映画や本の感想アレコレ。ネタバレにはほとんど配慮してません。ご注意! 


by nao_tya
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カテゴリ:映画感想etc.( 98 )

〔ストーリー〕
 ソ連のエージェント、イリーナに遺跡発掘の地から拉致されたインディはネバダ州の空軍基地エリア51に連行される。イリーナはインディが10年前に起こったロズウェル事件で回収に携わった遺体が収められた箱を探していたのだ。インディは隙をみて反撃しその場から脱出するものの、箱は奪われてしまう。舞い戻った大学ではアカ狩りが盛んで、ソ連軍と接触をもったインディは大学にも居場所がなくなってしまう。海外へ旅立とうとしたインディのもとへ、マットと名乗る青年が現れ、インディの旧友でマットの父親がわりでもあるオックスリーが行方不明になっていると告げるのだが…。


原題:INDIANA JONES AND THE KINGDOM OF THE CRYSTAL SKULL
監督:スティーヴン・スピルバーグ
原案:ジョージ・ルーカス、ジェフ・ネイサンソン
脚本:デヴィッド・コープ
出演:ハリソン・フォード、シャイア・ラブーフ、ケイト・ブランシェット

 土曜日出勤の帰りは映画を観て帰るのがすでにお決まりのコースになっているわたくし。先週も行ってきましたよ~。そろそろカスピアン王子が公開終了だと思うんですが、時間が合わず断念。今回はスティーヴン・スピルバーグ監督の『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』をチョイス。なんと19年ぶりのインディ・シリーズ最新作です。観客の入りもけっこうよくて、年齢高めの方たちがたくさんいらっしゃったのも印象的でした。

 実を云うとこのシリーズの新作を拝める日がこようとは思ってなかったせいか、最初にインディの姿がスクリーンに登場し、お馴染みのテーマ曲が流れただけで胸一杯って気分になっちゃいました(笑)。だから単に1本の映画として考えたとき、この「クリスタル・スカルの王国」が本当におもしろいかどうかの判断がかなり怪しくなっちゃったところはあるんですけど、これまでのインディ・シリーズの雰囲気そのままの娯楽大作の王道をいく映画で、2時間ちょいすご~く楽しめました。

 しょっぱなからエリア51やロズウェル事件は出てくるし、物語の重要な要素はオーパーツだし、トンドモ系映画と云えば云えるのかもしれませんが、そういう胡散臭さ(笑)をも包みこんで楽しい・おもしろいと感じさせる能天気さというか大らかさがこの映画にはあるように感じます。あちこちに散りばめられている小ネタにニヤッとできるかは今までの3作を観てるかどうかにかかってくるし、インディ・シリーズに対する思い入れの度合いでかなり評価が分かれるのかもしれませんが、わたしにとって満足度の高い1本だったのは確か! ただ、核実験のシーンだけは核の扱いの軽さにちょっとなぁと思わないではなかったですけど。

 映画のなかでは前作までに登場した人物の“今”もちょこちょこ触れられてまして、そのなかでショックだったのはショーン・コネリー扮するヘンリー・シニアがお亡くなりになって遺影で登場したっちゅうことですかねぇ。時の流れを感じさせるエピソードでございますよ…。インディを演じるハリソンも実年齢では60歳を超え、さすがに年を喰ったな~って思わせるシーンもありましたが、それでもアクションをがんばってこなしていて、それがちゃんとサマになっているのはさすが。というか60歳にしては強すぎるよ、インディ(笑)。ラストにマットの手から例の帽子をスルリとさらっていくことで、インディがまだまだ現役だってことを示してくれてうれしくなっちゃいました。

 親につけられた名前が気に入らず、勝手な名前を名乗るのはジョーンズ家の遺伝なの? なヘンリー・ジュニアを演じたシャイア・ラブーフはきびきびと小気味いい演技で、どうしても平均年齢が高くなってしまうこの映画に若さと元気を加えてくれてたと思います。マットが自分の息子だと判明してから彼を見つめるインディの表情が、「これがオレの息子か~♪」という、ちょっとデレッとしたものになってたのがおかしかった(笑)。

 実在の人物は云うに及ばず、エルフの女王さまや男性まで演じきれるんだから、ウクライナ出身のロシア人だって無問題! なケイト・ブランシェットは、かなりこの敵役がハマってましたな。笑顔がないと険のあるキツイお顔に見えちゃう美貌が、今回の役にぴったりフィットしたって感じでしょうか。

 これからまたインディ・シリーズの製作があるとしたら、ハリソン・フォードががんばってくれるのか、シャイア・ラブーフが跡を継ぐことになるのか、どっちになっても良さげな含みのあるエンディングもウマイな~って思いましたです。

●映画『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』の公式サイトはコチラ
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by nao_tya | 2008-06-30 13:31 | 映画感想etc.
〔ストーリー〕
 アンナが助産師として勤務している病院に身元不明の少女が運びこまれた。少女は妊娠しており、子どもは無事に生まれたが少女は死亡してしまう。手術に立ち会ったアンナは少女が残したロシア語で書かれた日記から、少女の家族の居場所を探し出そう考えた。日記にはさまれていたカードに記されたロシア料理店へ出向いたアンナは、店主のセミオンとその息子キリル、彼らに雇われて運転手をしているニコライと出会うのだが…。


原題:EASTERN PROMISES
監督:デヴィッド・クローネンバーグ
脚本:スティーヴ・ナイト
出演:ヴィゴ・モーテンセン、ナオミ・ワッツ、ヴァンサン・カッセル

 公開を心待ちにしていたデヴィッド・クローネンバーグ監督の映画『イースタン・プロミス』がようやく初日を迎えたので、早速観にいってきました♪ 初日の初回に観にいったんですが、座席は6割がた埋まってたと思います。クローネンバーグ監督とヴィゴが組んだ1作目の『ヒストリー・オブ・バイオレンス』公開前には、ヴィゴと共演のマリア・ベロの来日があったりしたけど、今回はそういうプロモーションが一切なかったわりにそこそこいい感じの入りだったんじゃないかな~。

 映画は、生まれたてのまだべっとり羊水がついてるような赤ちゃん生々しく見せたり、ナイフで掻き切った喉もとを“これでもか~っ”とさらしたり、遺体の指をばっちんばっちん切り取る場面を出したりと、クローネンバーグ監督節(?)も健在でございましたが、そんなにグロさは感じなかったです。そしてすごくおもしろかった! なんちゅうか、夢中で観てしまいましたですよ。

 ニコライ (ヴィゴ)、アンナ (ナオミ・ワッツ)、キリル (ヴァンサン・カッセル)、セミオン (アーミン・ミューラー=スタール) というキャラクターがそれぞれすごくよく作りこんであって、演じている役者さんたちも、この役はきっとこの人でなければダメだったんだろうというくらいピッタリな人ばかりでした。

 なぜアンナが縁もゆかりもない赤ちゃんのために必死になるのか、なぜキリルがあんなにも情緒不安定で分裂したような性格なのか。語られるエピソードはギリギリまで削ぎ落とされているけれど、それぞれの性格がそれらによってしっかり肉付けされていたと思います。セミオンが見せる肉親に対する情愛とそのほかに対する酷薄さには、マフィアのボスらしく矛盾がないし、ニコライの与えられた汚れ仕事を感情を表に出さず淡々とこなす冷淡さと、アンナに見せる柔らかく細やかな一面の対比も良かった~。

 ニコライの隠している部分っていうのは、はっきり明かされるまでになんとなく察することができますが、ニコライはそれだけでは説明できない、内に暗く重いものを秘めて外側に対しては閉じた人間のように感じられました。それが、アンナに対するときだけはほんの少し開いているような気がして、“あ、いいなぁ”と思わせられただけに、最後の別れのシーンはすごく切なかったです。同時にとても静謐で美しいシーンでもありました。

 各方面で(?)話題になっていたニコライの全裸格闘シーン、滅茶苦茶生々しくリアルで、異様な迫力がありました! ファイトシーンでは、役者さんは服の下に衝撃を吸収するためのパッドなどをつけるのが普通ですが、このシーンのニコライは真っ裸。防御するものが一切ないむきだしの状態で、殴られ・蹴られ・投げ出され・切りつけられる、そのすべての動作がとにかくイタイ、イタイ、イタイ~っ! 真っ直ぐスクリーンを観ていられず、指の隙間から覗くようにして観た、壮絶なシーンでした。これ、ヴィゴは本当によく演じきったと思うし、暴力を暴力として過剰に演出することなくスクリーンに映しきったクローネンバーグ監督もすごいと思います。

 アンナが病院に運びこまれた少女から赤ちゃんをとりあげた日がクリスマス前で、ラストで新年のパーティというセリフが出てくるから、物語世界での時間はわずかに10日ほどしか経過していません。だけど愛情も憎しみも哀しみも、そしてほんの少しのユーモアも、なにもかもがぎゅっと圧縮されたような、おそろしく濃密な内容の物語でした。ラストの川べり(?)のシーンの後にほんの短いふたつのシーンを入れることで、なんとも云えぬ余韻が後に残ったのも良かった~。

 ヴィゴは今までにもいろんな役を演じてきて、どんなに小さい役でも彼なりの役作りをしてきたと思いますが、今回のニコライの奥行きは本当にすごかった。こういう役をヴィゴにふって、魅力を最大限に引き出すクローネンバーグ監督になんだかもう平伏したい気分です(笑)。次の作品とは云わないから、またこのふたりが組んで映画をつくってほしい。心の底からそう思います!

●映画『イースタン・プロミス』の公式サイトは コチラ
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by nao_tya | 2008-06-16 23:57 | 映画感想etc.
〔ストーリー〕
 ベンはマサチューセッツ工科大学で優秀な成績を収め、ハーバード大学医学部への進学も許可されている優等生だが、これからかかる学費30万ドルをどうやって用意するかに頭を痛めていた。学費はもちろん生活費まで面倒をみてくれる奨学金制度に選ばれるのは至難の業だ。かといって母子家庭でアルバイトの時給8ドルの身ではとても費用を捻出することはできそうにない。そこに、ベンの天才的な数学力に目をつけたローザ教授が、カード・カウンティングの研究チームに入らないかと誘いをかけてきたのだが…。


原題:21
監督:ロバート・ルケティック
原作:ベン・メズリック
脚色:ピーター・スタインフェルド、アラン・ローブ
出演:ジム・スタージェス、ケイト・ボスワース、ケヴィン・スペイシー

 週末にロバート・ルケティック監督の『ラスベガスをぶっつぶせ』を観にいってきました。この映画、原題は『21』という非常にシンプルなタイトルなんですが、邦題は原作本と同じですね (ちょっとカナのふりかたを変えてますが)。どっちかっつうと、ブラックジャックのルール上とても重要な数字である21と主人公の21歳という年齢、両方の意味を含んでいる原題のほうがスマートでいいと思うなぁ。まぁ好き好きだとは思いますが…。

 わたしはトランプゲームやギャンブルにはとんと疎いんですが、以前に海外ドラマ『NUMBERS』でカジノでは数学が使われているっていうのをネタにしたエピソードがあったので、この映画にも興味を持った次第。映画を観てみると、カード・カウンティングというものがテーブルに出たカードをカウントして残っているカードを計算し、賭け率があがったときに合図してチームプレイでディーラー (カジノ側) を出し抜く技だということまでは把握できたけど、その細かい方法なんかはまったくわかりませんでした(笑)。でもカウンティングの理論が理解できなくても十分楽しめる映画で、おもしろく観ましたです。

 主人公のベンは、頭はとてもいいんだけれど今までとにかく勉強一筋で、しゃれっ気なんてまったくない、内向的でどこかもっさりした印象の青年として登場します。それがラスベガスで大もうけして余裕が出てくると、強気になるし着るものも仕草もどんどん洗練されていくわけです。もともとの素材が悪くないからちょっと成金ぽくても許せる感じ(笑)。でもそうやって見かけのスマートさを得る代わりに失っていくものもたくさんあるわけで、本来の目的を見失ってどん底に落ちたときに初めてそれを悟って反省し、そこから大逆転していくというのはわりとパターンどおりの展開かな。

 それでも地味なボストンでの学生生活ときらびやかなラスベガスでの豪遊三昧の対比、ベンの憧れの女学生ジル役のケイト・ボスワースのファッション七変化なども楽しいし、観てて飽きることはなかったです。それに出演者のほとんどが若者のなかで、ケヴィン・スペイシーとローレンス・フィッシュバーンがどっしり腰をすえたさすがの演技で映画の要所要所に落ち着きを与え、ピシッとしめてくれてます。特にケヴィン・スペイシーの非常~に黒い大学教授が良かったわ(笑)。

 前半の展開がちょっとモタついてる気もしましたが、後になるにつれてサクサク話が進み始めるし、サスペンス、青年の成長物語、ロマンスと、いろんな要素をほどよくミックスして無難にまとめた感じで、さらっと観るにはとてもいい映画だったと思います。かなり脚色しているようですが、実話を基にしてるっていうのもインパクトありますしね! 天才的な数学の能力を持った仲間が数人集まればカジノで大もうけできるって云われても、凡才の身には夢物語にしか聞こえないけど、こうやって娯楽作になるとやっぱり楽しいです。

 映画の内容そのものとはまったく関係ないところで気になったのは、ベンがカジノで大もうけしたお金をキャッシュのまま保管しているっていうところ。なんで銀行口座を作らないの~!? アメリカの低所得者層の人たちの多くが銀行口座を持っていないというのは聞いたことがありますが、あれだけの大金をそのまま持っていられる神経がよくわからん(笑)。

 学生は銀行口座を作れないのか (そんなバカな…)。口座維持手数料をケチったのか。ってか、手数料ってそんなに高いものなんか、ベガスであんなに無駄遣いしてたくせに!? いや、ストーリーの展開上銀行に預けるとマズかったのかもしれないけど、それでもアレはどう考えても無用心じゃろ! ベン、あんたって頭いいはずなのになんかヌけてるわねぇ…。などと映画館のスクリーンに向かって心のなかで呟かずにはいられなかったのでありました(笑)。

●映画『ラスベガスをぶっつぶせ』の公式サイトはコチラ

●映画の原作本

ラス・ヴェガスをブッつぶせ!
 ベン・メズリック (アスペクト)
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by nao_tya | 2008-06-09 20:40 | 映画感想etc.
〔ストーリー〕
 母校で中学教師をしている神野は、夜中に産気づいた美紀を病院へ送り届け、出産が無事にすむまで病院で付き添っていた。その後、夏休みだが部活動のため出勤した神野のもとに、同級生の島崎と名乗る探偵が現われた。島崎はふたりの同級生で神野の親友でもある木村を探しているという。確かに木村は昨夜から美紀の出産にも付き添わず、連絡がつかなくなっているのだが…。


監督:内田けんじ
脚本:内田けんじ
出演:大泉 洋、佐々木蔵之介、堺 雅人

 婦人科の検診が終わってからは自由時間~♪ ということで、せっかく休みをとっていることだし映画を観て帰ることにしました。上映時間がちょうどよかったので、今回は内田けんじ監督の『アフタースクール』に決定! 考えてみたら、今年劇場で初めて観る邦画です。わたしは邦画も好きなんだけど、劇場で観るのは洋画のほうが断然多くなっちゃいますねぇ。やっぱり大画面で観たいって思わせる迫力があるのは洋画ってことなのかしらん。

 観にいった劇場はもうすぐ公開されるクローネンバーグ監督、ヴィゴ主演の『イースタン・プロミス』の上映館でもあるので、入場が開始されるまで新しいチラシなどをゲットしてのんびり待ってました。ミニシアターでさほどキャパが大きくないせいもあるけど、平日の真昼間にしてはお客の入りはまぁまぁでした。半分は席が埋まってたんじゃないかな~。

 映画はもうすっごくおもしろかったです!! ミステリ小説でいうと、読んでる人間が気付かぬうちにミスリードするような文章を駆使して、最後にどんでん返しをもってくる叙述トリックが使われているような映画。映像や登場人物たちの会話から、こちらが勝手に前提としてしまう事柄が、実は間違っていたということがわかって「えぇ~っ!?」となるわけですね。でも、振り返ってみると確かに観てる人間が“そうであろう”と思い込んでしまっただけで、登場人物の誰もその前提が正しいなんてひと言も口にしてないんですよね~。 

 だましの構造でヒネリを効かせて「あっ!」と云わされる映画なので、物語自体はごくごくシンプルです。ひとりの男の行方を探偵と男の親友である教師が追いかけるというわかりやすいものだったのも良かったです。これでストーリーがグネグネ複雑怪奇なものになっていたら、どんでん返しが始まったあたりからわたしはついていけなくなってたかもしれませぬ。

 お金に困っているらしい探偵 (佐々木蔵之介) はまぁいいとして、一見人の良さそうな教師 (大泉 洋) も、優しそうなエリートサラリーマン (堺 雅人) も、話が進むにつれて最初に受ける印象とは違う面が出てくるわけですが、別人のような人格が顔を出すわけじゃなくて、あくまでひとりの人間の隠していた (かもしれない) 面が見えてくるという感じ。この“もしかしてこの人…?”という怪しさをかもし出すところがみなさんとってもウマイ! いやぁすっかり騙されちゃいました。でも騙されても悔しさより小気味よさが勝ってしまって、お見事~ッ! と感嘆する気持ちになっちゃう映画でした。

 最後に神野が北沢に投げかける「全部わかったような顔して勝手にひねくれて…」という言葉もけっこう説得力がありました。人の裏側ばっかり見てきてそれで人間がわかったような気になっている北沢と、毎日何十人もの不安定な年頃である中学生たちと正面から向き合っている神野との差がくっきり出ていて、とてもいいシーンだったと思います。大泉 洋をカッコイイと思うなんて、自分でも意外だったわ~(笑)。

 そうとは知れずはられていた伏線が、後半に入ってからキレイに回収されていくので観てて本当に気持ちよかったです。なにも知らず観る1回めと、すべてわかってから観る2回めでは印象や着目するポイントが違うエピソードがたくさんあるので、リピートしたくなるタイプの映画です。個人的には山本 圭さんとか山本龍二さんが顔を出してくれたのもうれしかったな~。山本龍二さんなんて、その風貌がすでにミスリードさせる要因になってるのがスゴイ(笑)。そうそう、エンディングロールのあとにまだ1シーンあって、伏線を回収していきます。これからご覧になられる方は、劇場内が明るくなるまで席を立たないようにしてくださいね!

●映画『アフタースクール』の公式サイトはコチラ
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by nao_tya | 2008-06-06 23:44 | 映画感想etc.
〔ストーリー〕
 ピアニストを夢見るメラニーはコンセルヴァトワールの入学試験を受けるが、審査員のひとりである人気ピアニスト・アリアーヌの無神経な行動に集中力を乱され、演奏を中断してしまう。なんとか演奏を再開するものの動揺したメラニーは実力を発揮することができなかった。十数年後、ピアニストの夢を封印し、大学生となったメラニーは高名な弁護士であるジャンの事務所で実習生として働き始めるのだが…。


原題:LA TOURNEUSE DE PAGES
監督:ドゥニ・デルクール
脚本:ドゥニ・デルクール、ジャック・ソティ
出演:カトリーヌ・フロ、デボラ・フランソワ

 週末にドゥニ・デルクール監督の映画『譜めくりの女』を観にいってきました。確か『スルース』を観にいったときに流れた予告編を観て、「うぎゃあ、コワそ~。でもおもしろそ~!」と思ったんですよね。で、観た結果は予想に違わぬこわさとおもしろさのある映画でございました。

 とにかくすご~く淡々とした静かな映画で、メラニーを演じるデボラ・フランソワはアリアーヌ役のカトリーヌ・フロと対するときはほとんど表情を変えません。わずかに口角をあげて微笑んだかな…? と思わせる程度。セリフも最低限です。だからメラニーがアリアーヌに対してわずかなりとも憧れを抱いているのか、それともただ復讐心だけで近づいているのか、彼女の意図がどこにあるのかがさっぱりうかがいしれないのです。でも不穏な空気がふたりを包んでいき、ヒタヒタと緊張感が高まっていくのだけはハッキリと伝わってくる。最後にふたりがどうなるのか、予想がつかなくてドキドキしちゃいました。

 かつて自分がピアニストなるという夢を封印するとになった写真へのサインという行為で、アリアーヌをどん底に突き落としてみせるメラニーの執念深さというか、静かなる怒りと暗い情熱はそら恐ろしいものがありました。主にメラニーを演じたデボラ・フランソワももちろんすばらしいけれど、子ども時代を演じた子役の少女も良かったな~。試験で失敗したあと、練習室でこれから試験を受ける少女を見つめる目やとった行動などから、まだ幼いといっていいメラニーのなかに、表面には出てこないけれど内側にはマグマのような激情や歪みが潜んでいることがすんなり納得できましたもん。

 一方、メラニーの行動に知らぬうちに振り回され、徐々にからめとられていくアリアーヌを演じたカトリーヌ・フロも良かったです。わたしは彼女の映画は『女はみんな生きている』くらいしか観たことがなくて、『女は…』での親しみやすい平凡な主婦という役どころだったのとは対照的な今回の役にちょっと驚いたんだけど、観てみたらこれが違和感まったくナシ。人気ピアニストだという自信からくるどこか尊大な振舞い、それでいて不安定な精神状態ゆえの神経質な表情やしぐさがお見事でございました。それにドレスアップすると貫禄があってやっぱりキレイなんですよね~。

 映画を観ていて気になったのが、着々とアリアーヌをある方向へ追い詰めていくメラニーの行動はどこまでが計画的なものだったのか、ということです。そもそもアリアーヌの夫であるジャンの法律事務所の実習生になるのは意図してのことだったとしても、そこでジャンたちが子守を必要としている話が出てこなければ彼らの家庭に入り込むことはできなかったわけだし…。でもチャンスがあってそれを利用したに過ぎないというにしては、メラニーの行動は徹底しすぎてる気がするし…。うーん、やっぱりメラニーという女性は謎めいています。

 あと、映画のなかではさらりとしか触れられてませんが、アリアーヌの精神状態が不安定になった原因の交通事故もなんだか怪しい気がしてきちゃって。でも、メラニーが映画のなかでとった行動のひとつひとつは決して犯罪と呼ばれるようなものではなかったから、ひき逃げという明らかな犯罪行為は異質すぎて彼女のしわざではない気もするんですけどね。

 この映画で一番コワイのは、メラニーがなぜ自分を絶望させるようなことをしたのか、アリアーヌにはまったくわからないってことじゃないかと思います。それがどんなに自分にとって理不尽であれ、メラニーの行動の理由がわかればそれに対して怒ったり哀しんだり、なにかしら発散させることができるだろうけれど、メラニーは沈黙を守ったまま姿を消してしまったわけだから。アリアーヌには解けることのない“なぜ?”がこれからずっと付きまとうことになってしまうんですよね…。

 また、アリアーヌがメラニーに依存しきってしまうのは、アリアーヌが実は孤独な人間だからというところも哀しかった。アリアーヌの夫は資産家でアリアーヌのピアニストとしての才能や美しさを愛してやまない男だけれど、才能あるピアニストだからこそアリアーヌを妻として誇りにしている節が見受けられます。つまりアリアーヌの賛辞者ではあるけれど、少しずつ若さを失い、交通事故で演奏への自信も持てなくなった彼女の不安を増幅させる人間でもあるわけです。

 もし自分がピアニストとしてやっていけなくなれば、夫は自分を捨てるかもしれない。そういう恐怖を抱えているからこそ、アリアーヌはメラニーの存在にグラついてしまったんだと思います。何気ない自分の行動が人を絶望に追いやり、相手のなかに隠れていた悪意が萌芽する。その悪意が時を経て自分に向かってくる。それでも、アリアーヌにもっと心を打ち明けて頼ることのできる存在があれば、メラニーの復讐はならなかったんじゃなかろうか。そんな風に思いました。

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by nao_tya | 2008-06-02 22:56 | 映画感想etc.
〔ストーリー〕
 自動車整備工のカーターと実業家で大金持ちのエドワード、ふたりは本来ならまったく接点のなど持ちようもない人生を送ってきていた。しかしガン治療のため入院した病院でふたりは偶然同室になり、同じように余命が6ヶ月だと宣告されてしまう。カーターが作った棺おけリスト (死ぬまでにしたいことを並べたリスト) を偶然見たエドワードが、自分のしたいこと加えてリストの内容を実行しようと云い出し…。


原題:THE BUCKET LIST
監督:ロブ・ライナー
脚本:ジャスティン・ザッカム
出演:ジャック・ニコルソン、モーガン・フリーマン、ショーン・ヘイズ

 週末にロブ・ライナー監督の『最高の人生の見つけ方』を観てきました! ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマンが共演するというのも魅力的だったんですが、実は一番のポイントはおにいちゃん (←ロブ・モローのこと。『NUMBERS』という海外ドラマで兄弟の兄役をやっているのでこう呼ぶクセがついた/笑) が出演していることだったりして…(笑)。この映画の予告を初めて観たとき、「なかなか楽しそうな内容でいいかも~」などとのんびりスクリーンを眺めていたら、突然おにいちゃんのアップが出てきてのけぞっちゃいました! まさに不意打ち。ビックリしたわ~(笑)。まぁ脇役なのでさほど出番は多くなかったですけど、考えていたよりもずっとチョロチョロ顔を出してくれてて満足~♪

 「余命を宣告されたふたりの男が偶然病院で同室になって、それまでの人生で経験したことのないことをする」というのは、10年くらい前のドイツ映画で『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』ってのがあって、この映画はわたしの大好き映画のひとつなんですが (DVDが廃盤になってるの…。再発売してほしいよ~)、この『最高の人生の見つけ方』もなかなか良くて、観たあとはすがすがしい気持ちになれましたです。

 主人公のひとりエドワードは、一代で巨万の富を築きあげた大金持ち。だけど皮肉屋で傲慢で親しい友人もいない。見舞いにくるのは秘書だけという孤独な境遇 (本人、あまり気にしてませんが/笑)。ジャック・ニコルソンは普通の男を演じていてもどこか怖さを感じさせる俳優さんだと思いますが、この映画ではこのエドワードという男をエキセントリックすぎることなく、とってもチャーミングに演じていました。

 エドワードに対するは実直で温厚、家族思いの雑学博士である自動車整備工のカーター。物静かで内省的な男を淡々と、でも存在感たっぷりにモーガン・フリーマンが演じていて、こちらもすごくイイ! ふたりとも適度にリラックスして、お互いの役柄を楽しんでいるように感じました。

 余命わずかという共通点以外はまるで水と油みたいなふたりだから、作った棺おけリストの内容も精神的な満足を得ようとするカーターと、実際的な興奮を欲するエドワードでは本当に対照的です。このふたりが出会って (同室になる理由というのがまたヒネリがきいててオカシイ) 交流することで起こる化学反応に、最初は思いきり笑わせてもらって、最後はじんわりとあったかい気持ちにさせられました。「金ならたんまりあるんだ!」と、自家用ジェットで世界中を飛び回る旅の様子も豪勢だし、一種の目の保養にもなった気が(笑)。

 あと、エドワードの毒舌にはウィットで返し、飄々と自分の仕事をこなす秘書のトマスを演じていたショーン・ヘイズもイイ味出してました。トマスは実は案外エドワードのことが好きなんだろうし、エドワードもなんだかんだ云って無意識でトマスのことを信用してるっていうのがちゃんと伝わってくるので、オープニングのシーンとつながるラストのエピソードも納得がいきます。カーターの奥さん役のビヴァリー・トッドもすごくステキ。手術室へ向かうカーターにキスを送って、不安を必死でこらえて微笑もうとしている表情とか、観てて胸がつまるような気持ちになっちゃいましたよ…。

 棺おけリストを実行できたのはエドワードの財力があってこその話ではありますが、惜しみなくお金をつかって、云ってみれば人生のウサ晴らしをしても、結局最後にいきつくところは家族だということ、自分の家族や自分がしてきたことに誠実に向かい合ったとき、どんな贅沢をするよりも深い満足感が得られるんだろうな、っていうことがすんなりと胸に落ちるお話でした。そして、この映画を観たら自分も棺おけリストを作ってみたくなりますな。

 あと、『かもめ食堂』で出てきたコーヒーをおいしくするおまじない“コピ・ルワック”の謎がこの映画で解けました(笑)! なるほど、「コピ・ルワックのように薫り高くおいしいコーヒーになりますように」、ということだったんですね~。一度は飲んでみたいコーヒーですが、お値段とその製造法を知ってしまうとちょっとためらってしまうものがありますね(笑)。これも棺おけリストに入れておくべきかしら!?

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by nao_tya | 2008-05-26 23:45 | 映画感想etc.
〔ストーリー〕
 石油採掘師ダニエル・プレインビューのもとへ、ある日ポールという青年が訪ねてくる。ポールの実家の周辺の土地には石油が眠っているというのだ。幼い息子のH.W.を連れて調査に出かけたダニエルは、ポールの情報が真実であることを確かめ、土地を買い占めにかかった。ポールには双子の兄弟イーライがおり、彼はその土地で「第三の啓示教会」という教会の牧師を勤めていたのだが…。


原題:THERE WILL BE BLOOD
監督:ポール・トーマス・アンダーソン
原作:アプトン・シンクレア
脚色:ポール・トーマス・アンダーソン
出演:ダニエル・デイ=ルイス、ポール・ダノ、ケヴィン・J・オコナー

 週末にポール・トーマス・アンダーソン監督の『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』を観てきました。この映画を観たのは、前日までの暖かさがウソみたいに冷え込んだ、冷たい雨の降る日でした。この映画、このお天気にふさわしいなんとも重く暗い、そして観終わったあとには寒々しい気持ちになってしまう映画でありました。

 主演のダニエル・デイ=ルイスはまさに怪演! 彼が演じるダニエル・プレインビューは、他人をまったく信用しない、人間嫌いの冷血漢。自分の欲望にはとことん忠実な男ですが、単なる悪人というにはその内面は複雑すぎて、なんとも掴みどころのない、それでいて強烈な印象を残す人間でした。彼が息子として育てたH.W.を本当に愛していたのか、いなかったのか。そんなことも読み取らせません。ただの道具としてしか見ていないようにも思えるし、屈折してはいるけれど愛情があるようにも受け取れるんですよねぇ。

 そんなダニエルを鏡で映したかのような存在が、ダニエルが石油採掘のために土地を買い占めたリトル・ボストンで、「第三の啓示教会」なる教会の牧師をしているイーライです。禁欲的な聖職者の顔をして、その実物質的な分野でダニエルがやっていることをそのまま精神的な分野でやっているにすぎない男で、ことあるごとにダニエルと対立し、確執を深めていきます。

 しかしやっぱりダニエルに比べるとイーライの存在感がやや弱い気がしてしまう…。これはイーライ役のポール・ダノの演技力云々の問題じゃなく、演出上どうしてもこうなるとは思うのですが。信仰や宗教などが個人のうちにある間はともかく、それを広めようとした途端に“お金”が絡んで聖性が失われてしまうということを、イーライの存在をとおして揶揄するために、多分わざとイーライの説教や悪魔祓いのやりかたとなどを陳腐でこっけいにしてる気がするので。対するダニエルの怪物度がスゴすぎるってのもあるかな~。

 それでも、このふたりの対決 (ダニエルの洗礼のシーン、最後のボウリング場でのシーン) は狂気に満ちた空気がその場を支配して、息がつまるような緊張感がありました。大げさな「悪魔よ、出ていけ!」の儀式とか、ボウリングの玉やピンを相手に思い切り投げつけるところとか、ひとつひとつを観てると奇妙でむしろおもしろいと感じてもいいようなシーンのはずなんだけど、ストーリーの流れのなかで観ると、互いに対する憎悪がしたたるようでいやぁもうめちゃくちゃ怖かった…。

 あと、この映画では音楽が非常に印象的で効果的に使われていたと思います。オープニングからしばらくの間は一切セリフがないんですが、その間に流れる音楽がなんとも人の神経に触る、不安をあおるようなものなのです。この後に展開していくドラマの不気味さ、不吉さを予感させて、観てる側は落ち着かない気分にさせられる一方で、一気に映画の世界へ引きずり込まれてしまいました。

 映像的にも油井火災のシーンなどすごい迫力で (あれってCGで作ってるんでしょうか??) 圧倒されました。が、決して娯楽性の高い映画じゃないので好みは分かれるだろうなぁ。わたしは158分という長い上映時間にもかかわらず、まったく時間が気にならなかったです。そして、ダニエルの最後のセリフ、「おれは終わりだ (I am finished)」の意味をいまだに考えてしまいます。それにしてもとことん自分に寄り添うところがない、突き放された感じが強い映画で、時間が気にならなかったわりに観たあとで非常に疲れた気分になっちゃいました~。

●映画『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』の公式サイトはコチラ

●映画の原作本

石油!
 アプトン・シンクレア (平凡社)
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by nao_tya | 2008-05-12 21:35 | 映画感想etc.
〔ストーリー〕
 紀元前1万年。ヤガル族の青年デレーは、幼いころから美しい青い目を持つエバレットと惹かれあい、将来を誓い合う仲になっていた。だがある日、正体不明の騎馬民族たちがヤガル族の集落を襲い、エバレットたち村人を連れ去ってしまう。デレー、村の勇者ティクティク、デレーのライバル・カレンは、村人たちを奪還するため騎馬民族の男たちを追跡する旅に出るのだが…。


原題:10,000 B.C.
監督:ローランド・エメリッヒ
脚本:ローランド・エメリッヒ、ハラルド・クローサー
出演:スティーブン・ストレイト、カミーラ・ベル、クリフ・カーティス

 J子さんとランチを食べてお茶して書店めぐりをして(笑)解散したあと、せっかくだから映画を観て帰ることにしました。いい加減しゃべり疲れていたので、あまり重たい映画や小難しい映画の気分じゃないな~と、なにも考えずにただ楽しんで観られそうな映画ということで、ローランド・エメリッヒ監督の『紀元前1万年』をチョイス。客の入りは非常に悪かったですねぇ。まぁ夕食時だったししょうがないのかしら。

 で、観た感想ですが、予想に違わず本当になにも考えずに観ることのできる映画でしたが少々退屈でした。いや、映像は本当にすごいんですよ! マンモスや怪鳥(?)にサーベルタイガーなど、出てくる動物は毛並みの1本1本までリアルだし、紀元前1万年という舞台の造形は (本当にこんな状態だったのかは別にして) 見事のひとことに尽きます。ピラミッドを建造する群集たちを見せるモブ・シーンも圧倒的な迫力がありました。でもなんかこう、物語的にはあまり盛り上がらないままで、「あらら、これで終わりデスカ??」という感じだったんですな。

 まず映画導入部から実際にデレーたちが出発するまでが思ったよりも長い~。キャラクターたちの性格や人間関係など、状況説明をする必要があるのはわかるんですが、なんだかダラダラしてるような気がしちゃって。やっとこさ動きが出始めたと思っても、あたりまえですが紀元前1万年には自動車や飛行機があるわけもなく、徒歩旅行なせいかどこまでもまったり感が漂っているのでありました。スピーディなアクションや展開に慣れた身としては、このスローモーさにはちょっと眠気が…(笑)。

 あと、説明不足なところが多いのもスッキリしない感を増幅させてる気がします。デレーの父親のこともそうだし、最大の敵である“大神”の正体もそう。思わせぶりに出てきて、でも本当に“出てきただけ”のサーベルタイガーの牙についても同じ。いろんなことが中途半端なまま終わってしまっています。別にこの映画で描写されている紀元前1万年の様子が考古学的に正しいかどうかなんてわたしは気にしないけど、こういうストーリー的に大味なところはちょっとどうかと思うわけです。その大味なところを観てる間は深く考えさせない、怒涛の展開があればまた話は別なんですけどね。

 また、主人公のデレーにも魅力がちと不足してましたな~。デレーは戦闘能力がズバ抜けて高い戦士というわけでなく、カリスマ性でもって虐げられてきた民族を結集させ、奴隷たちの反乱を引き起こしてついには大神を倒す存在だと思うんですが、そのカリスマ性を発揮するエピソードがどうも弱い。壁画に残された伝説と同じだからって、ほかの部族がみな従うっていうのも説得力がないような気がしちゃったのでした。

 ローランド・エメリッヒの監督作なんだから、大味でもとにかく勢いのある映画だろうと思って観たんだけど、今回はわたし的にはちょっと期待はずれで残念な結果に。本気で寝るほど退屈ではなかったし、迫力のCGと、オマー・シャリフのナレーションは十分楽しめたので、ま、いっかぁ (←でも不満タラタラ/笑)。

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by nao_tya | 2008-05-07 22:45 | 映画感想etc.
〔ストーリー〕
 ワシントンD.C.午前10時。アーヴィング上院議員に呼び出されたジャーナリストのジャニーンは、アーヴィングからアフガニスタンで新たに展開させる対テロ作戦に関する情報をリークされる。同日のカリフォルニア午前7時。カリフォルニア大学のマレー教授は、才能がありながらやる気を見せない学生のトッドを自分のオフィスへ呼び出し、かつての教え子について語りだした。同日のアフガニスタン午前6時半。マレー教授のかつての教え子、アーネストとアーリアンは志願兵として陸軍に入隊し、アーヴィングが提案した作戦のブリーフィングを受けていた。


原題:LIONS FOR LAMBS
監督:ロバート・レッドフォード
脚本:マシュー・マイケル・カーナハン
出演:ロバート・レッドフォード、メリル・ストリープ、トム・クルーズ

 ようやく暖かくなってきたのと同時に頭の中身がぽややんとした状態になり、なんとな~く文章を考えるのがめんどうくさくて、ブログの更新をサボっておりました(笑)。そんなときに観たのがロバート・レッドフォード監督の『大いなる陰謀』。ぼやけた頭で観るにはちょいとヘヴィーな映画でありましたことよ…。

 大きな戦争が始まる前や戦争が始まった当初は、「アメリカが世界のリーダー」、「アメリカが世界の救世主」という“アメリカ万歳!”な映画がガンガン製作されて、しばらく経つと「やっぱり戦争は良くない」、「正義の戦争という名前の裏側ではこんなことが…」という反省映画が作られるハリウッド映画。この『大いなる陰謀』もそういう反省映画の1本と云えると思います。

 ただ、『大いなる陰謀』は911テロ以降のアメリカの行動をただ高飛車に批判するんじゃなくて、批判をする自分が逆に批判されることも自覚している、痛みを感じている映画なんじゃないかとわたしは思いました。2008年はアメリカ大統領選挙の年だし、民主党寄りの“プロパガンダ映画”だと云われるのもわかりますが (最後に出てくる「VOTE」とかはかなり露骨だ…)、アメリカで政治的な映画を作る人って、自分がどういった政党を支持しているかなど、自分の政治的立場をはっきり主張するし、完全に公正な視点から描くのってやはり難しいだろうから、しょうがないかな~とも思います。要は観る側がそういった製作側の主張を承知したうえで観て、自分で判断する冷静さを持つ必要があるってことなんじゃないかしら。

 で、肝心の映画の内容について。邦題や予告編から、観るまではトム・クルーズ扮するアーヴィング上院議員が企んだ陰謀を、メリル・ストリープ扮する40年選手のジャーナリスト、ジャニーンが暴いていくサスペンス劇を想像していたのです。ところが実際観てみると、サスペンス色はまったくなくて、ただひたすら会話・会話・会話が続く会話劇でありました! 膨大なセリフの量で字幕を追いかけるのがちょっとしんどいくらい。でもきっと字幕で訳しきれてない部分がいっぱいあると思うなぁ。こういう映画こそ吹替え版がほしいですよ。DVDになったら吹替え版も入れてくれることを希望しますです (←ヒアリング力を高める気力はない/笑)。

 会話劇といっても機知に富んだセリフの応酬で緊迫感のある会話が続くので、退屈するようなことはありませんでした。特にアーヴィングとジャニーンのやり取りはすごい迫力~。ベテランのジャーナリスト役のメリル・ストリープのどっしり落ち着いた貫禄に負けないトム・クルーズがすごく良かったですよ。白い歯キラリの笑顔がさわやかなのに、さわやか過ぎてなんだか胡散臭さがただよう上院議員がまさにトム・クルーズのハマリ役! この役は彼以外には考えられん! アーヴィングは政治的野心から事態の悪化を引き起こすわけですが、アーヴィングにはアーヴィングなりの野心以外に信念があることをちゃんと感じさせてくれました。

 無気力な学生がもしかしたらそこから抜けだすかも? ということを示唆しつつも、映画のなかではなにかひとつの結論が出るということもなく、「あなたはどうしますか?」という問いを投げかけて映画は終わってしまいます。アメリカの政治を扱った映画ではあるけれど、無関心こそが罪であるということ、決断には責任が伴うということがしっかり伝わってきて、観たあとはやっぱり色々と考えさせられる映画でありました。

 が、そこで自分が今からなんらかの行動に出るのかと云われると、「いったい自分にナニができるっていうの?」と、やっぱり二の足踏んじゃうところがありますねぇ。とりあえず選挙にはちゃんと投票しにいこうと思いますけど! うーん、全体的に映画的なおもしろさより、すごくためになる良い講義を聞いたな~って気分にさせられる映画でありました。

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by nao_tya | 2008-05-02 23:06 | 映画感想etc.
〔ストーリー〕
 初老のベストセラー推理小説家アンドリュー・ワイクの屋敷へ若い男マイロ・ティンドルが訪ねてくる。ティンドルは売れない俳優で、ワイクの妻マギーの浮気相手。ティンドルはワイクにマギーとの離婚を承諾するよう交渉しにきたのだった。そんなティンドルにワイクは奇妙な提案を持ちかけるのだが…。


原題:SLEUTH
監督:ケネス・ブラナー
原作戯曲:アンソニー・シェーファー
脚本:ハロルド・ピンター
出演:マイケル・ケイン、ジュード・ロウ

 土曜出勤の帰り、映画『SLEUTH スルース』を観てきました! 関東圏からひと月ほど遅れて、ようやく関西でも上映が始まったのです♪ 監督がケネス・ブラナーで、ほぼマイケル・ケインとジュード・ロウの二人芝居の映画と聞いて、前々から楽しみにしていたのです。この『スルース』はアンソニー・シェーファーの舞台劇が原作で、一度1972年に映画化されていますが (『探偵 スルース』)、わたしは舞台もオリジナルの映画も未見です。

 物語の舞台はワイクの屋敷。見た目は古めかしい家ですが、一歩なかに入るとリモコンひとつで様々な操作が可能なハイテク屋敷でありました。なかの調度もデザイン重視のおしゃれ~でモダンなものばかり。あまりにもスタイリッシュで洗練されすぎてて、わたしなんかは落ち着かないような無機質な内装です(笑)。で、そのなかでワイクとティンドルが火花を散らして対決するわけですな。

 舞台はワイクの屋敷に限定されており、空間の広がりというものはあまり感じられない映画ですが、熱のこもったふたりのかけあいが濃密な空気を生み出して、まったくその狭さが気になりません。

 最初は紳士的にふるまっていたワイクが、次第にその高慢でネチッこい本性を明らかにしてティンドルに対せば、ティンドルも野卑で粗野な面をあらわにワイクに対抗していきます。このふたりのやりとりは本当に緊張感があってスリリング! 意地とプライドがぶつかりあいます。ワイクの言葉に巧みに乗せられて、大恥をかいたティンドルが逆襲するところなんてワクワクしちゃいましたよ~。

 最初はひとりの女性を真ん中に互いに嫉妬心や敵愾心を燃やしていたふたりなのに、話が進むにつれて肝心の女性のことは置き去りになっちゃって、とにかく自分が優位に立つこと、相手に屈辱を与えることに熱中しちゃうあたりがなんだかオカシイ。ワイクの仕掛けたゲームでティンドルは恥をかいたわけだけど、それ以前にワイクはティンドルに奥さんを寝取られてるわけで、プライドを傷つけられると、女性より男性のほうがよりそのことを根に持つってことなのかもしれませんね~。

 ティンドルの言葉を借りるなら、第1、第2セットは前作と同じ、第3セットはかなり変更が加えられているそうです。前作を観ていないのでどっちのほうが好きかなんてことは云えませんが、わたしはこの第3セット、かなり楽しみました。なんだかねぇ、いかにもイギリス映画って感じで (←どんな感じじゃ/笑)。マイケル・ケインとジュード・ロウ、どちらも妖しげな色気がある俳優さんだから、この展開も納得という感じだったんでございます。

 特にジュード・ロウ、あんたはスゴイ! 素で観てみると頭髪がちょっと後退しちゃってて「そんなに美形か~?」と云いたくなるんだけど、演じているときの彼には本当に魅きよせられるような力があるわ~。もちろん、それを余裕で受けて立つマイケル・ケインも文句なしですが、ジュード・ロウがこの年の功に負けてないってのがすばらしい。後半になるほど黒さが全開になっていくから本当に見ごたえありました。

 ワイクとティンドル、騙しあいをしかけるふたりの言葉の、どこからどこまでが真実、あるいは嘘だったのか。目まぐるしく入れ替わる攻守の立場がそういうことをぼやけさせていきます。少なくとも第3セットでのワイクの申し出はかなり本気だったと思うんだけど、そこがあからさまでないところもおもしろいです。とにかく、言葉の端々、ちょっとした仕草、表情にもウラを感じさせるふたりの役者さんの演技合戦はお見事でした。非常に濃い89分を過ごすことができました! こうなるとマイケル・ケインがティンドルを、ローレンス・オリヴィエがワイクを演じたという旧作も観てみたくなります。ケーブルTVとかで放映しないかなぁ。

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by nao_tya | 2008-04-14 12:13 | 映画感想etc.