映画や本の感想アレコレ。ネタバレにはほとんど配慮してません。ご注意! 


by nao_tya
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映画感想:『イースタン・プロミス』

〔ストーリー〕
 アンナが助産師として勤務している病院に身元不明の少女が運びこまれた。少女は妊娠しており、子どもは無事に生まれたが少女は死亡してしまう。手術に立ち会ったアンナは少女が残したロシア語で書かれた日記から、少女の家族の居場所を探し出そう考えた。日記にはさまれていたカードに記されたロシア料理店へ出向いたアンナは、店主のセミオンとその息子キリル、彼らに雇われて運転手をしているニコライと出会うのだが…。


原題:EASTERN PROMISES
監督:デヴィッド・クローネンバーグ
脚本:スティーヴ・ナイト
出演:ヴィゴ・モーテンセン、ナオミ・ワッツ、ヴァンサン・カッセル

 公開を心待ちにしていたデヴィッド・クローネンバーグ監督の映画『イースタン・プロミス』がようやく初日を迎えたので、早速観にいってきました♪ 初日の初回に観にいったんですが、座席は6割がた埋まってたと思います。クローネンバーグ監督とヴィゴが組んだ1作目の『ヒストリー・オブ・バイオレンス』公開前には、ヴィゴと共演のマリア・ベロの来日があったりしたけど、今回はそういうプロモーションが一切なかったわりにそこそこいい感じの入りだったんじゃないかな~。

 映画は、生まれたてのまだべっとり羊水がついてるような赤ちゃん生々しく見せたり、ナイフで掻き切った喉もとを“これでもか~っ”とさらしたり、遺体の指をばっちんばっちん切り取る場面を出したりと、クローネンバーグ監督節(?)も健在でございましたが、そんなにグロさは感じなかったです。そしてすごくおもしろかった! なんちゅうか、夢中で観てしまいましたですよ。

 ニコライ (ヴィゴ)、アンナ (ナオミ・ワッツ)、キリル (ヴァンサン・カッセル)、セミオン (アーミン・ミューラー=スタール) というキャラクターがそれぞれすごくよく作りこんであって、演じている役者さんたちも、この役はきっとこの人でなければダメだったんだろうというくらいピッタリな人ばかりでした。

 なぜアンナが縁もゆかりもない赤ちゃんのために必死になるのか、なぜキリルがあんなにも情緒不安定で分裂したような性格なのか。語られるエピソードはギリギリまで削ぎ落とされているけれど、それぞれの性格がそれらによってしっかり肉付けされていたと思います。セミオンが見せる肉親に対する情愛とそのほかに対する酷薄さには、マフィアのボスらしく矛盾がないし、ニコライの与えられた汚れ仕事を感情を表に出さず淡々とこなす冷淡さと、アンナに見せる柔らかく細やかな一面の対比も良かった~。

 ニコライの隠している部分っていうのは、はっきり明かされるまでになんとなく察することができますが、ニコライはそれだけでは説明できない、内に暗く重いものを秘めて外側に対しては閉じた人間のように感じられました。それが、アンナに対するときだけはほんの少し開いているような気がして、“あ、いいなぁ”と思わせられただけに、最後の別れのシーンはすごく切なかったです。同時にとても静謐で美しいシーンでもありました。

 各方面で(?)話題になっていたニコライの全裸格闘シーン、滅茶苦茶生々しくリアルで、異様な迫力がありました! ファイトシーンでは、役者さんは服の下に衝撃を吸収するためのパッドなどをつけるのが普通ですが、このシーンのニコライは真っ裸。防御するものが一切ないむきだしの状態で、殴られ・蹴られ・投げ出され・切りつけられる、そのすべての動作がとにかくイタイ、イタイ、イタイ~っ! 真っ直ぐスクリーンを観ていられず、指の隙間から覗くようにして観た、壮絶なシーンでした。これ、ヴィゴは本当によく演じきったと思うし、暴力を暴力として過剰に演出することなくスクリーンに映しきったクローネンバーグ監督もすごいと思います。

 アンナが病院に運びこまれた少女から赤ちゃんをとりあげた日がクリスマス前で、ラストで新年のパーティというセリフが出てくるから、物語世界での時間はわずかに10日ほどしか経過していません。だけど愛情も憎しみも哀しみも、そしてほんの少しのユーモアも、なにもかもがぎゅっと圧縮されたような、おそろしく濃密な内容の物語でした。ラストの川べり(?)のシーンの後にほんの短いふたつのシーンを入れることで、なんとも云えぬ余韻が後に残ったのも良かった~。

 ヴィゴは今までにもいろんな役を演じてきて、どんなに小さい役でも彼なりの役作りをしてきたと思いますが、今回のニコライの奥行きは本当にすごかった。こういう役をヴィゴにふって、魅力を最大限に引き出すクローネンバーグ監督になんだかもう平伏したい気分です(笑)。次の作品とは云わないから、またこのふたりが組んで映画をつくってほしい。心の底からそう思います!

●映画『イースタン・プロミス』の公式サイトは コチラ
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by nao_tya | 2008-06-16 23:57 | 映画感想etc.