映画感想:『プレステージ』
2007年 06月 16日
19世紀のロンドン。アンジャー (ヒュー・ジャックマン) とボーデン (クリスチャン・ベール) は奇術師ミルトンのもとで共に助手を務め、マジックの腕をみがいていた。ある日、アンジャーの妻でミルトンの助手でもあったジュリアが水中脱出に失敗し、溺死するという事故が起こってしまう。アンジャーは脱出失敗の原因はジュリアの手をロープで結ぶとき、ほどきにくい二重結びにしたボーデンだと考えた。以降彼らは確執を深め、ことごとく互いの邪魔をするようになるのだが…。
原題:THE PRESTIGE
監督:クリストファー・ノーラン
原作:クリストファー・プリースト
脚本:クリストファー・ノーラン、ジョナサン・ノーラン
出演:ヒュー・ジャックマン、クリスチャン・ベiイル、マイケル・ケイン
クリストファー・ノーラン監督の『プレステージ』を観てきました。『300 スリーハンドレッド』とどちらを観ようか迷ったけどこちらをチョイス。というのも、公開されて間もないのに『プレステージ』は1日の上映回数が減っていて、公開終了が早そうな気配を漂わせていたんですよね~。
案の定、劇場の入りは少なめ。観客は10人少々ってとこだったんじゃないかしらん。『300』はテレビCMなどガンガン流してましたが、『プレステージ』は目にした覚えがないし、広告宣伝費の投入量が明らかに『300』よりも劣ってる?? だとすればこの状態もしかたがないことなのかなぁ。
この映画には原作 (クリストファー・プリーストの『奇術師』) がありますが、わたしは未読状態。しかも映画冒頭で「この映画の結末は決して誰にも話さないでください」なんてお願いまで出るくらいだし、さぞやビックリの展開が待ち受けているんだろうと期待満々で映画の世界へ。「さぁどうぞ騙しておくんなさい!」ってな気分でありました。
で、結論からいきますとおもしろかった~♪ でも“してやられた、騙された”って感じではなかったですね。どちらかというと「やっぱりそういうことだったのか!」という納得、満足感を存分に味わってきました。まず最初からヒント (伏線) が出てきているし、中途でも様々なことがラストへつながっていく仕掛けになっていて、観ているこちらの推理が最後にきれいにまとめられ、謎が明かされる様子は壮快そのもの。徐々にネタを明かしていく、そのタイミングのとりかたがめっちゃうまいと思います。
この映画のキモはやっぱりアンジャーとボーデン、彼らマジシャンがあらゆるものを犠牲にして守り抜こうとしたマジックのタネそのものでしょうね。ここのところ、特にアンジャーのタネを「そんなのアリか!? 現実的に無理やんか~」と思っちゃうかどうかで評価はかなり変わりそうな感じ。とにかくネタバレして観るとおもしろさが半減するのは確実。観にいこうというかたはできるだけ前情報を入れないようにして劇場へ向かわれるのがよろしいかと。
わたしの場合、19世紀のロンドン、科学が台頭してきながらもどこか小昏い雰囲気が漂った世界が映画のなかに再現されているように感じて、「アリでしょう!」と思ってしまったんですけど。それにこの点を除いたほかの部分は現実、実際のできごとを上手に盛り込んでいたと思うし。ニコラ・テスラをデヴィッド・ボウイに演じさせたのは良かったと思うな~。だってデヴィッド・ボウイだもん、もうなんでもOKだわさ (←超勝手な見解/笑)。
でも本当に予告くらいしか情報を入れてなかったので、デヴィッド・ボウイやアンディ・サーキスが登場したときは本当にビックリしたしうれしかったです~。思わぬギフトをもらった気分で、お得感いっぱいになっちゃいました♪
ヒュー・ジャックマンとクリスチャン・ベイルが扮する二大マジシャンのライヴァル心むき出しの対決は緊張感あふれてスリリング。相手のトリックを見抜き、利用し、「自分が最高のマジシャンなんだ!」ということを誇示するため、すさまじいまでの労力を費やす彼らは結局とてもよく似ているってことなんでしょうかね~。彼らが一方の妻の死をきっかけに対立し、互いに対する妄執からどんどん不幸の深みへはまっていく様子はとにかく見ごたえたっぷりでした。ただ、どちらもやることが過激すぎてついていけないというか、感情移入はしにくいのが難点なんですけど。
また、このふたりの敵対心に振り回される女性ふたり (オリヴィア=スカーレット・ヨハンソン、サラ=レベッカ・ホール) も良かったです。特にボーデンを愛しながらなにかしらの違和感をぬぐいきれず、悲劇的な最後を迎えるサラがかわいそうで…。演じるレベッカ・ホールの訴えかけるような目、表情がとても印象的でした。スカーレット・ヨハンソンはふたりの間で揺れる存在で、舞台衣装が色っぽくてすごくかわいい。健康的なお色気ってやつですね!
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●映画の原作本
『奇術師』
クリストファー・プリースト (早川書房)