映画や本の感想アレコレ。ネタバレにはほとんど配慮してません。ご注意! 


by nao_tya
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読書感想:スティーヴ・ホッケンスミス 『荒野のホームズ』、『荒野のホームズ、西へ行く』

 最近せっせと積読本解消に励んでいたら、とうとう山が消えて床が見えるようになりました。うれしい反面、通勤のときなどに持ち歩く本がないというのはなんとも心もとなく…。ここはいっちょ新規開拓でもしてみるか~と、色々よそさまのブログなどにお邪魔していた最中にひっかかったのがこちら、スティーヴ・ホッケンスミスの『荒野のホームズ』と続編『荒野のホームズ、西へ行く』。
 まったく読んだことがない、実を云うと名前も知らない作家さんではありましたが、ストーリーの紹介などからなんとなく惹かれるものがあったんですよね~。気に入ったらどうせ続編も読むだろうし、2冊とも直感買い。で、これが大正解で、2作ともとってもおもしろかった! わたしのツボをつつきまくりですっ。

 物語の舞台は19世紀末のアメリカ西部。主人公のふたりは雇われカウボーイ。要するにウェスタン物であります。ウェスタン物でありながらミステリで、そのうえホームズ・パスティーシュ。なんとも不思議な取り合わせですが、これがうまい具合にミックスされていて、ウエスタン好きもミステリ好きもホームズ好きも楽しめる内容となっていました。

 主人公ふたりは兄弟で、探偵役はホームズに心酔するオールド・レッドことグスタフ・アムリングマイヤー。物語の語り手でワトソンのように兄の探偵の助手役を果たすのは弟のビッグ・レッドことオットー・アムリングマイヤー。年齢はグスタフが27、オットーは21、22ってところでしょうか。ふたりの通称に“レッド”とついているのは、彼らが見事な赤毛だからそうな。

 グスタフはまともな教育を受けていないので読み書きができません。そんなグスタフは、ある日オットーに読み聞かせてもらった『赤毛連盟』に感銘を受け、ホームズを心の師として探偵を志すようになるのです。グスタフは教養はないけれど頭脳明晰で、日頃から観察眼や推理力に磨きをかけるのに余念がありません。そうして兄弟を雇った牧場で起こった殺人事件の謎に挑むのが『荒野のホームズ』。この2ヵ月後に鉄道探偵として乗り込んだ汽車でまたしても殺人事件に出くわすのが『荒野のホームズ、西へ行く』というわけ。

 わたしのツボをくすぐったのは、なんと云ってもこの兄弟の関係です。もともとアムリングマイヤー一家は牧場を営んでいたんですが、病気や洪水でこのふたり以外の家族はすでに亡くなり、農場も手放しています。頼れる親族はお互いだけという身の上。オットーを学校にやるため、グスタフが牛追いの仕事で家を離れていた数年間をのぞいて、このふたりはいつもべったり一緒。お互いに腹を立てることはあってもとにかくず~っと一緒(笑)。

 特にオットーは、自分がある程度の教育を受けることができたのはグスタフ (とほかのきょうだい) が自分の分も農場で働いてくれたからだということをよく理解しており、それに対してすごく恩義を感じているのです。だからグスタフが字を読めないことをバカにしたりからかったりするようなことは絶対にしません。グスタフがホームズのような探偵を志すのは、学がなくても知性があることを示したいからだろうと考えたオットーは、初めて本物の事件に関わるようになったときにも、兄がうまく事件を解決できるか心配しつつ助手役を務めていきます (たまに文句はたれてますが/笑)。

 やはり兄弟だから、兄がリーダーシップをとり弟はそれについてゆくという図式になってますが、『荒野のホームズ、西へ行く』でグスタフの意外な弱点が明らかになり、それをきっかけにグスタフは自分の内面を見つめて、ふたりの関係もちょっとずつ変化を見せるところがまた良かった! 互いに対する思いやりとか感謝の気持ちをきちんと出すようになって、弟を世話する兄と兄に世話される弟というだけではなく、少し対等になった感じ。でもあくまでも兄弟なんですよね。

 今まで知らなかった雇われカウボーイの生活なども丁寧に書かれていて興味深いし、語り口もユーモアたっぷりでとても楽しいです。『荒野のホームズ』より『~、西へ行く』のほうが活劇が増えてて、話のテンポも良くなっているように感じました。1作めは作者の初長編らしいので、2作めでぎこちなさが消えてきたのかな~。すでにこのシリーズの原書は長編だと第4作まで出ているそうなので、早く翻訳本も出版してほしいです! 原書で読むにはちょっとカウボーイの専門用語やらスラング (しかも19世紀末の!) が多そうで、手ごわそうなんだもん。早川書房さん、お願いしますよ~。
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by nao_tya | 2009-07-29 12:22 | 読書感想etc.