているようで実はしっかり包み込んでいるトゥールのカップルが、この『スピリット・リング』よりもう少し大人になって登場するとかなりいいと思うんだけどなぁ。まぁないものねだりをしても仕方がないので、ここはひとつおとなしくマイルズ・シリーズを読みながら五神教シリーズの続刊が出るのを待ちたいと思います。
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by nao_tya | 2008-03-05 12:13 | 読書感想etc.
 年末にU地さんから「お正月用に」とお借りした、スチュアート・ウッズの『警察署長』、上下巻の本だから読み終えるのに時間がかかりそうだと思い、正月休みに入る前から読み始めておりました (←「正月用」の意味ナシ/笑)。で、元旦に下巻に突入したんですが「ラストはいったいどうなるの~!?」と先が気になって・気になって! 下巻は一気読みしてしまった…。いやぁおもしろかった。読み応えがありました!

 奥付を見てみると、なんと初版は昭和62年でした。原書が発表されてからもう20年以上も経っている小説なんですね~。でもその内容はちっとも色あせてなくて、読んでいてグイグイ物語のなかに引き込まれていきました。

 舞台はアメリカ南部の架空の町デラノ。1919年から始まり1963年に幕をおろす物語は、デラノ警察の3人の署長、ウィル・ヘンリー・リー、サニー・バッツ、タッカー・ワッツをめぐって展開していきます。この3人の署長がそれぞれまったく違う背景をもった人物で、そこがまたすごく興味深いのだ。

 44年にもわたっておこなわれた連続殺人事件が物語の主軸なわけですが、実はこの事件の犯人は相当早いうちに判明してしまいます。なので、読みながら犯人を推理していくお話じゃなくて、周囲の人間に犯罪が行われているということさえ気取られないように行動している犯人を、 いかにして3人の署長が不審に思うようになるのか、そして疑惑を持った彼らがどう行動していくのか、というところが読ませどころ。

 1919年から1963年という黒人の社会的地位がどんどん変わっていく時代背景や、アメリカの南部という土地柄から、人種差別の問題もこの事件を解決するのに大きくかかわってきていて、物語をより深いものにしていると思います。
 物語の最初では奴隷という身分からは解放されたものの、まだまだ社会には黒人に対する蔑視・差別が残っていたのが、時代を経るにしたがって少しずつ彼らの社会的地位もあがっていく。そのなかでそれを自然に受け入れる人間、応援する人間、おもしろく思わない人間、それぞれの考えや行動がからみあって事態が複雑化していくのです。初代署長のウィル・ヘンリー・リーの息子ビリーが第3部には政治家となって登場し、彼の選挙運動の行く末が事件の解決と連動していくところなんて本当にスリリングで、読むスピードがどんどんあがっていきましたです。

 単なるミステリ、サスペンスではなく、約半世紀に及ぶ大河小説の趣があって、読み終えるとちょっとボーッとした気分になってしまいました。
 ウィル・ヘンリー・リーの孫が主人公の『草の根』という続編もあるそうで、こちらもぜひ読んでみたいと思います! あと一度ドラマ化もされてビデオが出ているらしいんですが、これも観てみたいな~。DVDが発売されないものでしょうか。
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by nao_tya | 2008-01-07 23:09 | 読書感想etc.
 畠中恵さんのとてつもなく身体が弱い大店の若だんなが主人公の「しゃばけ」シリーズ最新刊、『ちんぷんかん』を読み終えました~!
 この「しゃばけ」シリーズ、わたしは文庫版で集めているので、本当なら『ちんぷんかん』を読むのはもっと先になるはずだったんですが、U地さんが貸してくださいました。ありがとうございますぅ♪

 まだ文庫になっていない「おまけのこ」と「うそうそ」は未読のままですが、読みきり連作短編なので支障なく読めましたですよ。
 この『ちんぷんかん』には表題作のほかにあと4つの短編が収められてます。超虚弱体質の若だんなのことだから、布団でみのむし状態になってるのはまぁよくあることなんですが、今回はなんと三途の川を渡る一歩手前、賽の河原まで行って帰ってくるという展開も。しかし賽の河原から生還できた理由ってのが「薬湯を飲むことに関してだけは、お江戸どころか冥土の皆の中でも、一番の強者であった」から、ってのが笑えますな(笑)。

 この巻で一番の大きな変化というのは、若だんなの母親違いの兄・松之助の縁談がもちあがったってことでしょうか。でも実をいいますと、わたしはこの一連の縁談話にはあまり感慨ぶかい気分にはならなかったんですよね~。
 といいますのも、若だんなに兄がいることがわかって、彼が長崎屋の手代になるまでの話ってのはけっこうおもしろく読めたんですけど、いったん松之助が長崎屋に入ってしまうと、たまに名前が出てくることはあっても、実際に若だんなと彼の絡んだ話ってのがほとんどなかったからじゃないかと思います。

 つまりいまひとつ松之助の印象っていうのがうすいままで、松之助というキャラクターに対する思い入れができてなかったんですよね。もうちょっと若だんなと兄弟の絆を深めるというか、互いに通いあう情を感じ取れるエピソードがあればよかったんですが。そうしたら、縁談が決まってしまうと長崎屋から出ていくことになる松之助を思ってそこはかとなく淋しい気持ちになる、という若だんなにすんなり共感できたんじゃないかな~。このままではどうもものたりない気分なのでありました。もしかするとまだ読んでいない「おまけのこ」や「うそうそ」にそういったお話が入っているのかしらん?? うーん、早く文庫にならないもんでしょうかのぉ。

 てなわけで、この『ちんぷんかん』で一番おもしろい、いいな、と感じたお話は最後に収録されていた「はるがいくよ」でありました。このお話は、長崎屋の中庭に植え替えられた桜の古木の花びらの精・小紅と若だんなの交流が描かれています。花の命の短さが切なくも美しい、しんみりとした心もちになるお話でした。そしてこの経験をとおして、寿命が桁外れに短い人間の側につき従い、見守っている妖たちの気持ちを察する若だんなもいいです。

 「しゃばけ」シリーズはたまに人間のほの暗い部分や悲しい面が描かれていることもあるけれど、全体的にのんびりのほほんとした空気が流れているのがいいところです。しかしそんな空気のなかであってもどんどん時は流れていて、周囲の状況も変化していっています。なにより巻が進むごとに様々なでぎごとを体験した若だんなが少しずつ成長していっているのを追いかけるのが楽しみなのでありました。若だんなのご両親の馴れ初め話も出てきたし、次巻はいよいよ若だんな本人のコイバナが読めるのかな~。期待しながら待ちたいと思います。
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by nao_tya | 2007-07-03 21:22 | 読書感想etc.
 好きな作家さんはいろいろいますが、そのなかでも恩田陸さんと五條瑛さんは新作がコンスタントに出る作家さんだと思います。
 途切れることなく本が出版されるのはもちろんうれしんだけど (財布は軽くなるがな!)、数がかさめばやっぱりなかには「うーん、イマイチ??」という、自分にはどうも合わないものも出てきてしまいます。しかし、先日読了した五條瑛さんの『J』は、けっこうわたし的にはアタリでございました!

 舞台は日本ですが、自衛隊を国軍にするための憲法改正が国会で論じられ、反対運動も盛ん、大規模テロこそないものの東京のそこかしこで日常的にミニ・テロがおこっているという、実際の日本とは微妙に違う世界のお話。

 主人公の秋生は大学受験に失敗し、タテマエは浪人生ということになってますが、予備校に籍だけおいて毎日渋谷付近で遊び歩いている青年です。
 ある日いつもどおりにブラブラしていた秋生が、街で“J (ジェイ)”と名乗る女性に出会うことにより、様々な変化が彼のなかでも周囲でも起こっていくのでありました。

 五條さんの小説ではよく抗いがたい魅力をそなえたカリスマというか、誘惑者 (メフィストフェレスのような、と云えばいいのでしょうか) が登場します。今回その役回りを演じるのはJってことになるわけですが、カリスマが女性というのははじめてのパターンなんじゃないかしらん。

 どの作品のカリスマも確固たる自分の信念を持ち、人の心理に通じているので、弱い人間の心のヒダに巧妙に入り込みます。彼らはそうやって魅入られた人間たちを目的のために利用しつくし、非情ともいえることをしてのける人間たちです。

 そして、自分のした行為によってどんなに人から責められようと、たとえ大きなしっぺ返しがこようと (実際にはあまりにもあざやかな立ち回りと、相手が利用されたとは思ってなかったりするせいで、因果応報で窮地に立たされるようなことはないんですけど)、それを引き受ける覚悟みたいなものも備えているんですな。惹かれる人間はヤマといるのに、あくまでひとりで立っている孤高の姿がなんともいえずカッコいいのです~。

 Jももちろんそんなひとりで、“凛とした”という形容がぴったりくる感じ。だがしかし、Jもはっきりとした目的を持ってはいるんだけれど、その目的を実現するための手段に迷いというか、“この方法は間違っている”という思いを抱いていて、でも別の手段を見つけられずに苦しんでいる。こういうある種の“弱さ”を見せるキャラクターは今までになく、とても新鮮でした。

 一方の秋生は、Jと出会うまでは目標もなく惰性で毎日を過ごす無気力な若者だったのが、やりたいことを見つけ、毎日努力を重ねるうちにどんどん良い方向に変わっていきます。
 具体的には格闘技に目覚めて、同じジムの先輩でプロの久野さんにかなりの勢いでなついちゃうんですよね(笑)。しかも秋生が一方的に慕っているのでもなく、久野さんも秋生をかわいがって、まだまだ初心者の秋生に“いつか試合しようぜ。俺と”なんてことまで云っちゃうわけです。で、秋生はますますがんばっちゃう、と。

 なんちゅうか、こういうほかの人間が入り込めないつながりを持った男同士みたいなのって、男性作家の書くハードボイルドにはよく登場してますが、女性である五條さんの描き方もとっても細やかでうまいと思います~。

 この話のなかではテロの実行だけを請け負う“テロ請負業”なるものが登場します。自分の主義・主張は声高に叫ぶけれど、面倒なことや危険なことは金にあかせて他人におまかせ、という人間のエゴがむきだしになった仕組みで、なんとも気分が悪くなってしまいます。現実にこんなことがあったら相当いやだけど、実際にないとは言い切れないのがやりきれないですね。

 そして、“島”がこのテロ請負業をこなすようになり、泥沼から抜けられなくなってしまった背景も哀しい。秋生のセリフで“たぶん、俺たちは全員加害者で被害者なんだろうなって思ってさ”というのがあって、不幸の輪に気付いてもその輪をどう断ち切ればいいのかわからないジレンマも感じます。

 坂崎、メイラン、アイラなど島の人間たちの過去や現在はとても重いものだし、秋生の周囲にいた人間もいろいろ大変なことになってしまいます。また、五條小説らしく最後には大きなパニックが起こる話なんだけど、不思議と読後感は悪くなかったです。サスペンスよりも秋生の成長物語という面が強く出てるからかなぁ。
 何年か後の秋生とJがもう一度邂逅するような話が読めたらすごくうれしいんだけど、書いてくれないものでしょうか、五條さん。別にふたりがメインキャラでなくてもいいから!
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by nao_tya | 2007-04-04 23:32 | 読書感想etc.
 ようやく、よ~やく!! ドロシー・L.・セイヤーズの『五匹の赤い鰊』を読み終えました!
 いやぁ、この本は読み通すのにかなり苦労しました。買ったばかりのころに一度読みかけて挫折し、再チャレンジしてるからトータルで2週間くらいかかった計算になるのかな。

 ピーター卿のシリーズはほかにも読んでいて、そちらは特に支障なく読めたのに、なんだってこの『五匹の赤い鰊』だけはこんなに苦戦したのか。理由は明白です。別に内容がおもしろくなかったわけじゃなくて、単に登場人物たちの区別がつきにいから。もうこの一事に尽きますね! 読んでるうちに頭のなかがどんどん混乱してきて、先に進めなくなっちゃうんだもん。

 『五匹の赤い鰊』はスコットランドの田舎町が舞台でして、そこには芸術家たちが寄り集まって暮らしているんですな。この田舎町で巧妙に事故に見せかけた殺人事件が起こり、われらがピーター卿がその謎をといていくわけです。
 で、芸術家たちがたくさんいる町での事件だけに、殺された人間が画家なら容疑者たちもまた同じく画家。しかも容疑者が6人もいるときたもんだ!
 それでなくてもカタカナの名前を覚えるのは苦手なのに、職業が全員同じなんてあんまりだ~(涙)。

 あと、犯人はアリバイ作りのために列車を使ったトリックを使うんですが、これもまたわたしを混乱させる要素のひとつとなったのであります。
 聞きなれない地名に駅名がどんどこ出てくるのに、そこが殺人事件の起こった町と近いのか、それとも遠いのかもさっぱり見当がつかない。一応地図はついてるんだけど、小さい地図だから該当する地名を探すだけでもひと苦労。

 こうなると読みながら犯人が誰かを予想する以前に気をとられることが多すぎて、話のなかにまったく入り込めません。まさにお手上げ状態。読んでる間、どんなにか容疑者たちの顔写真と鉄道の路線図がほしかったことか!
 でもまぁさすがに再チャレンジしたときには、多少前に読んでいた記憶があったせいか読み進めやすくなってなんとか読了できました。やれやれです~。

 トリックはわかってみれば結構偶然に頼った部分が大きくて、「え、そんなんアリ!?」っていう感じもしなくはないですが、ちゃんと伏線もはられていて納得できる内容でした。
 容疑者が多いうえに皆がみな隠し事があったりなんともあやふやなアリバイしかない状況なもんで、警察の人間が右往左往の捜査をした結果、それぞれの「こいつが犯人だ!」なる自説を披露するところもすごく楽しかったです。

 また、警察が地道な聞き込み捜査をする一方で、ピーター卿は全く違った観点から犯人をしぼりこんでいきます。その観点ってのが、自分では創作こそしないけれど、芸術を理解し愛する、絵画についての知識がないと持てないもの。いかにも趣味人、お貴族さまらしいものなんですよね。さすが貴族探偵の面目躍如というところでしょうか。

 ピーター卿の執事、バンターもあいかわらずの活躍ぶりです! ピーター卿の身の周りの世話をしながら彼の趣味 (探偵業) までをさりげなくサポートするところは本当にお見事~。情報収集のためによそのお宅に勤める女中さんをナンパするってのもすごいよな(笑)。
 あまりバンターの容姿については形容が出てこないんですが、けっこう男前なんじゃないかしらん。誘われた女性が「見たところ喜んで応じました」ってのは、単に観たことのない映画にいくのがうれしかったってだけじゃないと思うわ~。

 土地鑑のなさ、容疑者の多さと疑わしい行動の山に、最初はヘコたれてしまいましたが、読み通してみればかなりおもしろかったです!
 ややこしさでは今まで読んできたピーター卿シリーズのなかでも群を抜いていて、作者のセイヤーズ自身も混乱したのか、作中のあちこちで人の名前なんかを間違えていて、翻訳者さんの注意書きが入ってるのもまた愉快でした(笑)。
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by nao_tya | 2007-03-30 23:54 | 読書感想etc.