映画感想:『ダークナイト』
2008年 08月 06日
ジム・ゴードン警部補と地方検事ハービー・デントの協力を得て、バットマンはゴッサムシティのマフィアたちの資金源を断っていく。追い詰められたマフィアたちに正体不明の男ジョーカーがバットマンの殺害を提案。犯罪を純粋に楽しむジョーカーはゴッサムシティを混乱のなかに陥れていく。
原題:THE DARK KNIGHT
監督:クリストファー・ノーラン
原案:クリストファー・ノーラン、デヴィッド・S・ゴイヤー
脚本:ジョナサン・ノーラン、クリストファー・ノーラン
出演:クリスチャン・ベイル、マイケル・ケイン、ヒース・レジャー
先週末はクリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト』の先行上映にいってきました~♪ 『バットマン ビギンズ』が文句なくおもしろかったし、先に公開されたアメリカでの評判もすこぶるいいしで、非常に楽しみにしておりました。実際観てみたら、とにかく密度の濃い、重厚な映画で、152分の間ひたすら圧倒されっぱなし。いや~スゴかった。
予告を観てると主役のはずのバットマンがほとんど姿を見せず、ひたすらヒース・レジャー扮するジョーカー、ジョーカー、ジョーカーだったもんで、「ヒースが亡くなったからとはいえ、そんなにジョーカーばっかりフューチャーするってどーなの?」と思っていましたが、いざ本編を観てみたら納得。ジョーカーの狂気という言葉でも薄っぺらいような、突き抜けた存在感がすさまじかった…! 映画を観てから数日たった今でも、ジョーカーのあの「ヒャ~ハハハッ!」という甲高い笑いが耳に残ってる感じですよ。
しかしだからといって、他のキャストがジョーカーの影にかすんでしまうわけでもなくて、誰が欠けてもこの映画の高い完成度はあり得なかったと思います。ホワイトナイトたるデントが善を体現しているからこそ、それをあざ笑うかのように無軌道な犯罪を繰り返すジョーカーの悪が際立つわけだし、バットマンの行為は善ではあるけれど、そのやり方は決して法に則ったものではなく、なにかの拍子に悪へと傾きかけない危うさがあることを、ジョーカーは無造作にさらけ出してみせます。
そして、ジョーカーの非道と暴力に翻弄されたデントは復讐にとりつかれ、バットマンさえもが逡巡を見せるなか、もうどうしようもない絶望のギリギリ一歩手前で、ごく普通の人たちはもちろん、犯罪者のなかにだってある善を見せてくれるあたりがもうもう~! あまりにも鮮やかで、フェリーでのシーンは震えがくるような気持ちになってしまいました。
アクションシーンは思ったよりも多くなかったですが、その少ないアクションシーンはことごとく迫力があってカッコよかったです~。バットポッドがバットモービルから分離して疾走していくところとか、思わず固く握りこぶしをにぎっちゃいましたわ。前作よりもまた一段とリアルさを増した (もうほとんどニューヨークと云ってもいいくらい) ゴッサムシティの様子もダークで映画の雰囲気にぴったり。
152分はちょっと長い上映時間ですが、バットマン (ブルース)、デント、レイチェルという主要なキャラクターのそれぞれの物語がしっかり描かれているのでとにかく見ごたえあり。それにジョーカーの立ち回りがかなりクレバーで先の予想がつかず、展開を追うのに必死になってて(笑)、全く退屈しませんでした。追い詰めたと思ったらするりとそこから抜け出し、あっという間に追う立場の人間が窮地に立たされていくのがすごくスリリングでした。
冒頭の銀行強盗のシーンではウィリアム・フィクトナー (『プリズン・ブレイク』のマホーン捜査官役) がちょっとカッコいい役で登場したし、スケアクロウ役でちょろっとキリアン・マーフィが顔を出したのもうれしかったです。
今回あえて汚名をかぶったバットマンに、(あるとしたら) 次作はどんな展開が待っているのでしょうか。ジョーカーという存在は捕らえることができても、正義があるからこそそれを敢えて打ち破ろうとする悪はなくならないということを描き出してしまったわけで、明るさは求めようがないところにきちゃってる気がするな~。とことんクリストファー・ノーランはブルースを追い詰めていくようで、ちょっとこわいくらいです。
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