映画や本の感想アレコレ。ネタバレにはほとんど配慮してません。ご注意! 


by nao_tya
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読書感想:ロイス・マクマスター・ビジョルド 『チャリオンの影』

 ロイス・マクマスター・ビジョルドチャリオンの影 (上)』、『チャリオンの影 (下)』 (東京創元社) を読み終えましたです。
 今までロイス・マクマスター・ビジョルドの書いた本のことはおろか、この方の名前さえ知らなかったんですけど、とあるブログでこの『チャリオンの影』の感想を見かけまして、その感想に惹かれて思わず買っちゃったんですな。
 こういうふうに人に「読んだみたい!」と思わせる感想を書ける人ってすごい。そしてうらやましいな~と思います。
 読んだ本・観た映画をひとりで牛のように反芻するのも楽しいですが(笑)、ほかの人の視点って思いもよらぬものがあったりするじゃないですか。

 なので、おもしろいと思ったものは友だちに勧めたりするんだけど、なかなかノってくれないんだよねぇ。人を誘い込む術に長けた話ができる、あるいは文章を書ける人にわたしもなりたいもんです。

 さてさて閑話休題。
 この『チャリオンの影』は、五神教という父神・母神・御子神・姫神・庶子神の五神を信仰する国々 (ところにより庶子神は魔とみなされ、四神教となる) が舞台の異世界ファンタジー。
 主人公は1年7ヶ月のガレー船の奴隷生活からようやく解放された、35歳のくたびれてヘロヘロになっちゃったおっさん・カザリル荘侯。

 カザリルは奴隷生活から解放されたものの、自分の持ち物といえばボロボロの体ひとつという状態。そこで、昔小姓としてつかえていた、チャリオン国の亡きバオシア藩主の后、藩太后を頼ることにしたわけです。
 藩太后の信頼を受け、彼女の孫娘でありチャリオン国姫であるイセーレの教育係兼家令となったカザリルは、イセーレたちとともに国主オリコの住まうカルデゴスへ赴きます。

 カルデゴスでは宰相であるジロナルとその弟が権勢をふるっている状態。わたしとしては当然、ジロナル兄弟との確執があるカザリルが、彼らのしかける陰謀を打ち破るような展開を想像してました。
 ところがどっこい! お話はそんなわたしの予想を大きくはずし、イセーレたちの祖父の代に端を発し、国王一族を蝕む呪詛をいかにしてはらうか、という方向に進んでいくのです。

 呪詛をはらう過程で、カザリルはようやくガレー船の苦役によるダメージから回復途上だった体に、とんでもないモノを引き受けるハメになってしまいます。物語の冒頭よりも一層ひどい状態に陥っちゃうのでありました。姫君がたを守る騎士たる主人公が、こんなにヨレヨレな人間というファンタジーってのも珍しいと思いますわ~。

 そのうえ、カザリルは無私・無欲で博識、実戦できたえた剣の腕もなかなかなもの、という表面だけ見たら「これぞヒーロー!」な人間なのに、その性格がどうにもこうにも控えめというと聞こえがいいですが、まぁようするにヘタレなんだな(笑)。
 決して臆病者ではないんだけど、どこかナサケナイ印象がぬぐえない人なのです。彼の背中にはつねに哀愁がただよってました。それが読んでると愛おしく感じられるんだけど。親友のパリアル郡侯を筆頭に、周囲の人間にも愛されまくっております。本人がそういうことに無自覚なのがまたイイんですねっ。

 この世界の神さまっていうのは、わたしたちの世界よりももっと身近で生活に密着した感じがします。五神は人間たちの世界に人を通じて働きかけることができるわけですが、この神の手に触れられた人間は第2の目を与えられ、“聖者”と呼ばれるようになるんですね。
 聖者っていうと高尚で人とはちょっと距離を置いた存在みたいに思えますが、出てきた聖者さんたちはみなそれぞれ人間的で魅力があります。また、他の人間には理解しえない感覚を身につけ、世界を見ることになるわけで、そこからくる苦労のために聖者同士にのみ通じるなんとも云えぬ連帯感、“同病相哀れむ”みたいな気持ちがお互いにあるのがなんだかオカシイ(笑)。

 王家にふりかかる呪いというファンタジックな要素と、現実的で政治的な陰謀がからみあい、派手な活劇なんてほとんどないのに、おもしろくっておもしろくってページをめくる手が止まりませんでした。下巻なんて日曜日に1日かけて一気読みしちゃいましたわ!
 この五神教シリーズは3部作だそうで、次作はイセーレの母・イスタが主人公なんだとか。うーむ、またしてもピチピチの若者が主人公でないあたりがヒネってますね(笑)。

 そうそう、五神教の国々は創造物ですが、15世紀くらいのアラゴン、カスティリアなどをモチーフにしているそうな。で、調べてみたらイセーレの生い立ち、結婚にいたるまでの経緯などはカスティリア女王イザベル1世そのまんま! イザベル1世がイセーレみたいなチャキチャキしたおてんばなお姫さまだったかもと思うとなかなか愉快です(笑)。歴史って机で勉強すると飽きるし覚えられないんだけど、こういうエピソードを紹介されると一発で頭に入りますね。
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by nao_tya | 2007-02-26 23:23 | 読書感想etc.