映画や本の感想アレコレ。ネタバレにはほとんど配慮してません。ご注意! 


by nao_tya
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読書感想:コーマック・マッカーシー『The Road』

 コーマック・マッカーシーの『The Road』 (ペーパーバック)、なんとか5月末くらいに読み終えることができました! マッカーシーというと、映画『ノーカントリー』や『すべての美しい馬』などの原作者さんで、この『The Road』は2007年のピュリッツアー賞を受賞するなど、とても有名な作家さんのようです。がしかし、わたしは今まで一度もこの方の小説を読んだことがございません。なのになんだっていきなりペーパーバックを読む気になったのか。それはひとえにこの『The Road』の映画化作品にヴィゴが主演することになったから~♪

 映画が日本で公開されるのを期待して、まぁそれまでにボチボチ読めばいいや~と、昨年末に本だけは手に入れてのんびり構えていたら、6月18日に翻訳本が出版されるっていうじゃないですか! 一旦翻訳本を手にしてしまったら、辞書を引きながらじゃないと読めないペーパーバックなんて手に取らなくなるのは目に見えてます。しかし、買っちゃった以上それはちょっともったいない。てなわけで、ようやく重い腰をあげて辞書と首っ引きになって悪戦苦闘しておりました。

 しかし、一旦読み始めてみるとこれが意外なくらいおもしろかった! ストーリーとしては、文明崩壊後のアメリカ (←多分) のどこかが舞台で、メインの登場人物は40代くらい (これはヴィゴが演じるので自動的にこの年齢を想像してしまった/笑) の父親と、10代と思しき少年のふたり。なにもかもが焼き尽くされたような世界は、すべてのものが塵と灰に埋もれ、昼間でも太陽は灰にかすみ、夜ともなれば明かりひとつなく凍るような寒さが襲いかかってきます。親子は少しでも暖かい土地を求めて、ひたすら南へ、海への道をたどっていくのであります。

 世界がなぜこんな状態に陥ったのか、核戦争が起こったのか、大規模な自然災害のせいなのか、そういうったことは一切明かされません。男と少年の名前も最後まで語られることはないし、男がどういったバックボーンを持っているのかも不明です。ただ、会話やケガの手当てをする様子から、もしかしたら男は医者だったのかな~と思わせる程度。こういう風にわからないことだらけだし非常に淡々とした話運びなんだけど、読んでいるとこのふたりが最終的に物語の結末でどうなるのか知りたくて、どんどん話のなかに引き込まれていってしまいました。

 荒廃しきった世界では新しくなにかが生産されることもなく、人々は残された乏しい資源 (水、食料はもちろん、衣服や燃料などすべてのもの) を漁って生きています。資源をめぐっての奪い合いはもちろん、より簡単に調達できる食料としておぞましくも人が人を食べることも珍しくない状況なのです。当然、親子の他人に対する警戒心もハンパなものではなく、道中でたまに人と巡り合うことがあると語り口は静かなのにたちまち緊張のボルテージが上がっていくので、全編にわたってかなりスリリングな展開です。

 ほかの人間からもたらされる脅威のほかにも、手持ちの食料や水が底を尽きはじめても、次にどこで・どうやってそれらが手に入るのかわからないことへの不安、体調の心配など、果たして生き残ることができるのかどうか、そして生き残った先になにがあるのか、という疑問も常に親子につきまといます。何度も“もうこれまでか…”という事態に陥りながらも、“It's okay”と自分自身に云いきかせるようにどうにかサバイバルしていく男の不屈の意志は、息子を死なせたくないというただその一心に支えられています。幼い息子の存在は未来への希望そのものを象徴していて、だからこそ男はあの最後の決断をしたんじゃないかと感じました。

 ホントにね、こんな危機的な状況のなかでも親子の間に流れる愛情やその絆の深さには胸を打たれました。父親が息子を思うだけでなく、幼い息子も精一杯父親を思っているのがわかるのです。少ない食料を息子に食べさせようとしても、「パパも食べなきゃダメ」という息子のいじらしさとか、切なくて泣けてきます。会話は“ ”でくくられていないし、辞書をひきながら読むと最初はどっちがどっちのセリフだか混乱しちゃったりしましたが(笑)、少ない言葉のなかに込められた思いはしっかり伝わってきました。

 男はきっと息子には美しいもの、良いものだけを見せてやりたいと願っていたと思うけれど、この終末の世界ではかなわぬことで、逆に目に映るのは残酷で醜悪なものばかりです。最初は無邪気そのもののようだった少年の言動が、段々暗く厭世的に (←10歳かそこらなのに!) なっていくのを、どうしようもなく見つめる男の視線が痛々しかったです。それでも、自分の内側に“carry the fire”ということだけは教えようとする姿は感動的でした。ラスト近くの親子の会話は読んでいて涙が出そうに…。

 なにせ乏しい英語力で読んだために細かな意味がわからず、読み飛ばしてしまった部分も少なからずあるので、もうすぐ出る翻訳を読むのが非常に楽しみです! もちろんただいま編集中という映画化にもすごく期待してます (日本で公開してくれ~)。ペーパーバックを読み終えてから、情報解禁ということで映画のスチール写真とかも観ましたが、かなりわたしのイメージに合ってて期待が膨らみます~っ! 

●翻訳本
ザ・ロード
 コーマック・マッカーシー (早川書房)
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by nao_tya | 2008-06-13 23:44 | 読書感想etc.