映画や本の感想アレコレ。ネタバレにはほとんど配慮してません。ご注意! 


by nao_tya
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映画感想:『キンキーブーツ』

〔ストーリー〕
 チャーリー (ジョエル・エドガートン) は父親の急死によってノーサンプトンの伝統ある靴工場の跡をついで社長となった。しかし工場の経営状態は最悪で倒産寸前。そんなとき、偶然出会ったロンドンはソーホーのカリスマ・ドラァグクイーン、ローラ (キウェテル・イジョフォー) からヒントを得たチャーリーは、キンキーブーツを生産して工場の立て直しを目指すのだが…。


原題:KINKY BOOTS
監督:ジュリアン・ジャロルド
脚本:ティム・ファース、ジェフ・ディーン
出演:ジョエル・エドガートン、キウェテル・イジョフォー、サラ=ジェーン・ポッツ

 ジュリアン・ジャロルド監督の映画キンキーブーツを観てきました! 予告編を観て、「これは絶対わたし好みの映画だ!」と思ってたんですが、その予感は外れることなくとっても楽しんでまいりましたよ~。
 この映画、イギリスはノーサンプトンにある靴工場が、ドラァグクィーン向けの女王さまブーツ (キンキーブーツ) を生産することで再生したという実話をベースにしているそうで、ストーリー展開なんかはドンデン返しがあるわけでもなく、予想がついちゃいます。
 だがしかし、気弱で優柔不断な若社長チャーリーを演じたジョエル・エドガートンと、とっても強気で女王さまなのに実は繊細なローラ役のキウェテル・イジョフォーがまさにハマリ役。まったく対照的なようでいて、奥底に同じ悩み (自分の居場所がわからない。どこにいてもなんだか“浮いている”自分を感じてしまう) を抱えているふたりの二人三脚での奮闘ぶりが感動的です。
 わたし、どちらの俳優さんも初めてで観覚えがないわ~などと思いながら映画を観てたんですが、家に帰ってパンフを読んだらちゃんと出演作を観てましたよ。ジョエル・エドガートンは『スター・ウォーズ』シリーズのエピソード2、3で後にルークの育ての親となるオーウェン・ラーズや『キング・アーサー』のガウェインを演じてたし、キウェテル・イジョフォーは『ラブ・アクチュアリー』でキーラの旦那さま役だったのでした。
 エドガートンは云われてみれば「あぁ、あの!」と思えたんですが、イジョフォーは本当に予想外で「うそ~」って感じ。『ラブ・アクチュアリー』のDVDをひっぱり出して見直しちゃったよ(笑)。『ラブ…』では好感度大のおしゃれな若夫婦の旦那さまで、女性的なところなんて皆無なんだもん (←アタリマエ)。いやぁ、役者さんの演技力ってすごい。ゲイ達者ってこのことよね~。
 さてさて、映画の内容はといいますと、ストーリーは最初に云ったように「キンキーブーツで工場が持ち直す」というのが見る前からすでにわかってるので、意外性はありません。その意外性のなさをチャーリーとローラというよく立ったキャラクターの力と、あと映像の見せ方のうまさでカバーして盛り上げて、グイグイ引っ張っていっちゃう。
 冒頭の波止場で赤い靴を履いてステップを踏むサイモン少年 (後のローラ)、地面に倒れたチャーリーのぼやけた視界に映る鮮やかな赤いヒール、次々とベルトコンベアに乗って流れてくる地味な紳士靴のなかにスックとそびえるド派手なキンキーブーツ…。印象的なシーンが本当にたくさんありました。
 「What could I do? (どうしたらいいんだ?)」が口癖で、婚約者のお尻にひかれっぱなしだったチャーリーが父親の影から飛び出して、自分の持ってるものをぜーんぶかけてまで勝負に出ようとするのはいいんだけど、その意気込みが空回りしちゃって職人気質の従業員と衝突しちゃったり、婚約者とトラブるとローラにきつくあたったりと、男らしかったりカッコよかったりはなりきれなくて、どこか情けないところが人間的ですごく良かった。
 対するローラはかなりゴツくてですね、女装しててもとてもじゃないけど女性には見えない。最初に観たときは「こりゃチトきびしいよ…」と、ちょっと引いちゃうような迫力が(笑)。そんなローラが話が進むにつれ、どんどんチャーミングでかわいらしく、美人にも思えてきてしまうのが役者さんの底力。ドラァグクィーンたちのショーの様子もキラキラ・派手派手でめちゃくちゃ楽しい! イジョフォーの歌がこれまた上手いんだ~。
 工場があるのは田舎町で、ローラやチャーリーの周囲の人たちも基本的に保守的なんだけど、B&Bの経営者のおばあちゃんが思いもかけぬほどの寛容さを示したり、偏見や思い込みを捨てた人たちが見せる優しさがとてもあたたかいです。ひとつひとつのエピソードがユーモラスで生き生きしてて、登場人物がみんな愛すべき人たちばかりなんだよね。
 はっきりとは出てこないけど、ローラはチャーリーに淡い恋心くらいは持ってたようで、なのにチャーリーは徹頭徹尾ノーマルのうえにニブチンときてる。もちろんチャーリーはローラのことを大事な人間だと思ってるんだけど、まったく彼女の女心に気付かないままなのがいかにもって感じです。ミラノのショーが行われたランウェイのうえでキスするチャーリーとローレンの姿を見つめるローラのまなざしがちょっぴり切なかったわ~。
 靴というものをとおして、自分のピッタリの靴 (=生き方) が見つからなかった人たちが、最後には「これだ!」と思えるものを見つけるっていうのは『イン・ハー・シューズ』と似通ったテーマですね。ただ、『イン・ハー・シューズ』は演じてる役者さんたちが有名どころすぎて、演技の上手下手は関係なく役上のコンプレックスが希薄になってしまった観があるのに比べ、こちらは素直に共感できました。観たあとで元気になれる、ほのぼの&さわやかに良い映画。お勧めです~♪

●映画『キンキーブーツ』公式サイト

キンキー・ブーツ・オリジナルサウンドトラック
サントラ キウェテル・イジョフォー カースティ・マッコール リン・コリンズ ジェームス・ブラウン ニーナ・シモン / カッティング・エッジ
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by nao_tya | 2006-10-01 18:08 | 映画感想etc.