映画や本の感想アレコレ。ネタバレにはほとんど配慮してません。ご注意! 


by nao_tya
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読書感想:G.P.テイラー 『シャドウマンサー』

 G.P.テイラーの『シャドウマンサー』を読了しました。さすがに原書を読んでストーリーの流れをつかんでいるとページが進むのが早かった!
 主人公は、父親は幼いころに亡くし、母親も火事で施療院に入れられたため、海岸の洞窟でひとり暮らすことを余儀なくされた少年トマス。不思議で強大な力を持つケルヴィム像を邪悪なデマラル牧師から取り戻すため、はるばるアフリカからやってきたラファーとトマスが知り合い、トマスの幼馴染の少女ケイトも加わった3人でケルヴィム像奪還の冒険が始まります。
 原書を読んでいたときは大まかな話がわかればいいや~と考えて、目当てのショーン・ビーンがモデルだというジェイコブ・クレインの出番以外はわりと情景描写は流し読みぎみにしてたので、今回はそこらへんもしっかりチェック。しかしながら、原書で読んだときと印象はさほど変わらないままでした。つまり、登場人物が多かったのと、後半を急ぎすぎたせいで中途半端な部分が多い。おもしろくないわけじゃないんですけど、手放しでお勧めはできないって感じ。
 あと、牧師さん (テイラー氏は今は牧師さんではないらしい??) が教区の子どもたちのために書いたお話だけあって、キャラクターたちが神さま (この物語世界ではリアタムスさま) を受け入れる過程が「そんなに簡単に信じていいの!?」ってくらいすごくあっさりしてる。で、神さまや信仰に対する考え方がかなり前面に出てくるのも、今ひとつ話の乗り切れなかった原因ではないかと思います。
 神さまはいつでも自分の側にいて見ていてくれるけれど、それに気付いて神の声を聞くためには、まず自分が神さまの存在を信じて受け入れる心が必要だ、ということが繰り返し作中で語られてるんですね。こういう感覚って、宗教が身近にないわたしにはちょっとなじめないものがあるんだな~。神の存在を感じることができてはじめて信仰心が生まれるんじゃなくて、信仰心があるから神の存在を感じられるってのはピンとこない。うーん、なんか卵が先が鶏が先かって話になりそうですが(笑)。
 子どもたち3人と悪役のデマラル牧師以外にも登場人物がゾロゾロ出てきて、なかなか魅力的でおもしろいキャラクターもいます。しかし、彼らはほんの少し話に絡むくらいであまり掘り下げられず、最終的に彼らがどうなったのかに触れられないままエンドマークが打たれてしまい、消化不良な気分になっちゃうのでした。
 また、少年・少女が主人公の物語だと、どうしても彼らが冒険を通じていかに変化するか、成長するかっていうことに注目しちゃうんですが、そこらへんもこの『シャドウマンサー』はいまいち弱い気が…。
 特にラファーがなんていうのかな、完全に“できあがっちゃってる”ので、どんな状況に陥っても弱さを見せないというか揺らがないんだよね。最初から最後までリアタムスを心の底から信じていて、トマスやケイトを導く役割も担ってるんですが、はっきりいって彼には隙がなさすぎておもしろみがないのよ~(笑)。
 その点、父親のだらしなさは自分のせいだと考えて、男の子のような格好をして強気に振る舞うケイトはすごくかわいい。父親のウソを知って怒る気持ちもよくわかる。でも、そこから大人の弱さや狡さを受け入れて和解するとか、少し距離を置いて冷静に父親のことを見ることができるようになるとかのフォロー部分が一切ないんだなぁ。なので、読み終わったあとで「ここの部分を置いてけぼりにしていいのか!?」と愕然としちゃったのでした。
 トマスについてもケイトと同じように腑に落ちないことがあります。母親のことを心配していて、父親のことに全く言及しないままイギリスを去ろうとしているケイトに腹を立てていたくせに、グラッシャン (ロード・オブ・ザ・リングに出てくるナズグルみたいな奴です) が母親に成り代わっていたことがわかったあと、母親の行方について気にしてないどころか忘れてるみたいなのがね、どうにも納得いかないですよ。
 期待のジェイコブ・クレインもおいしいところをエイブラムに取られちゃって、最後の戦いのシーンに颯爽とトマスたちを助けに登場するものの、それまでの過程が一切省かれているので唐突感が否めない…。どうやって教会にトマスたちがいることを知ったのだ? 最低限の説明くらい省かないでくれよ、テイラーさん! 悪人なのか善人なのか判然としないところとか、初登場のシーンとかはカッコ良かったんですけどね~。
 あらら、こうやって挙げていくと不満ばっかりになってしまった(笑)。いや、ひとつひとつの素材やエピソードはおもしろいと思うんです。だから最後まではとにかく読んでしまう。ただ出したい要素を出すだけ出して、それが整理されてなかったり中途半端なまま置いてけぼりにされるので、散漫な印象が残って不満がくすぶるのだ。それでも力技で最後は希望の船出にしちゃうところがスゴイんだけど。
 帯に「イギリスで“Hotter than Potter (ハリポタよりすごい)”と大絶賛」とかありますが、宗教的な素地がまずヨーロッパとは違うので、過剰に期待せずに読んだら、波乱万丈なお話だしそれなりに楽しめるんじゃないかな~と思います。…あまり確信は持てませんが (←原書で読んだ方のレビューがみんな芳しくないので弱気/笑)。
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by nao_tya | 2006-07-10 22:46 | 読書感想etc.