映画や本の感想アレコレ。ネタバレにはほとんど配慮してません。ご注意! 


by nao_tya
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映画感想:『ゲド戦記』

〔ストーリー〕
 多島世界“アースシー”では世界の均衡が崩れつつあった。疫病がはやり、魔法使いの多くはその力を失い、西の果てに棲む竜が人間世界に姿を現して共食いをするなど異常な現象が起こっていた。大賢人と呼ばれるハイタカ (ゲド) はその均衡を崩す原因を探す旅の途上でエンラッドの王子アレンを助けるが、アレンは父王を刺してその剣を奪って逃亡中の身であった…。


監督:宮崎吾朗
原作:アーシュラ・K.ル=グゥイン
原案:宮崎 駿
脚本:宮崎吾朗、丹波圭子
声の出演:岡田准一、手嶌 葵、菅原文太

 久しぶりに土曜日出勤ナシのうえに3連休! ということで、宮崎吾朗監督、映画ゲド戦記を、旦那さまが社員旅行中でヒマにしていた姉とふたりで観てきました。
 アーシュラ・K.ル=グゥインの原作は小学生のころに読んでまして (4巻以降は未読)、読んだときの印象がとっても強烈だったせいか、予告で流れる映像と自分の持っていたイメージがどうもうまく一致せず、映画を観るかどうか迷ってしまい、公開からかなり間をおいての鑑賞となりました。
 でもって観たあとの感想をひと言で表すならば、「これはル=グゥインの『ゲド戦記』じゃないな~」ですかね。いやまぁ、小説を映画化・アニメ化するんだから、原作そのものであるわけがなく、宮崎吾朗監督の“色”ともいうべきものが出てて当然なんですが、それでもこの映画はル=グゥインの作り出した世界とはまったく違う世界を描いているように思えます。
 全体的になだらかで大きな起伏がなかったのに、最後はすごく唐突な展開なのには戸惑いましたが、だからといって決してつまらないわけでもなく、それなりにおもしろく観ました。ただ、原作のあちこちからつまんできたエピソードがうまく融合していないように感じたのと、物語の謎というよりただ単に説明不足なだけなんじゃないのだろうかと思うところが多くあったように思います (テルーと竜の関係、アレンと父王の関係、アレンが父王から奪った剣のことなどなど…)。
 アレンを追いかける影の存在の意味が原作とは正反対なことをはじめ、多分監督の頭のなかで原作をなぜ改変したのか、改変の必要性はきちんと整理されて説明がつくようになってるんだろうけど、映画を観ているだけではそこらへんが上手く伝わってこなかったのが残念ですね。
 映画の大きな主題として「死を受け入れたうえで命を大切にして生きること」を訴えていると思うんですが、これは素直に納得。でも、この説得力はストーリーに力があったというより、ゲドの声を演じた菅原文太さんの声と語り口にあったんじゃないかしらん。伝えたいことをキャラクターの行動やエピソードに託すんではなく、すべて台詞にして語らせてしまっていたような…。だから妙にのっぺりとしたストーリー展開になってしまったし、ちょっと説教くささも感じることになったんじゃないかな。
 映画とは関係ないですが、実はわたし、原作の『ゲド戦記』を読んだとき、ゲドの一人称が“わし”だったことに衝撃を受けまして(笑)。当時壮年期の男性が周囲に少なかったし、一人称が“わし”なんて人もいなかったもので、「なんてジジくさいしゃべり方なんだ!」と驚いたんでございますよ。でも、菅原文太さんの声で想像すると全然違和感がないので、今後原作を読むときは菅原ゲドを頭において読みたいと思います(笑)。
 手嶌葵ちゃんの挿入歌「テルーの唄」はあの淡々とした歌い方にかえって雰囲気があって良かったですね! でも台詞はかなり棒読み…(笑)。岡田准一くんのアレンは生きる気力もないボソボソしゃべりから、ラスト近くに一転力強い声になって、悪くはないけど、うーん、ちょっと別人みたい!? でもこれはストーリー展開上しかたがないことですね。
 ところで、クモって田中裕子さんが声を担当してるし、ヴィジュアルがどっちつかずな感じでしたが、あれって男性なんだよね?? 抑えた陰鬱な口調のなかにも暗~い情熱が感じとれましたです。
 ヴィジュアル的にはさすがジブリ作品だけあって美しい! アレンと竜が向き合うところ、竜の飛翔シーンはため息が出ます。平原からいきなりホート・タウンの街並みが開けたところは特に圧巻でありました。背景美術はクロード・ロランの絵をモデルにしてるそうですが、今までのジブリ作品とはちょっと違う絵画的な感じでそれが良かったのかも。
 クモを倒すことで簡単に世界の均衡が元に戻ったかのようなラストや、「罪を償う」とは云うけれど父親、しかも王さまを殺してしまった(?)アレンが償う方法って…? など、疑問もいろいろあります。しかし、ジブリ作品、宮崎駿氏の息子さんが初監督といった観る前からいろいろ余計なものがくっついている映画のわりに健闘しているほうなんじゃないかな~と思いました。ル・グゥインのファンからすると色々あるやもしれませんが、まぁそれは横においといて (←おくな! とツッコミが入りそうですが/笑)。

●映画『ゲド戦記』公式サイト
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by nao_tya | 2006-09-17 23:44 | 映画感想etc.