映画や本の感想アレコレ。ネタバレにはほとんど配慮してません。ご注意! 


by nao_tya
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読書感想:『アラトリステIII ブレダの太陽』

 アルトゥーロ・ペレス・レベルテの『アラトリステIII ブレダの太陽』を読み終えました。
 いやぁ、今までの2作と比べて今回は読み進めるのが非常に苦痛でかなり時間がかかりましたですよ。主に通勤電車のなかで読んでましたが、読んでる最中に何回寝落ちしちゃったか覚えてないくらいだ…。

 というのもですね、今回の話の内容っていうのがわたしが苦手とする戦記ものだったから。前2作のなかで色々と揉め事に首をつっこむことになってしまったアラトリステが、ほとぼりを冷ますためにマドリードを離れ、フランドルでの戦争に傭兵として参加してるもんで、ディエゴ・ベラスケスが描いた有名な絵画『ブレダの開城』 (プラド美術館所蔵) をモチーフに、ほぼ全編にわたってフランドルでの戦闘の様子が描写されてるわけなんですよ。

 せっかくお馴染みになってきたアラトリステの友人たちや、邪悪な美少女・アンヘリカ嬢、口笛がお得意の殺し屋・マラテスタなどの出番はほぼ皆無と云ってよく、ドラマの部分ではいまひとつ山場がないままだったのです。
 語り手であるイニゴ少年から見た戦争なので、アラトリステとその周囲の局地的な戦闘が主体で、その戦闘がブレダの攻防にどんな風に影響しているかなど、この戦い全体を俯瞰的に見渡すような構成になってないってのも、盛り上がりに欠けるように感じた一因なのかもしれません。

 戦記ものが好きな人や、ヨーロッパ史のなかでもオランダの独立戦争に興味がある人はまた違った印象を覚えるのかもしれないけど、どちらにも食指が動かず視覚的想像力に乏しいわたしは、どうも頭に情景が思い浮かばなくて話に入り込めないままだったのでした。映画ではこういう戦闘シーンが派手な見せ場になるんでしょうけどね。

 17世紀ごろの戦争は、兵士のお給料を戦闘を指揮している最高司令官たる将軍が国家から戦費が支払われるまで立替払いをしていた、とか、戦場で互いに塹壕の下に坑道を掘り、その狭いトンネルにもぐりこんで戦闘が行われることがあった、とか、今まで知らなかったことが話に盛り込まれていて、思わず「へぇ~」と感心するような部分もあったんですけど、そういう豆知識というか雑学的なおもしろさを求めてるわけじゃないんだよ~。

 アラトリステの従者で、今回は「荷物持ち (モチレロ)」として彼の側についているイニゴくんが、どんどん成長して一人前の男に近づいている様子はしっかり感じとることができました。
 アラトリステに対する変わらぬ崇拝の気持ちや愛情と同時に、彼に対する反発心も芽生えてきてるんですね~。うーん、イニゴくんも思春期に入ったってことですなぁ。
 アラトリステはそんなイニゴにお説教するわけでもなく、黙って静かに見守っている、のかな?? イニゴを見て、自分の十代のころを思い出しているのかもしれない。しかし、とにかく寡黙な男なもんで、自分の感情を表に出すようなエピソードもなく、なにを感じ、考えているのかさっぱりわからんのであった(笑)。

 あと、本の末尾で「編集者による注釈」として、現在残されているベラスケスの『ブレダの開城』に 、「アラトリステが描かれている」とイニゴが明言しているのにもかかわらず、彼の姿が見当たらないのはなぜか? なんてことを至極もっともらしく論じちゃったりしてます。こういう悪ノリなところ、好きだわ~(笑)。

 第4巻は3月末に発売予定だそう。果たして「アンヘリカ・デ・アルケサルが私 (イニゴ) のために考え、1625年に実行に移した計画」とやらの詳細はわかるのでしょうか? ブレダの攻防戦は1624年に終わっているので、時間の流れどおりなら次作はこの事件の話になりそうな気がするんですが。とにかく「ブレダの太陽」よりは冒険活劇らしい話であってほしいです。
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by nao_tya | 2007-01-17 23:48 | 読書感想etc.