映画や本の感想アレコレ。ネタバレにはほとんど配慮してません。ご注意! 


by nao_tya
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31

映画感想:『バベル』

〔ストーリー〕
 モロッコの山道をいく観光バスにはアメリカ人夫妻、リチャード (ブラッド・ピット) とスーザン (ケイト・ブランシェット) が乗車していた。そのバスをどこからか放たれた一発の銃弾が襲い、運悪くスーザンの肩を打ち抜いてしまう。実はその銃弾はヤギ飼いの少年が最近手に入れたライフルで悪気なく撃ったものだった。やがてライフルの元の所有者として東京の会社員、ヤスジロー (役所広司) の名前が判明するのだが…。


原題:BABEL
監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
脚本:ギジェルモ・アリアガ
出演:ケイト・ブランシェット、ブラッド・ピット、ガエル・ガルシア・ベルナル

 楽しいお食事会でワインを赤・白2本飲んで (5人で、ですよ!)、いい気持ちでおうちに帰った翌日はしっかりお仕事でしただ…。つ、辛いわ~。
 で、定時より少し遅れたけどけっこう早く仕事をあがれたので、その足で映画館へ。公開前から出演者の菊地凛子さんがアカデミー賞にノミネートされたりで、色々話題になっていたアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の『バベル』を観てまいりましたですよ。

 わたしが観にいったのは某シネコンでしたが、そのなかでも一番大きな劇場での上映。たしかに話題作ではあるけれど、観た印象として“大作映画”って感じじゃないですね。ああいうでっかいスクリーンよりミニシアターなどで地味~に、でも長く上映されるのがしっくりくる映画だと思う。「GWだし久しぶりに映画を観ようかな~」とか考えた人が観にいくと、その内容にとまどってしまいそうな感じ。

 モロッコのヤギ飼いの兄弟とその家族、モロッコツアーへ参加しているアメリカ人夫婦、夫妻がアメリカに残してきた兄妹とそのベビーシッター、 日本の聾唖の女子高生と彼女の父親。それぞれの物語を単一でみるなら時間軸どおりの展開ですが、映画全体からするとエピソードごとに時間軸がズレて“今”がいったりきたり。最初はちょっととまどいます。
 でもそこまで複雑怪奇に入り乱れてるわけじゃないし、3つの家族は本当にか細い糸でしかつながっていない (しかも本人たちは最後まで互いを知ることもない) ので、観ていて置いてけぼりにされるようなことはありませんでした。

 それぞれの家族の物語はどれも切なく痛ましく、観ていてちょっとやりきれない気分になります。共通の言語があっても相手の気持ちがわからない。自分の気持ちも伝わらない。そのもどかしさと孤独感がスクリーンをとおして押しよせてくるようで、ひりひりするような痛みを感じました。ただ、断絶された関係の果てにかすかな希望の光が見えなくもなく、それがどうしようもないやるせなさのなかで救いとなっています。

 幼い子どもを亡くした互いの痛みを初めて口に出す夫婦、強制退去させられた母を迎えにくる息子、言葉にできないなにかを訴えてくる娘を抱きしめる父親…。みなが不確かな言葉からではなく、抱きしめた相手の体温から大事なものを感じとっているように思えました。
 この結末を甘いと感じる人と、ほっとした気持ちになる人と別れそうな気もしますが、わたしはほっとした口ですね~。あまりに救いのない物語はやっぱり観ていてつらいですから。

 しかし、そうしたほっとした気分を味わう一方で、映画のなかでは描かれなかったヤギ飼いの少年や、アメリカ人夫妻の子どもたちのその後のことが観終わったあとでジワジワと気にかかってきたりもします。
 自分の行動がきっかけで家族のひとりを死に追いやることになった少年と、信頼し愛してもいただろうベビーシッターに結果として砂漠に置き去りにされることになった兄妹たちが受けた心の傷は計り知れないものに違いなく、一度断ち切られてしまった人との絆を彼らが取り戻すのは、とても大変なことだと思うから。どちらもきっかけは悪気があってのことではなく、けれどとても軽率な行動が導き出した結果だけに、事態の思いがけない重さに打ちのめされた気分になっちゃいました…。

 あと、個々のエピソードはとても印象ぶかく訴えかけてくるものがあるのに、そのエピソードをつなぐモノがたったひとつのライフルしかないせいかまるでオムニバス映画のようで、ひとつの物語として「こんな風につながっていたのか!」という驚きに欠けてしまったようなのが残念だったかな~。余韻はあるけど大きく心を揺さぶって響いてくるものがなかった気がします。それでも色々と感じるものがある映画で、観てよかったなぁとは思うんですけど。もっとこうズシンとこたえるものがあるかと期待していたので、少々拍子抜けした気がしなくもないというか。

 そうそう、この映画を観て気分を悪くされたかたが何人かいらっしゃるそうで…。わたしは全然平気だったんですけど、多分チエコがクラブに遊びにいくシーンだと思われます。たしかにライトが激しく明滅していて、体調が悪いときに大画面で観ると酔ったような気分になるかもしれません。これから観にいかれるかたは、日本パートのクラブのシーンになったら、画面を凝視しすぎないようにご注意くださいませね。

●映画『バベル』の公式サイトはコチラ
[PR]
by nao_tya | 2007-04-28 23:15 | 映画感想etc.