映画や本の感想アレコレ。ネタバレにはほとんど配慮してません。ご注意! 


by nao_tya
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映画感想:『主人公は僕だった』

〔ストーリー〕
 国税庁の会計検査官ハロルド (ウィル・フェレル) の過去12年間の毎日は単調そのもの、どこを切っても同じのまさに金太郎飴のような状態だった。ところがある朝から自分の行動、考えを文学的な表現で語る女性の声が聞こえだした。他人には聞こえないその声に混乱するハロルドは、ある日自分の死を予感させるとんでもないフレーズが耳に飛び込んでくるにいたって行動を起こすことに…。


原題:STRANGER THAN FICTION
監督:マーク・フォースター
脚本:ザック・ヘルム
出演:ウィル・ヘレル、マギー・ギレンホール、ダスティン・ホフマン

 6月1日は映画サービスデイ。ということで、会社帰りに前からちょっと観たかったマーク・フォースター監督『主人公は僕だった』を観てきました。
 サービスデイということもあって、劇場の入りはまぁまぁ。6割近く席が埋まってたんじゃないでしょうか。たとえ週末でも観客が10人少々とういことも珍しくない劇場なのにこれってスゴイ(笑)。

 で、いつもと違ってお客さんが多いと劇場側も勝手が違うのか、こういうときに限ってトラブル発生がするんだな~! 劇中で主人公のハロルド自身が「いいシーンだった」という、本当にとっても盛り上がるシーンがあって、観てるほうも気持ちが高まってドキドキしながら観ていたんですね。したらばいきなりスクリーンが暗転…っ。なんと映写機のトラブルで映画が中断してしまったのでありました。年間で50本くらい映画館で映画を観てるわたしですが、こんなコト珍しいです。ほどなく上映は再開されましたが、集中力が切れちゃうしあってほしくない出来事ですね、まったく~!

 そんなトラブルはありましたが、映画自体はなかなかおもしろくて良かったです。まず、単純で変化がないとはいえ、とくに不満もなく平凡な人生を歩んでいると思っていた男が、ある日自分が実はとある作家の小説の登場人物なんだということを知る、という設定自体がおもしろい。しかも主人公は作家の作り出した世界の人間に過ぎないのかと思っていたら、作家の暮らす世界にその主人公も共に存在しているというねじれ具合!

 実をいいますと映画が始まってしばらくは非常に淡々とした展開に「あれ? 思ったよりおもしろくないかも、この映画…」なんて頭の片隅で考えちゃってたんですが、これは主人公であるハロルドがあまりにも無味乾燥な毎日を送っていたからだったんだと思います。「このささいな行為が死を招こうとは、彼は知るよしもなかった……」なんてモノローグを耳にしてしまったハロルドが、来るべき悲劇を回避しようと、ハンで捺したように決まりきった生活を脱しはじめてからは俄然おもしろくなりましたもん。といっても予告を観たときに感じたような大笑い・大爆笑系の楽しさではなく、随所でクスクス笑いがもれるような映画でありました。

 背が高くてガッチリタイプ、どうかすると強面に見えるちょっとお猿系のウィル・フェレルですが、柔和で生真面目で人の良い、でも表情の変化をほとんど見せないぬぼ~っとしたハロルドを好演してました。アメリカでは人気のコメディアンだというウィル・フェレル、今回は終始おさえめの演技で、でもそこからなんとも云えぬおかしみがにじみ出ていたと思います。

 ハロルドに助言する文学教授のヒルバートを演じていたダスティン・ホフマンは非常に軽快で楽しそう。「悲劇を喜劇に変えるには敵対する相手と恋に落ちること」、とか、「物語を進めるのは主人公の行動。なにもしなくても話が進むかどうか、今日は1日なにもしないで様子を見ろ」とか、的を射てるんだかビミョーに外してるんだか、それともハロルドをからかってるだけなのかよくわからんアドヴァイスの数々が愉快でした(笑)。

 そして10年ぶりの新作を傑作にするため、日々ハロルドの死なせ方を考え続けるカレン・アイフル役のエマ・トンプソンも良かった! すごく神経質で自殺一歩手前の、ちょっと病的な気質をもった作家さんがまさにそこにいるって感じ。で、そんなカレンのアシスタントとして出版社から送り込まれる女性がクイーン・ラティファだったのにビックリです。エキセントリックなカレンに付きあいながらあくまで現実的で落ち着いた凄腕アシスタントという役回り。でも決して冷たい人間ではないという彼女もまたイイ感じなんだなぁ。あとハロルドの同僚の男性も出番は少しだけど、ふたりが一緒にご飯を食べるシーンがあって、なんだかそのシーンがかわいくって印象に残ってます。

 そして、この映画のなかで一番魅力的だったのは、ハロルドが会計監査にやってき出会ったパン屋 (クッキー屋?) のオーナー、アナを演じたマギー・ギレンホールでしょう~。アナは自分の主義主張をしっかり持った、セクシーで活力にあふれた元気者。まさにハロルドと正反対な女性で、だからこそハロルドが彼女に惹かれるのもわかるわ~、と思わせる存在。美人ってわけじゃないけど非常にキュートで、接する人をあったかい気持ちにしてくれる、ぜひぜひ友だちになりたいタイプのお人でした。彼女の作るクッキーもとてもおいしそう(笑)。

 しかし、カレンの完成させた小説っていったいどんな小説だったんでしょうかねぇ? ヒルバート曰く傑作ではないということなので、書評が紙面をにぎわしたり学者さんたちがこぞって研究して論文を発表したりする小説ではないんでしょう。でも、読んだときの読後感のよさが忘れられず、例えば一杯になった本棚を整理するときにでも必ず残されるような、読んだ人にとってはとても大切な1冊になるような話なんじゃないかと思うんですが、どんなもんでしょう??

 この映画を観ると作家の全能性について考えさせられるというか、作家は自分の作った小説世界の事象や登場人物たちを、すべて自分の意のままにできるものなのか? なんて疑問が頭をよぎったりもします。しかしまぁ実際のところこの点について映画ではそこまで深くつっこんでないと思うし、小難しいことなんて考えず気楽に観たらいいと思います。
 観たあとは、自分のやりたいことに色々挑戦して楽しんでいけば、人生、もう少しだけハッピーなんじゃない? という前向きなメッセージが心にしみて、あったかい気持ちになるんじゃないでしょうか。ウィル・フェレルが主役で2時間は少々しんどいかな~と思ってましたが、かなり楽しめた映画でありました♪

●映画『主人公は僕だった』の公式サイトはコチラ
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by nao_tya | 2007-06-02 16:45 | 映画感想etc.