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映画や本の感想アレコレ。ネタバレにはほとんど配慮してません。ご注意! 


by nao_tya
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映画感想:『アパルーサの決闘』

〔ストーリー〕
 保安官とその助手たちが牧場主ブラッグに殺され、ブラッグ一味の横暴を止める者もいなくなったアメリカ西部の町アパルーサ。町の有力者たちは腕利きのガンマンであるヴァージル・コールとその相棒エヴェレット・ヒッチを新しい保安官として雇い入れた。それから間もなく、町にやってきたアリソン・フレンチという女性に惹かれたコールは、ホテルのピアノ弾きの仕事を彼女に紹介するのだが…。


原題:APPALOOSA
監督:エド・ハリス
原作:ロバート・B・パーカー
脚本:ロバート・ノット、エド・ハリス
出演:ヴィゴ・モーテンセン、エド・ハリス、レネー・ゼルウィガー

 残念ながら日本では公開されず、DVDスルーとなってしまったエド・ハリス監督の『アパルーサの決闘』、DVDを週末にようやく観ました! DVDは予約していたから発売後すぐに自宅に届いてたんですが、ロバート・B・パーカーの原作を翻訳本が出てすぐに読んでストーリーを知っていたせいもあり、ゆっくり時間のあるときに観ようと楽しみにとっておいたのです(笑)。

 いやぁ、エド・ハリスのヴァージル・コールもヴィゴのエヴェレット・ヒッチも、悪役ブラッグのジェレミー・アイアンズも渋い~っ。わたしは西部劇の映画ってほとんど観たことがないんですが、きっとこれが正統派、西部劇の様式美ってものなんだろうなぁと思わせる、とても端正な映画でありました。ただ、いかんせん映像的に地味ですね(笑)。西部劇が好きな人とか、出演している俳優さんのファンならOKでしょうが、そのどれにも思い入れがないと、展開が淡々としているだけにちょっとしんどいかもしれません。

 でもわたしは↑の俳優さん3人とも大好きだったので、とても楽しく観ることができました。コールとヒッチの固い信頼関係がとてもイイです。ふたりともおしゃべりではないので、交わす言葉自体はそんなに多くはないんですが、無言の間やさりげない視線の往復で互いのことを深く理解、信頼しあっていることがうかがえます。ヒッチは常にコールの一歩後ろに控えてコールのフォロー役に回っていて、コールはヒッチがそうやって後ろにいることを当然として疑いなく信じている。アパルーサにたどり着くまでの長い年月、命のかかった修羅場をいく度となくふたりでくぐりぬけてきたことを想像させます。最後まで彼らの熱い関係にほころびは生じず、周囲にいる女性陣も置いてけぼりって感じです(笑)。

 数少ない女性キャラクターのひとり、コールが心惹かれるアリソン役のレネー・ゼルウィガーも良かったですよ。アリソンはそのとき、その場所で、一番力を持った男に悪気なく擦り寄っていくタイプの女性で、はっきり云って一部の男ウケはするかもしれないけど同性には嫌われるタイプ。表面的には教養があって上品そうに見えるけど、見る人が見ればすぐに底がわれちゃうような感じ。そんな底の浅さや安っぽさをレネーはうまく表現していたと思います (実はあまり美人じゃないところも含めて)。コールが彼女にのめりこむのも、今まで接したことのないタイプの女性で、彼の学がないという密かな劣等感を“こんな上等な女が自分を頼りにしている”となだめてくれるからと思えば不思議ではありません。

 この映画、スペイン映画『アラトリステ』でヴィゴと共演したアリアドナ・ヒルがヒッチの馴染みの娼婦役で出演しているんですが、出番が少なくてちょっと残念だったな~。アリソンなんかよりずっと情に篤そうで人を見る目もある、イイ女なんですよ。もったいな~い! あと、町の有力者のひとりにティモシー・スポールもいました。この人、お顔と体つきになんとなく特徴があるからどんな格好をしていてもすぐわかりますね(笑)。シェルトン兄弟の片割れのランス・ヘンリクセンもほんの少ししか出てませんが印象的でした。

 雨なんかまったく降りそうにない、乾いた空気と砂とほこりのなかで繰り広げられる、熱い・厚い男の友情がとても心にしみる (最後のヒッチの決断と行動は本当にカッコいい!)、派手さはないですが渋好みの佳作だと思います。原作の続編『レゾリューションの対決』ではまたコールとヒッチのコンビが登場するようなので、機会があったら手にしてみようと思います♪

●映画『APPALOOSA』の公式サイトはコチラ (英語です)。

●映画の原作本

アパルーサの決闘
 ロバート・B・パーカー (早川書房)
by nao_tya | 2009-07-15 12:47 | 映画感想etc.