映画や本の感想アレコレ。ネタバレにはほとんど配慮してません。ご注意! 


by nao_tya
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カテゴリ:映画感想etc.( 98 )

〔ストーリー〕
 無敵艦隊をイギリスに破られて以来、その繁栄に陰りが見えはじめた17世紀のスペイン。傭兵のアラトリステはフランドルの戦場からマドリードへ戻り、戦友の最後の望みのとおりその遺児イニゴを引き取った。マドリードでは剣客として生計を立てていたアラトリステは、ある日イギリスからやってきた異端者ふたりの殺害を依頼されるのだが…。


原題:ALATRISTE
監督:アグスティン・ディアス・ヤネス
原作:アルトゥーロ・ペレス=レベルテ
脚本:アグスティン・ディアス・ヤネス
出演:ヴィゴ・モーテンセン、エドゥアルド・ノリエガ、ウナクス・ウガルデ

 数えてみると、昨年は1年間で42本の映画を劇場で観ておりました。一応年間50本が目標なので、せめてあと2~3本は観たかったというのが正直なところ。見逃してしまった映画も多かったし、今年はもう少し気合を入れていきたいです。で、そんな2008年の劇場での映画鑑賞のトリ(?)をつとめたのは、ヴィゴ・モーテンセン主演、アグスティン・ディアス・ヤネス監督のスペイン映画『アラトリステ』でございます~♪

 この映画、スペインでは2006年公開なのですが、2008年の師走にようやく日本で日の目を見ました! ハリウッド資本の入っていないスペイン映画だし、日本でDVDが発売されれば御の字だよね~と思っていただけに、劇場公開されてスクリーンで拝めるなんて感無量でございました。滞在時間はわずか48時間もなかっただろうとはいえ、ヴィゴもプロモーションで来日し、いろんな映画雑誌や映画サイトに登場したのもうれしかったです。

 さて、映画本編を観た感想でございますが、重厚感のある「映画を観た~っ」って感じられる映画でありました。ただ、予想していたとはいえやはり華やかさはなかった(笑)。いや、ヴィゴのファンとしてはもう眼福だらけの映画なんだけど、彼のファンという立場から離れてみると戦いのシーンはあまりにもリアル過ぎて土とほこり、汗にまみれた泥くさいものだし、描かれる2つの恋愛模様は悲恋に終わるし、主人公であるアラトリステの活躍でスペインが救われるわけでもない。繁栄にかげりが見え没落しつつある17世紀スペインに漂っていた空気を写し、全体的にほの暗い影を背負ったような内容なのであります。

 あとですね、エピソードをチョイスしてあるとはいえ、5巻もある原作小説を145分の映画にしたため、時代がぽんぽん飛んでエピソードが細切れ状態になってしまっているのがなんとも惜しい! 原作既読のわたしとしては「も、もうちょっとここは突っ込んで描いて~!」と思ってしまうシーンがいくつもいくつも…。全体を通してみれば、ちゃんとそれぞれのエピソードには繋がりがあって伏線も用意され、ひとつの物語を形成してるんだけど、とにかく説明不足なところが多いのです。前に登場した人物の再登場のしかたとか、エピソードを描きこんでないから唐突な感じがどうしても否めない。エピソードの繋ぎ目がゴツゴツした感じといえばいいのかな~。でも、観終わってみるとその無骨な感じが一種の味わいになっているようにも感じられたりして、なんだか不思議な映画です。これは予備知識のある人間の感想かもしれないんですけどね。

 映像は素晴らしい出来! ベラスケスの絵画を模したシーンが登場したり、陰影をうまく使って作りこまれた画面がとても・とても美しい映画であります。印象に残ったシーンは色々ありますが、特にアラトリステが入院したマリアの許を訪れて、彼女に首飾りをかけるシーンなどは、エピソードの切なさもあいまってため息が出るほど。まるで聖母子像のような構図といい、考え抜かれて撮影されてるんでしょう。小説を読んでいるだけではどうもイメージしにくかった戦闘シーンもわかりやすかった。映像の持つ力を最大限に活かしてあると思います。

 先に書いたようにストーリーの流れがわかりにくいところはありますが、役者さんたちの演技もすごく良かった~。国王がどれだけボンクラでもスペインという国に忠義を尽くし (決して国王個人に対してではないところがミソ)、友情に厚いアラトリステの、不器用だけれど誇りたかい筋のとおった生き方というものをヴィゴは体現していたと思います。自分の行為が報われることなんて少しも希望していない、どこか世捨て人のようなアラトリステの影をひそめた姿が、視覚というインパクトをもって迫ってきました。ほんっとうにヴィゴが渋くてカッコよかった♪

 ほかの出演者の方も、出番は少なかったけどマラテスタを演じたエンリコ・ロー・ヴェルソ、アラトリステの傭兵仲間コポンス役のエドゥアルド・フェルナンデスの印象がやっぱり強かったかな。コポンスが死んじゃうところとか、ちょっと涙ぐんでしまいましたわ…。マリア・デ・カストロのアリアドナ・ヒルさんも非常に美しくていいわ~。意外だったのは、アンヘリカちゃんが原作とはずいぶん性格が改変されてかわいらしい普通の女の子っぽくなってしまっていたこと。悪女な彼女を観たかった気もしますが、原作どおりの性格の悪さ(笑)は、短い登場時間では表現できなかったかもしれませんね~。

 大阪で公開初日の初回に観にいったんですが、劇場の入りは6割くらいだったかな。わたしを含めヴィゴのファンらしき女性のほかに、けっこう年配のおじさんとかが観にきてたのが目につきました。時代背景の説明とかが少ない映画なので、17世紀のヨーロッパ史を知らないとちょっとついていきにくいところがあるかもしれません。パンフレットなどに解説がしっかり載っているので、予備知識がないかたは映画上映の前に目をとおしておかれることをお勧めします。でも、わかってみると本当におもしろい映画だと思います!

●映画『アラトリステ』の公式サイトはコチラ

●原作本
アラトリステ』(1~5巻)
  アルトゥーロ・ペレス=レベルテ (インロック)
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by nao_tya | 2009-01-05 23:02 | 映画感想etc.
〔ストーリー〕
 とある街角の交差点で、一台の車が立ち往生していた。運転していた男性の目が突然見えなくなったというのだ。視界がいきなり真っ白になり、完全に視力を失ってしまったと男性は訴えるが、診察した医師は男性の眼球自体に異常が見つからず原因がわからず困惑する。その後この病は爆発的に広まり、失明した人々は政府の方針で隔離施設へと送り込まれることになるのだが…。


原題:BLINDNESS
監督:フェルナンド・メイレレス
原作:ジョゼ・サラマーゴ
脚本:ドン・マッケラー
出演:ジュリアン・ムーア、マーク・ラファロ、アリス・ブラガ

 フェルナンド・メイレレス監督の映画『ブラインドネス』を観てまいりました~! 前作の『ナイロビの蜂』がすご~く良かったので期待してましたが、やはり見ごたえのある映画でした。原因不明のまま次々と視力を失っていく人々が施設に隔離され、劣悪な環境のなかにおかれ、徐々に理性を失いその本能やエゴをむきだしにしていく…。こういうストーリー展開だけを聞くと、なんだか観るのも耐え難い陰惨なシーンの連続を頭に描いてしまいます。

 が、実際に観てみると輪郭がじんわりと周囲にとけこんだような、微妙にソフトフォーカスがかかったような映像の力もあいまって、確かに非常に無残なエピソード、シーンもたくさんあるんだけど、不思議に美しくファンタジックな世界が作り上げられていました。隔離施設にひとりの男性が持ち込んだラジオでみなが音楽に聞き入るシーンや、ラストの医者の家でのシーンなど、とても静謐でおだやかな場面が心に残っています。

 “目が見えなくなる”というのは比ゆ的なものであって、この映画のように視力を失った人間がすぐさま理性を手放してしまうというのは極端な描き方だとは思います。それでも、ほんの少し歯車が狂って小さなきっかけが与えられただけで、人間が作りあげた秩序やルールがあっという間に崩壊してしまうというのも真実で、この『ブラインドネス』はそれを淡々と静かに、そしてじっくりと見せつけてくれました。

 周りじゅうが見えない人ばかりのなかで“目が見える”という圧倒的に有利な立場にいるため、自然にリーダーとしての責任を果たすことになる医者の妻が、その見える特権ゆえに陥っていく孤独というのも切なかった。目が見えないことで人種や年齢を超えて人々が知らずに得ている共感の輪のなかからひとり弾き出されたような恰好になってしまい、一番近しかったはずの夫さえも自分のことを理解してくれないなんて哀しすぎる…。

 この映画の登場人物には個々の名前が与えられていないし、場所や時代も明確になっていません。だからなのか、暴力で人から金品を奪い、女性をレイプし、人を支配することに喜びを感じているような“第三病棟の王”や、相手が見えていないことをいいことにからかい混じりに人を振り回す底意地の悪さを見せる警備兵も含めて、それぞれの人間のなかに少しずつ自分のイヤらしい汚い部分を見つけてるような気がして、ちょっとウツな気分になるところも~(笑)。

 でも、そういう人間の醜さをこれでもか~っと見せつけられたからこそ、目が見えなくなって上辺のものを全部とっぱらって、すがるようにして取り合った手の温かさとか、人の持つ美しい部分がどれほど貴重なものかということはしっかり伝わってきたように思います。失ったときと同じように突然戻ってきた視力を手にしたとき、自分が以前に見えていたときには実はいろいろなことが見えていなかったことに気付いたということを忘れないでいたい、忘れない努力をしなければいけない。実際に自分の目が見えなくなったわけではないけれど、この映画を観てそんなふうに思ったのでありました。物語の中盤はひどく辛い展開でしたが、最後に差し込んだ光は圧倒的です。ただ、人間はすぐに現状に慣れてしまう生き物だから、やっぱり一抹の不安も感じとってしまうんですけどね~。

 あと、映画の内容には全然関係ないけど、映画を観ている間じゅうひっかかってしまったことをひとつ。『ブラインドネス』には“最初に失明した男”として伊勢谷友介さんが、“最初に失明した男の妻”役で木村佳乃さんが出演してまして、このふたりが会話するときには日本語が使われることが多かったんですよね。で、この日本語の会話にもご丁寧に日本語字幕が出てくるんだなぁ(笑)。英語の会話のなかに突然日本語が割り込んでくると、一瞬日本語と判断できなくて意味が取れないこともあるのでありがたいときもありました。でも、字幕で先読みしちゃった日本語セリフをあとから耳で聞くってパターンがほとんどで、なんとも間が抜けた感じになったのも確かだったり…。字幕が出たらとりあえず読むってのがもう身体に馴染んじゃってるもんでねぇ。ご覧になったほかの方々はどう思われたんでしょう??

●映画『ブラインドネス』の公式サイトはコチラ

●映画の原作本
 『白の闇
  ジョゼ・サラマーゴ (日本放送出版協会)
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by nao_tya | 2008-12-01 23:07 | 映画感想etc.
〔ストーリー〕
 16世紀のイングランド。国王ヘンリー8世は王妃キャサリン・オブ・アラゴンとの間に世継ぎの王子が誕生しないことに悩んでいた。そのことを知った新興貴族のブーリンは義弟ノーフォーク公爵と計らい、ブーリンの娘アンを愛人候補として差し出すことにした。しかし鹿狩りのためブーリン邸にやってきた王は、アンではなくその妹メアリーを気に入ってしまう。メアリーはすでに結婚していたものの、気の進まぬまま王に望まれ宮廷に出仕することになるのだが…。


原題:THE OTHER BOLEYN GIRL
監督:ジャスティン・チャドウィック
原作:フィリッパ・グレゴリー
脚本:ピーター・モーガン
出演:ナタリー・ポートマン、スカーレット・ヨハンソン、エリック・バナ

 週末に姉から「映画のタダ券あるねんけど、なんか観にいかへ~ん?」とお誘いの電話がかかり、いそいそと出かけてきました。どうやらお義兄さんの会社の福利厚生の一環で映画のチケットが配られたのをわたしに回してくれたみたいです。ありがとう、お義兄さんっ♪

 観てきた映画はジャスティン・チャドウィック監督の『ブーリン家の姉妹』。実はわたし、エリザベス1世の母であるアン・ブーリンのことやヘンリー8世のことは知っていましたが、アン・ブーリンに姉 (映画では妹になっていますが、姉説が有力らしい) がいたことや、その姉のメアリーのほうが先にヘンリー8世の愛人になっていたことなどは、この映画の存在を知るまでまったく知りませんでした。最初にこの映画のことを聞いたとき、メアリーのことを映画をつくるうえで創造した架空の人物かと思ったくらいです。

 だから、原題の“THE OTHER BOLEYN GIRL”=もうひとりのブーリン家の娘というのは、歴史上あまりにも有名なアン・ブーリンの影にかくれるようになってしまったメアリーのことかと考えたんですが、実際に映画を観てみるとこれはどちらともとれるように感じましたね。少なくともふたりの姉妹のあいだでは、相手こそが人から注目され関心を集める存在であり、自分は影の存在でしかないと考える時期があったわけですから。

 小さなころから役者をやっていて演技力もある若手女優という共通項はあるけれど、世間的なイメージはまったく違うスカーレット・ヨハンソンとナタリー・ポートマンが対照的な姉妹を演じるというのがまず興味をそそりますよね~。結論からいってこのキャスティングは大成功だったと思います。ふたりとも役柄とは違う素の部分をまったく感じさせず、スカーレットは純真でおだやかなメアリーに、ナタリーは上昇志向や我の強いアンに、それは自然に見事になりきっておりました!

 そして、性格的には似たところはないけれど、ふたりとも (表面に出るか出ないかの違いはありますが) 芯の強さという点ではよく似通っていてやはり姉妹であり血のつながりがあるということ、互いのことを妬んだりうらやんだり憎んだりしながらも、どうしても切ることができない深い絆や愛情、そういった諸々を感じさせる仕草や細かな表情、視線の投げ方などがとにかくうまい~。

 歴史的な資料が少ないぶん、メアリーという女性を自由に肉付けすることができ、そのメアリーと対比することでアン・ブーリンもまた単なる悪女や野心家ではなく、自分の才覚で道を切り開こうとした、ある意味現代的な女性という側面を強く出すことができて、観てる側としては感情移入がしやすかったです。

 時代劇なので衣装なども華やかで見ごたえがありました。アンはグリーンやブルーの寒色系、メアリーは赤や黄色の暖色系のドレスを身にまとってますが、デザインなどはおそろいでとてもかわいいです。フランスから帰国したアンが身につけるようになったアルファベットのBをデザインしたネックレスをはじめ装飾品もゴージャス。こういう細かなものが映画の雰囲気を高めるのに一役買ってる感じ。

 姉妹の母親役にはクリスティン・スコット・トーマス、ヘンリー8世はエリック・バナ、キャサリン・オブ・アラゴンはアナ・トレントと、ほかのキャストもゴージャス。あ、姉妹の弟はジム・スタージェスが演じてましたね~。ジム・スタージェスは最初どこかで観た顔…? と考えてて、ラスト近くでようやっとわかったくらいなんですけど(笑)。

 ヘンリー8世は奥さんをとっかえひっかえして、結局6人も王妃がいるような人なので、わたしはあまりいい印象を持ってないんですが、エリック・バナが演じるとすっかり“苦悩の人”! 特にアンの命乞いに現れたメアリーと対面したときのヘンリー8世は疲れきった様子が同情せずにはいられない風で、演じる人によってずいぶん印象が変わるもんだな~と思ってしまいました (でもよくよく考えたらアンの処刑の翌日にジェーン・シーモアとの婚約を発表してるんだよな…)。

 一緒に観た姉は、この映画が歴史上の事実に色々脚色した物語だということをまったく知らずにいたそうですが、それでも華麗な宮廷絵巻とドロドロした人間模様をかなりおもしろく観たそうです。イギリス史を少しかじっていればより一層楽しめることは間違いなし! わたしはこの映画を観て、『エリザベス』、『エリザベス:ゴールデンエイジ』を観たくなってしまいました(笑)。

●映画『ブーリン家の姉妹』の公式サイトはコチラ

●映画の原作本

ブーリン家の姉妹
 フィリッパ・グレゴリー (集英社文庫)
 
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by nao_tya | 2008-11-17 23:11 | 映画感想etc.
〔ストーリー〕
 1969年。小学生のケンヂは原っぱに秘密基地を作った同級生の友人たちと、20世紀の終わりに人類滅亡を企む悪の組織と戦う正義の味方の物語を考えだし、それを『よげんの書』として書き記して遊んでいた。1997年、大人になったケンヂはミュージシャンになる夢をあきらめ、姉の子どもカンナを育てながらコンビニを経営していたのだが…。


監督:堤 幸彦
原作:浦沢直樹
脚本:福田 靖、長崎尚志、浦沢直樹、渡辺雄介
出演:唐沢寿明、豊川悦司、常盤貴子

 先週末は堤幸彦監督の『20世紀少年 第1章 終わりの始まり』を観てきました! 本当は9月の初めに休みをとって母、姉、わたしの3人で観にいく予定にしていたのに、怒涛の忙しさで休暇が流れちゃって、わたしだけ観にいけなかったんですよね~(涙)。で、今ごろになって観てきたわけですが、公開から1ヶ月以上経ってるわりに観客の入りはほどほどって感じでちょっと驚きました。もっとガラガラかと思ってた! (←失礼なヤツ)

 わたしは浦沢直樹さんの原作はコミックスでずっと追いかけて読んでたので、この映画を観てまず浮かんだのは、「よくこれだけヴィジュアルにこだわったキャスティングをしたな~っ」という感嘆でした。子どもから大人まで、できるだけ原作コミックスのイメージに合った役者さんを起用しているうえ、髪型やメイクまでも工夫してるんだから、“コミックスからそのまま抜け出してきたような”という表現が一番ピッタリくる布陣だったと思います。もちろん見た目だけじゃなく演技にも定評のある人がそろってましたし、その点も安心して観ることができました。

 原作と同様、時間軸がケンヂたちの少年時代から青年時代に行きつ戻りつする展開でしたが、ほどよくエピソードが整理されていて観ていて混乱することもなく、うまくまとめていたとも思います。これは原作を読んでストーリーの流れをあらかじめ把握している人間だからこその感想なのかしら、とも考えましたが、原作をまだ5巻くらいまでしか読んでない状態で映画を観た姉も、流れがわかりにくかったとは云ってなかったので、予備知識がまったくない状態でも置いてけぼりにされることはないんじゃないかと思われます。

 ただ全体の感想としてはわたしはちょっと辛口になってしまうかも…。せっかく再現されたケンヂたちの少年時代、昭和40年代の風景も時代が前後する展開のために、出てきたと思ったらまた消えて、じっくりノスタルジーに浸る間も与えられなかったし、なによりこの映画は三部作なだけあって、この第1章では50年に及ぶ物語のほんのさわりしか描かれておらず、小さなヤマ場はいくつもあるものの、全体的に盛り上がりきらないまま終わっちゃった気がするからです。これは大きな物語の導入部である以上、しょうがないことと云えばそれまでなんですけどね~。

 あと、登場人物たちもザクッと紹介するだけで、個々人に思い入れをもてるような深みを与えきれてなかった気がする…。もちろんそれぞれのエピソードは原作にあるものでしたが、与えるインパクトが違ってしまってた。コミックスで読んでいるとひとつひとつのエピソードをかみしめて味わう時間があるじゃないですか。同じ場面を何度でも好きなだけ繰り返し観ることができる。でも映画では、ひとつのエピソードを頭のなかで反芻してる暇なんてどこにもなくて、キャラクターに肉付けするよりもどんどん進んでいく話を追いかけるのに気をとられてしまいました。展開がスピーディなためにそれぞれの出来事の重みがなくなってしまったように感じてしまったのです。

 それと、あまりにも原作に忠実なヴィジュアルを作りあげてしまったため、製作者側がそれだけで満足してしまってたような気がしたんですよね~。「原作コミックスをカンペキに映像化!」と云われれば確かにそのとおりです。でもそれ以上のものは、少なくともこの第1章に関してはなかったかな、と思いました。

 と、文句は云いつつも、第2章以降が公開されたら気になって観にいっちゃうとは思うんですけどね(笑)。第2章以降になると、「わぁすごい、原作そっくり~!」というインパクトはさすがに薄れてくると思うので、映画ならではのおもしろさをぜひとも期待したいところです。

●映画『20世紀少年』の公式サイトはコチラ

●原作コミックス

20世紀少年/本格科学冒険漫画
 浦沢直樹 (ビッグコミックス)
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by nao_tya | 2008-10-08 23:33 | 映画感想etc.
〔ストーリー〕
 ウェスリーは仕事もプライヴェートも冴えない青年で、ストレス満載の日々を送っていた。ある日、そんな彼の前に謎の美女フォックスが現れた。フォックスが語るところによると、ウェスリーの父親はギリシャ時代から続く暗殺組織“フラタニティ”のメンバーで凄腕の暗殺者だったが、組織の裏切り者クロスに殺されのだという…。


原題:WANTED
監督:ティムール・ベクマンベドフ
原作:マーク・ミラー、J・G・ジョーンズ
脚本:マイケル・ブラント、デレク・ハース、クリス・モーガン
出演:アンジェリーナ・ジョリー、ジェームズ・マカヴォイ、モーガン・フリーマン

 久しぶりの更新でございます…。なんと前に記事をアップしてから1ヶ月以上経ってしまいました。8月後半は暑さでグロッキー気味で、9月に入ったらまたボチボチ…などと考えていたら、9月になった途端でっかい仕事が飛び込んできてとんでもない事態になっちょりました。今の仕事に変わってからもうすぐ10年ですが、あれだけ忙しかったのは初めて! 就業時間中にヒマをもてあますのもイヤですが、あの忙しさはもう二度とゴメンですだ。まぁそんな仕事も山を越え、平穏な日常が戻ってまいりましたので、またマイペースながら更新していきたいと思います。

 で、記念すべき(?)復活第1回目の記事は映画の感想でございます。観てきたのはティムール・ベクマンベドフ (どうでもいいですが、この監督のお名前、エキゾチックで耳慣れないせいか非常に覚えにくいです…) 監督の『ウォンテッド』。銃弾を銃弾で跳ねかえすというとんでもない荒業を繰り出す予告を観てから気になってまして。

 観る前は、タフでワイルドなアンジー姐さんの相手役を務めてるのがジェームズ・マカヴォイだってんで、アンジーの影にかすんじゃうのではないかと少々不安でしたが (だって“タムナスさん”だよ!?)、パニック症の情けないダメ男から変化していく役で、なかなかハマってて良かったです。上半身裸のシーンもありましたが、タムナスさんと比べると一目瞭然の違いで、かなり鍛えたんでしょうね~。アンジー姐さんはもう文句なしにカッコよく、云うことはございません(笑)。社会派のシリアスな映画より、こういうムチャな設定の濃ゆいキャラクターのほうがアンジーには合ってる気がしちゃうなぁ。

 原作のグラフィック・ノベルは読んだことがないんですが、弾道を (意志の力で?) 曲げることができるとか、相当ムチャな設定が満載。そのあり得なさ、荒唐無稽も含めて非常に楽しかったです。浸かってるだけでひどい怪我もすっきり治るというお風呂、ぜひ入ってみたいわ(笑)。なにより、アクションシーンの映像がすごかった~! ベクマンベドフ監督の『ナイト・ウォッチ』や『デイ・ウォッチ』は未見なので、この『ウォンテッド』と似た感じなのかはわからないですが、わたしにとっては非常に新鮮でございました。

 ウェスリーがたったひとりで紡績工場に乗り込んでいったところは、ちょっと『リベリオン』や『ウルトラヴァイオレット』のガン=カタを髣髴とさせるものがありましたが(笑)、『ウォンテッド』のほうが迫力があった気がしたし、スゴイと思っちゃいました。なんでかしら?? どこがどう違うかとか、明確に言葉にはできないんですが~。

 映像と比較するとストーリーとしては平凡ですが、派手な映像にのせられてトントンと物語が進んでいって、驚きの展開があるわけではなくとも最後まで勢いを失わないままなのも良かったと思います。ところどころ入っているコミカルなシーンもけっこうツボにきましたし。

 あと、暗殺組織“フラタニティ”の元メンバーで裏切り者のクロス役がトーマス・クレッチマンだったのはわたし的にポイントアップですね! 『NEXT』を見逃してしまったので久しぶりにスクリーンでその姿を観ました。相変わらず男前でした(笑)。ただ、ウェスリーとの関係を考えると少々年齢が若すぎることは横においといても、セリフがほとんどなくてかなりもったいない使われ方をしてたのが残念だったかな~。まぁ彼の場合いっつもこんな感じなんだけどサ(涙)。ザ・ガンスミス役のコモンよりは全然マシだったということで…。クレッチマンがもっと活躍する映画を観てみたいもんでございますよ。

●映画『ウォンテッド』の公式サイトはコチラ

●映画原作のグラフィックノベル (ペーパーバック版)

Wanted
 Mark Millar、J. G. Jones、 Paul Mounts
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by nao_tya | 2008-09-29 23:00 | 映画感想etc.
〔ストーリー〕
 中学校へ入学して間もなく、中学へ通うことが苦痛になってしまったまいは、母親の提案でしばらくの間母方の祖母の元で過ごすことになった。イギリス人であるおばあちゃんは、まいに自分の家系には魔女の血が流れているという。自分も魔女になれるかと問うまいに、おばあちゃんは魔女修行を始めるのだが…。


監督:長崎俊一
原作:梨木香歩
脚本:矢沢由美、長崎俊一
出演:サチ・パーカー、高橋真悠、りょう

 『RYU-RYU』さんでランチを食べる前に観ていた映画というのは、長崎俊一監督の『西の魔女が死んだ』でした。友人のT子ちゃんにお勧めされて、原作である梨木香歩さんの小説『西の魔女が死んだ』を読んだのは、もう数年前になると思います。“西の魔女”と聞いて最初に思い浮かんだのは「オズの魔法使い」に登場する悪い魔女だったので、どんなコワイおばあちゃんが登場するのかと思って読み始めたらまったく予想外のお話! そして、最後まで読み終えたときの、哀しくて切ないんだけどそれを包み込むほんのりとあたたかい、ふわふわしたものも残る心地は今でも忘れられません。それ以来梨木さんのファンになって、ほかの著作もいろいろ読んできました。

 そうやって思い入れがある分、映画化されたと知っても原作のイメージが壊されてるんじゃなかろうかと、観にいくのをずいぶん迷ってしまうことに…。6月に封切られてから8月半ばまで公開が続いているので、けっこう評判がいいんだな~と、ようやく重い腰をあげて観にいってきたわけです。

 わたしのなかのイメージでは、おばあちゃん (西の魔女) はターシャ・テューダーさん (アメリカの絵本作家さんで、50代半ばから19世紀ごろのスローライフを送っていらした人。先ごろ92歳でお亡くなりになられました…) に重なってしょうがなかったんですが、演じていたサチ・パーカーさんが本当に素晴らしくて、わたしのイメージを裏切らないおばあちゃんぶり(?)。物語の世界とまったく違和感なくなじんでて、この方をキャスティングしたのはすごい慧眼だと思いましたです。なめらかで、でもやはりどこか日本人とは違う発音の日本語で、一語一語ゆったりと語りかけてくるおばあちゃんのお話は、聞いてる側が思わず耳をかたむけてしまう不思議な力があるみたい。

 緑ゆたかな自然のなかで、ひとつひとつの家事をおろそかにせず楽しんで、毎日を規則正しく丁寧に生きていけば、知らず心身ともに元気を取り戻していく。映画のなかで描かれる“魔女修行”というのはこういうものです。具体的に言葉にするとなんだか気恥ずかしいくらい基本的で当たり前のことですよね。それを改めて大真面目に語られたりすると、くすぐったさが高じてかえって反発したくなったりするものですが、この映画の世界はどこかファンタジックで幻想的なものなので、説教くささがあまり感じられず、おばあちゃんとまいの生活の良さが素直に心のなかに入り込んでくる気がしました。自分をふりかえってみると、まったく実践できてないことばかりで「とほほ…」っていう気分になってしまうんだけども(笑)。

 まいとおばあちゃんの関係に、その存在でひずみをもたらすことになるゲンジさんを演じた木村祐一さんもなかなか良かったです。なにも云わなくとももうそこに立っているだけで胡散臭くて(笑)、まいにとって居心地の良い夢のような世界に乱入してきた異物という感じがよく出てたんじゃないかな~。

 最後のおばあちゃんのメッセージが本当に魔法によるものなのか・そうでないのかは、観る人の受け止め方次第だと思います。わたしとしては多分まいが最初は見落としていただけだと考えちゃうわけですが、たとえそうであったとしてもおばあちゃんのまいに対する愛情の深さがを胸をうって、鼻の奥がツ~ンとするような気持ちになってしまいました (原作でこのシーンを読んだときは本当に泣いてしまった…)。

 映画のエンドロールに流れる手嶌葵さんの歌も映画の雰囲気にぴったりよりそっていて、観たあとにはゆったりとしたやわらかい気持ちになれる映画で、わたしはすごく良かったと思います。疲れたときにもう一度観てみたいな~。

●映画『西の魔女が死んだ』の公式サイトはコチラ

●映画が撮影された清里で、おばあちゃんの家のロケセットが公開中のようです。
 詳しくはコチラへ。

●映画の原作本
西の魔女が死んだ
 梨木香歩 (新潮文庫)
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by nao_tya | 2008-08-15 12:25 | 映画感想etc.
〔ストーリー〕
 ジム・ゴードン警部補と地方検事ハービー・デントの協力を得て、バットマンはゴッサムシティのマフィアたちの資金源を断っていく。追い詰められたマフィアたちに正体不明の男ジョーカーがバットマンの殺害を提案。犯罪を純粋に楽しむジョーカーはゴッサムシティを混乱のなかに陥れていく。


原題:THE DARK KNIGHT
監督:クリストファー・ノーラン
原案:クリストファー・ノーラン、デヴィッド・S・ゴイヤー
脚本:ジョナサン・ノーラン、クリストファー・ノーラン
出演:クリスチャン・ベイル、マイケル・ケイン、ヒース・レジャー

 先週末はクリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト』の先行上映にいってきました~♪ 『バットマン ビギンズ』が文句なくおもしろかったし、先に公開されたアメリカでの評判もすこぶるいいしで、非常に楽しみにしておりました。実際観てみたら、とにかく密度の濃い、重厚な映画で、152分の間ひたすら圧倒されっぱなし。いや~スゴかった。

 予告を観てると主役のはずのバットマンがほとんど姿を見せず、ひたすらヒース・レジャー扮するジョーカー、ジョーカー、ジョーカーだったもんで、「ヒースが亡くなったからとはいえ、そんなにジョーカーばっかりフューチャーするってどーなの?」と思っていましたが、いざ本編を観てみたら納得。ジョーカーの狂気という言葉でも薄っぺらいような、突き抜けた存在感がすさまじかった…! 映画を観てから数日たった今でも、ジョーカーのあの「ヒャ~ハハハッ!」という甲高い笑いが耳に残ってる感じですよ。

 しかしだからといって、他のキャストがジョーカーの影にかすんでしまうわけでもなくて、誰が欠けてもこの映画の高い完成度はあり得なかったと思います。ホワイトナイトたるデントが善を体現しているからこそ、それをあざ笑うかのように無軌道な犯罪を繰り返すジョーカーの悪が際立つわけだし、バットマンの行為は善ではあるけれど、そのやり方は決して法に則ったものではなく、なにかの拍子に悪へと傾きかけない危うさがあることを、ジョーカーは無造作にさらけ出してみせます。

 そして、ジョーカーの非道と暴力に翻弄されたデントは復讐にとりつかれ、バットマンさえもが逡巡を見せるなか、もうどうしようもない絶望のギリギリ一歩手前で、ごく普通の人たちはもちろん、犯罪者のなかにだってある善を見せてくれるあたりがもうもう~! あまりにも鮮やかで、フェリーでのシーンは震えがくるような気持ちになってしまいました。

 アクションシーンは思ったよりも多くなかったですが、その少ないアクションシーンはことごとく迫力があってカッコよかったです~。バットポッドがバットモービルから分離して疾走していくところとか、思わず固く握りこぶしをにぎっちゃいましたわ。前作よりもまた一段とリアルさを増した (もうほとんどニューヨークと云ってもいいくらい) ゴッサムシティの様子もダークで映画の雰囲気にぴったり。

 152分はちょっと長い上映時間ですが、バットマン (ブルース)、デント、レイチェルという主要なキャラクターのそれぞれの物語がしっかり描かれているのでとにかく見ごたえあり。それにジョーカーの立ち回りがかなりクレバーで先の予想がつかず、展開を追うのに必死になってて(笑)、全く退屈しませんでした。追い詰めたと思ったらするりとそこから抜け出し、あっという間に追う立場の人間が窮地に立たされていくのがすごくスリリングでした。

 冒頭の銀行強盗のシーンではウィリアム・フィクトナー (『プリズン・ブレイク』のマホーン捜査官役) がちょっとカッコいい役で登場したし、スケアクロウ役でちょろっとキリアン・マーフィが顔を出したのもうれしかったです。

 今回あえて汚名をかぶったバットマンに、(あるとしたら) 次作はどんな展開が待っているのでしょうか。ジョーカーという存在は捕らえることができても、正義があるからこそそれを敢えて打ち破ろうとする悪はなくならないということを描き出してしまったわけで、明るさは求めようがないところにきちゃってる気がするな~。とことんクリストファー・ノーランはブルースを追い詰めていくようで、ちょっとこわいくらいです。

●映画『ダークナイト』の公式サイトはコチラ
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by nao_tya | 2008-08-06 14:10 | 映画感想etc.
〔ストーリー〕
 いつもと変わらぬ朝を迎えたニューヨークのセントラルパークで異変が始まった。園内の人間が突然動きを止め、やがて次々と自ら命を絶ってしまったのだった。異変は園の外でも起こり始めるが原因はわからない。フィラデルフィアで科学の高校教師をしているエリオットは生徒たちを帰宅させ、同僚のジュリアンの誘いを受けて彼の母親が住む安全と思われる場所へ避難することにした。妻のアルマとともに駅で娘を連れたジュリアンと合流したエリオットは電車で目的地へ向かうのだが…。


原題:THE HAPPENING
監督:M・ナイト・シャマラン
脚本:M・ナイト・シャマラン
出演:マーク・ウォルバーグ、ズーイー・デシャネル、ジョン・レグイザモ

 乳腺科の細胞診の結果を聞きにいく前に、時間が中途半端にあったので映画を観にいってました。観たのはM・ナイト・シャマラン監督の『ハプニング』。どうもこの監督の映画は、『シックス・センス』の印象があんまりにも鮮やかすぎて、以降の作品 (全部観てるわけじゃないんですが) の感想がイマイチになってしまいがちです。

 今回の『ハプニング』は、前に観た『ヴィレッジ』よりはおもしろくて、『シックス・センス』よりはぐっと下って感じだったかな~。シャマラン監督の映画は“どんでん返し”を警戒しながら観てしまうんですが、『ハプニング』はずいぶんストレートな展開の物語でした。異変が起こりはじめてからしばらくの間、人がバタバタ死んでいく様子はとにかく強烈なインパクト! さっきまで普段と変わりない時間が流れていたはずなのに、なにがきっかけなのか不明のまま、いきなり周囲で人が無造作に大量に死んでいく様を淡々と描いていて、すごい恐怖感をあおられました。

 ただ、この恐怖感や緊張感は映画の最後までは続かず、“多分こうであろう”という原因を主人公のエリオットが推測してしまうと、以降はなんとなく尻つぼみになってしまった印象はありましたな。そのかわり、ちょっと偏屈で不気味なおばあさんが登場して、違うスリルを味わうことはできたんですが…。

 あと、原因 (らしきもの) がわかってもひとりの人間には解決しようもないことなので、エリオットたちはひたすら安全な場所を求めて逃げるだけ。別にそのこと自体がおかしいわけじゃないんですが、エリオットを演じてるマーク・ウォルバーグがそもそもタフガイのイメージがある役者さんだということもあって、もう少し違う展開 (なんらかの形で戦って防御する方法を見つけるとか) を期待してしまったんですよね~。それにエリオットの妻であるアルマが「彼は決してあきらめない人なの」と云っていたわりに、↑の偏屈なおばあさんの家でエリオットがとった行動はどーなんだ、と思わないでもない。

 しかしまぁ人間が地球や自然に与えつづけてきたダメージの反動が、密やかにわたしたちの背後に迫っているのかもしれない、終末はすぐそこまできているのかもしれないという警告や、追い詰められた状況のなかでの夫婦とか家族の愛情なんかは伝わってきました。ただ、全体的に出した問題に解答を与える気は最初からないんだろうな~という、どうも投げ出されたような中途半端な印象があって、消化不良な気分のまま映画が終わっちゃった感じでした。別に退屈したわけでもつまらかったわけでもないのに、なんなんだ、この納得できない感は~(笑)。

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by nao_tya | 2008-08-04 22:56 | 映画感想etc.
〔ストーリー〕
 港町・守加護 (すかご) を牛耳るギャングのボス天塩の愛人マリに手を出してしまった手下の備後は、命を助けてもらう条件として、幻の殺し屋“デラ富樫”を連れてくることになった。しかし正体不明のデラ富樫を見つけ出すこともできず、期限の5日が迫って追い詰められた備後は、売れない役者・村田大樹を雇ってデラ富樫の身代わりをさせることを思いつく。映画の撮影と偽ってなんとか村田を守加護へ連れてきた備後だが…。


監督:三谷幸喜
脚本:三谷幸喜
出演:佐藤浩市、妻夫木聡、深津絵里

 いや~もう毎日毎日あっついですね~っ! 空調の効いた映画館で映画を観ている間はのんびり極楽気分ですが、いざ自宅に帰ってパソコンを前に感想をまとめようとすると、あまりの暑さに頭がウニってしまい、なにも考えられなくなりますですよ。自室のエアコンはけっこう古いので、微妙な温度調節がきかないし (スイッチを入れると寒いぐらいに冷えちゃう)、電気代も高くつくからほとんど使わないのが敗因ですなぁ (←新しいの買えよ/笑)。

 で、映画の話に戻りまして。三連休中に三谷幸喜監督の『ザ・マジックアワー』を観てまいりました。公開前もしてからしばらくも、とにかく三谷監督 (と主演の佐藤浩市さん) があらゆる番組にプロモーションで登場していたのを目にしてたので、なんかもう観たような気になっちゃってましたが、実はまだだったので(笑)。そんなに大きな劇場ではなかったせいか、場内は7割がた埋まっていた感じでした。公開してから1ヶ月以上経つんだからすごいですよね、これって。

 観た感想は、「かなりおもしろかった~」でございます。劇場の観客全員が思わず大爆笑するところが何箇所もあって、すごく楽しかった。爆笑するだけでなく、「ぷぷぷっ」と噴き出してしまうシーンも多くて、たくさん腹筋と表情筋を使ってきました。ただ、映画を作っている側の“笑わせよう”“楽しくしよう”という意図が過剰すぎて、ちょっと上滑りになってる部分がなきにしもあらず、ってな感じがしなくもなかったかな。ところどころノリ切れない部分が出てきて、スッと自分のなかの楽しいボルテージが下がる瞬間を、やけにくっきり感じてしまったのです。コメディにしては上映時間が長くて (136分)、間延びしてしまったのかもしれません。

 でもまぁそういう瞬間があってもまたぐぐーっとおもしろ度がアップしていくので、全体的にはとても満足感があってハイテンションなまま終わりました。三谷監督の映画や裏方さんに対する熱い思いがびんびん伝わってきました。劇中に出てくる映画もノスタルジックで無国籍な雰囲気が出てておもしろかった。『暗黒街の用心棒』なんて一度観てみたいくらい魅力的~。ちょっとレトロな守加護の町並みのセットもすばらしい! エンディングではこの町のセットを組み立てていく様子が早送りで流れるんですが、よく作ったよなぁと感心。このセット、映画の撮影終了後どうなったのでしょう。もう取り壊しちゃったのかしら。だとしたらもったいないわ~。

 三谷さんの映画作品は話の運びからセリフのひとつひとつまですごく計算されていて、『THE有頂天ホテル』なんかはおもしろいんだけど、その計算がわざとらしさに結びついてちょっと鼻につくような感じでした。でも、この『ザ・マジックアワー』では、守加護という“映画のセットのような”町のなかで起こる物語を、虚構とわかっていながら見せる余裕のようなものがあって、本当に良かったです♪ ほんのチョイ役にこんな人が! というお楽しみがあるのもうれしいよね~。演じてる役者さんたちも自分の役を目一杯楽しんでいる感じで、特に主演の佐藤浩市さんはサイコーでした。この人がこんなにコメディが似合う人だとは…。役者さんひとりひとりに“らしい”役をふりながら、そこに意外性も出してくれる三谷さんは演出家としてもすごいんだな~と改めて感じましたですよ。

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by nao_tya | 2008-07-25 15:45 | 映画感想etc.
〔ストーリー〕
 16歳の高校生ジュノは、男友だちのポーリーと興味本位でした1回のセックスで妊娠してしまう。親友のリアにだけはことの次第を打ち明け、中絶することを決めたジュノだが、訪れた病院で思い直すことに。リアとともにタウン誌で養子を探す広告を出している夫婦のなかから、理想的な1組を見つけたジュノは彼らに連絡をとり、両親にも妊娠を告げるのだが…。


原題:JUNO
監督:ジェイソン・ライトマン
脚本:ディアブロ・コディ
出演:エレン・ペイジ、マイケル・セラ、ジェニファー・ガーナー

 もうすぐ公開が終了だ! と、あわてて先週末に『JUNO/ジュノ』を観にいってきました。監督はジェイソン・ライトマン。アメリカで公開が始まったときはわずか7館での上映だったのに、その後野火のように評判が広がり全米で大ヒット! という映画です。ちょっと前なら『マイ・ビッグ・ファット・ウェディング』、最近なら『ミス・リトル・サンシャイン』あたりが同じように口コミで上映館が増えていった映画ですよね。アメリカではたまにこういう低予算なのにすごいヒット作が出てくることがあって、これがやっぱり口コミで広がるだけあっておもしろかった~。

 まずエレン・ペイジが演じた主人公のジュノがすごくイイ。軽妙だけど冗談なのか悪態なのか見極めがたいきわどいヒネった物云いをするし、本人の意識のなかでは付き合っていたわけでさえないポーリーと、なんとなくしてしまった1回のセックスで妊娠してしまう、という役なので、はすっぱで無責任なコのかと思いきや、前向きで愛情にあふれたとってもピュアな女のコでした。話が進むにつれて、子どもの部分と大人な部分が混在している彼女をどんどん好きになっていっちゃいましたよ。

 ジュノが妊娠がわかったときにまず考えたのは中絶。それを思いとどまったあとは生まれてくる子どもと自分にとって最善の道を選ぼうと努力します。いったん“こうする”と決めたら、グチグチと自分の行為を後悔したり相手に責任を求めることに時間と労力を費やしたりせず、まず行動しちゃうその潔さと強さはちょっとまぶしいくらい。子どもを養子に出すということをすごく軽く、簡単に考えているように見せかけて、ジュノにはジュノなりの思いや葛藤があることもわかります。出産のあと子どもの顔を見ずにすませる意思の強さと、それでも流さずにはいられない涙のシーンがすごく印象的でした。

 そして、大きな衝撃は受けてもハードドラッグにはまるよりマシだと、あっさりジュノの選択を受け入れちゃう父親と義母の反応にはびっくりでした。たとえアメリカでももっとヒステリックになる気がするんですが~。でもこれは子どもに対する愛情が希薄だったり無関心だったりするからじゃなくて、ジュノをひとりの人間として扱っているからこそで、彼女の意思を尊重しているわけですね。もちろん彼女は自立した大人ではないから、親としてできる限りのサポートはする。その距離のとりかたがやっぱり潔いしあたたかい。ジュノを侮辱する人間にピシャリと言い返す義母の姿にはスカッとしたしカッコよかった!

 ジュノの妊娠がわかってからも変わらぬ態度で側に寄り添ってくれる親友のリアも良かったし、頼りなさそうだけど朴訥で一途そうなポーリーもかわいい。養親候補のヴァネッサも素敵な女性です。ヴァネッサは最初はすごく神経質そうで「なんだかな~」という印象だったのが、ジュノが子どもを任せて大丈夫だと信頼するようになるのも納得って感じでした。ヴァネッサがジュノの大きなお腹に触れて赤ちゃんに話しかけるシーンは、彼女がいかに生まれてくる子どもに期待しているか、愛情を持っているかが伝わってきて感動的。わたしは演じているジェニファー・ガーナーには今まで“戦う女性”のイメージしか抱いてなかったので、こんなにやわらかくて女性的な役を自然に演じられるんだ、と意外な一面を見た気がしました。

 妊娠発覚から子どもが生まれるまでの9ヶ月間をとおして、ジュノだけでなく周囲の人間も様々な経験をし、みなが新たな人間関係を結んでなにかを得るというお話。10代の少女の妊娠・出産を扱っているのに、観終わったあとには重苦しいものが残ってなくて、ほんわかした気分になれました。まぁ現実に10代で妊娠しちゃったら、本人も家族もなかなかこんな風には対処できないだろうけれど (特に日本では難しかろう…)、映画としてはとてもうまくまとまっていたし楽しかったです。なにより、脚本を書いたディアブロ・コディの、ちょっとスタンダードから外れた人間へ向ける眼差しの優しさとあたたかさが伝わってきた気がします。

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by nao_tya | 2008-07-14 23:44 | 映画感想etc.