映画や本の感想アレコレ。ネタバレにはほとんど配慮してません。ご注意! 


by nao_tya
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映画感想:『女帝 [エンペラー]』

〔ストーリー〕
 五代十国時代の中国。皇帝の弟リー (グォ・ヨウ) は兄を暗殺して帝位を簒奪し、皇太子ウールアン (ダニエル・ウー) をも抹殺しようと考えていた。先帝の妻ワン (チャン・ツイィー) は先帝に見初められる前から密かに思いを寄せ、今は4歳年上ながら義理の息子となったウールアンを助けるため、リーとの婚姻を承諾するのだが…。


監督:フォン・シャオガン
アクション監督:ユエン・ユーピン
脚本:フォン・シャオガン
出演:チャン・ツィイー、ダニエル・ウー、グォ・ヨウ

 封切られたばかりのフォン・シャオガン監督の中華宮廷絵巻『女帝 [エンペラー]』を観てきましたですよ~。どうでもいいですが、“女帝”と銘打ってるのに“エンペラー”って読ませるのはどうかと思うんですけどね。間違った英単語の知識を受験生が覚えちゃったらどうすんの(笑)。

 この映画はシェイクスピアの『ハムレット』を下敷きにしたお話で、いわゆる翻案モノといっていいと思います。大きく変わっているのは2点で、物語がガートルードにあたるワンの視点から語られていること、ワン (ガートルード) と ウールアン (ハムレット) の関係が義理の親子になって、ふたりが密かに思いを寄せ合っていること。もともとガートルードとハムレットの間には近親相姦めいたものがあるんじゃないかってことは云われてきてますし、『女帝』ではそれを一般的に受け容れやすい設定にしたって感じかな。

 正直いいまして、先帝、新帝リー、ウールアンと多くの男性から愛され求められるワンが、どっちかっていうと幼顔のチャン・ツィイーってのは正直どうかな~と思わないでもなかったです。ワンがリーを受け入れたのは、ウールアンを助けたいという気持ちが一番であったとしても、自分の立場を守るという保身や権勢欲があったということも否定できないと思う。リーの自分に対する欲望をあおって利用してたらしこむ(笑)、策略家の面も彼女にはあるわけです。

 好きな人間のために身を投げ出す一途さと自分大事なところが入り乱れるワンを、ツィイーは確かにがんばって演じてるんだけど、もっとこう妖艶な雰囲気を持った女優さんがふさわしかったんじゃないか、まだ彼女にはチンニー (オフィーリアにあたる) みたいな役が合ってるんじゃないかって気がしちゃって…。これはツィイーといえば『初恋のきた道』! ってな風に愛らしいイメージがわたしのなかで強いからかもしれないですけども。

 なんかね、チンニー役のジョウ・シュンが可憐で清楚な感じの女優さんですごく好演してて、だからこそどうもツィイーとイメージがかぶっちゃったんですよね~。ウールアンがなぜチンニーではなくワンに惹かれてやまないのか、そこらへんがよくわからなくなっちゃって。彼女たちの対比が明確であればウールアンの気持ちが向かないのも納得できたように思うのに。

 ただ、人質として隣国に派遣されようとするウールアンに同道できるようチンニーが懇願するシーンでワンが見せる表情とかはかなり怖かったですね。素直にウールアンへの愛情を表に出すことができるチンニーへの嫉妬心をメラメラと燃やしながら、表面上は取り澄ました顔をして残酷な仕打ちを命ずるあたり、ツィイーがかわいらしい顔をしているだけに余計に迫力があった気がします。

 あと、この物語のなかでチンニーと並んで純情で一途だったのは、実は新帝リーだったような気もしますね。ワンの裏切りを知ったときのリーの驚愕と、その後の行動は観ていてちょっと胸が痛くなるような感じ。贅沢好きで残酷なところもありますが、施政者として無能なわけでもなさそうだったし。多分、歌舞音曲好きのウールアンが帝位に就くより、国はよく治まったんじゃないかと思うんですが。

 しかしまぁ全体としてかなりうまく翻案されていて、根本が『ハムレット』なわけですからお話の行き着く先は見えているのに最後までおもしろく観ることができました。ワイヤーアクション満載の殺陣は舞のようになめらかで見事だし、衣装、舞台はゴージャスだし、とにかく目に楽しい映像的に見ごたえのある映画だったです。

 それから人工的なBGMが流れない静の間がとても良かったな~。髪飾りのゆれる音、衣擦れ、水のせせらぎ、風が木枝を揺らす音などが舞台の雰囲気にとてもマッチしてました。逆にBGMは荘厳な雰囲気を出そうとしすぎてちょっとくどかったかな…。

●映画『女帝 [エンペラー]』の公式サイトはコチラ
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by nao_tya | 2007-06-06 13:07 | 映画感想etc.