映画や本の感想アレコレ。ネタバレにはほとんど配慮してません。ご注意! 


by nao_tya
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読書感想:エリス・ピーターズ 『修道士カドフェルの出現』

 エリス・ピーターズ女史の「修道士カドフェル」シリーズも本当に最後となる短編集『修道士カドフェルの出現』を読み終えました。21巻の道のりを思うと感無量ですな~。
 さて、この『修道士カドフェルの出現』には3つの短編が収められていますが、「ウッドストックへの道」がやはり印象深いです。これは十字軍兵士、船乗りと、居所を定めずにきたカドフェルがいかにして修道士になる決意をしたのか、そのきっかけが描かれています。
 それまでの人生のほとんどを携えて過ごしてきた「剣」を祭壇にささげるシーンは、短いながらもカドフェルの深い決意と満足が読み取れて、静かで良いシーンでありました。
 シリーズが始まったころは60歳近くで、いい意味で枯れて落ち着いていたカドフェルですが、この「ウッドストックへの道」ではまだ40代に入ったばかり。人間観察が鋭いところなど随所にカドフェルらしさが出てきますが、反面どんな事態にも対処できる歴戦の戦士であり、まだまだ血が熱いところを垣間見せてくれてました。
 あと、シリーズ中ではすっかり年老いて、平穏を愛するあまり果断さにはかける部分が見受けられたヘリバートが副院長として登場してるのも、シリーズを読んできた人間にはうれしかった! しかも当時の院長の代理として大事な裁判に出席し、穏やかながらなかなかの有能ぶりを発揮してくれるんだから驚きです。そりゃまあ修道院の院長にまでなる人なんだから考えてみたら無能なはずはないんだけど、長編を読んでいるだけではこういう姿は想像できませんからね~。誰にでも若くいわゆる“現役”と呼ばれる時代があるんだということを思い出させてくれました。
 そして、このシリーズには全編をとおして時代背景にスティーブン王とモード女帝の王位を巡る争いというのがあるわけですが、この騒動の遠因ともいえるヘンリー1世の嫡子ウィリアム王子の死亡というニュースが「ウッドストックへの道」のなかでもたらされるのも感慨深いところ。まさにシリーズの始まりというのにふさわしいお話だったと思います。
 「光の価値」では若いカップルの恋の行方が、「目撃者」では親子の愛情がそれぞれ描かれていて、どちらも短いながらも「修道士カドフェル」シリーズの匂いが濃厚な小品です。おなじみのヒュー・ベリンガーが出てこなかったのがちょっと淋しかったですけどね!
 わたしが読んだのは事務所のU地さんにお借りした社会思想社の現代教養文庫だったんですが、巻末にはこの「修道士カドフェル」シリーズのガイドが掲載されていて、略年表やら修道院の日課やら、詳しい解説がたっぷり。シリーズを読んだことがある人間ならかなり楽しめる内容です。これって光文社文庫版にも収録されてるのかな?
 カドフェルの新作がもう読めないのはすごく残念ですが、これから自分で少しずつ光文社文庫版を集めていって、好きなシーンをつまみ読みしたいと思います(笑)。
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by nao_tya | 2006-07-25 23:46 | 読書感想etc.