映画や本の感想アレコレ。ネタバレにはほとんど配慮してません。ご注意! 


by nao_tya
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読書感想:アルトゥーロ・ペレス・レベルテ 『アラトリステⅠ』

 アルトゥーロ・ペレス・レベルテの『アラトリステ』を読み終えました~。このシリーズがヴィゴ主演で映画化されると知って、英語版で半分くらい読み進めていたせいで人間関係がある程度頭にあって、思ったよりもずいぶん早くページが進みましたよ。
 17世紀のスペインを舞台に、退役軍人のディエゴ・アラトリステが活躍する冒険譚の第1巻なんですが、今回はこれからも出てくるであろう様々な登場人物たちが顔見世程度にちょこちょこ出てきてまして、アラトリステや彼の亡き友人の忘れ形見で従者となっているイニゴ少年以外は、それぞれ特徴はあるもののあまりはっきりした性格付けまではわからない感じでした。2巻以降は彼らがどんどんアラトリステに絡んできてその個性を発揮してくれることを期待したいです。
 アラトリステは戦場で負傷して退役してからは、マドリードで剣客として雇われ仕事をして身を立てています。ある日、ふたりのイングランド人に関する依頼を引き受けたことから騒動に巻き込まれていくことになります。
 歴史的事実とフィクション、実在の人物と物語のために創造された人間がうまーく絡み合ってるし、展開も早く、さらりと読めておもしろかったです。一応1巻でひとつの事件は解決していますが、まだまだ波乱万丈な展開が待ち受けていそうなのも楽しみ。この話を読むと、もう一度ヨーロッパ史をお勉強したくなりますね(笑)。
 アラトリステは無口でどちらかと云えば無愛想な男ですが、イニゴ少年を気遣っているしかわいがっている様子がほの見えてなかなか良い感じです。人に雇われて剣の腕を奮うのが仕事だけど、彼のなかには譲れない一線 (例えば応戦する用意のない人間に切りつけたりしない、とかね) というのが存在していて、頑ななまでにそれを守ろうとするために窮地に陥ることもあれば、逆に救われることもある、というのがすでに第1巻からわかります。
 友人にこういう男がいればとても心強く、なにかことが起こったときに頼りになる存在です。ただし、金銭的な援助の申し込みはとてもじゃないけどできそうにないですが。なにせ1巻は借金が払えないために刑務所に入れられていたアラトリステが、ようやく釈放されたところから始まるんだから(笑)。 
 長く戦場で過ごしてきたせいで、運命論者になっているというのは、「ホーンブロワー」シリーズのホレイショと同じですね。戦争という大きな渦のなかにいると、自分の努力だけではどうすることもできない事態というのが必ずあって、「運命」の存在を信じるようになるということなんでしょうか。
 イニゴ少年もなかなか機転が利くし、勇気があってすごくかわいいです。今はわずか13歳ですが、将来はなかなか有望そうですよ~。
 そして不気味な存在としてこれからアラトリステの行く先に影を落としそうなのは、異端審問所長官・ボカネグラ師。すっかりわたしのなかのヴィジュアル・イメージは『白バラの祈り―ゾフィー・ショル、最後の日々』のフライスラー裁判官 (アンドレ・ヘンニック) でございました。や、なんかこのお二方、イメージが重なるところがあるんだもん。
 あともうひとりアラトリステの仇敵となりそうなのは、イタリア人の刺客・マラテスタ。殺しを楽しむタイプの男で、「ティルリ、タ、タ」と口笛を吹くのが癖みたい(笑)。敵にはとにかく容赦がなさそうだし、卑怯な手も平気で使う男ですが、イニゴに手を出さず意味深な言葉を残すあたり、アラトリステ同様に結構フクザツな内面を持っていそうです。
 あとひとり気にかかるのは、イニゴ少年がすっかりのぼせちゃってる美少女・アンヘリカ。イニゴと同じ年齢ながら、すでに誰に教わるともなく人を誘惑する術を心得ている少女で、将来は悪女間違いなし! という雰囲気が漂ってます。登場シーンはほんの少しなのにかなり強烈なインパクトがありました。まだまだ純真なイニゴが彼女によってひどい痛手を受けそうな予感がヒシヒシと…。そうなった場合、もちろんその主人のアラトリステも、その余波を受けること間違いなしでしょう。
 物語が大きく動き出すのはまだまだこれから! という感じですが、かなり面白そうでこれから出版される5巻まで期待が膨らみます。丁寧な注釈もついていて、17世紀のヨーロッパの歴史に通じてなくても読みながら理解できるようになっているのもありがたいです。
 残念なのはこの第1巻の第1刷には行抜け・行過多、誤字・脱字などがポロポロあることですかね。正誤表などが翻訳者さんたちのサイトにすでに上がっていて、こういうところはネット時代のありがたみを感じます。重版がかかればもちろん訂正されていくでしょうけど、そのためには第1刷分が売れないとな~。映画の日本公開が決まれば後押しになるんだろうけど、どこか買ってくれないものでしょうか。アメリカでの興行成績しだいなのかしらん。

●映画『Alatriste』公式サイト (スペイン語)
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by nao_tya | 2006-07-05 23:27 | 読書感想etc.