映画や本の感想アレコレ。ネタバレにはほとんど配慮してません。ご注意! 


by nao_tya
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映画感想:『アイ・アム・デビッド』

〔ストーリー〕
 第二次世界大戦直後のブルガリア。幼いころに強制収容所に入れられた12歳のデビッドは、ある男の指示により収容所を脱走し、デンマークを目指すことになった。手許にあるのは男から預かった手紙、少しのパン、石鹸、折りたたみ式のナイフ、コンパスだけ。果たしてデビッドは無事に目的地にたどりつくことができるのか…。


原題:I AM DAVID
監督:ポール・フェイグ
原作:アン・ホルム
脚本:ポール・フェイグ
出演:ベン・ティバー、ジム・カヴィーゼル、ジョーン・プロウライト

 劇場公開中に観たいな~と思ってたんですが、上映期間が短くて観逃してしまっていた『アイ・アム・デビッド』がCATVで放映されたので、録画しておいたのをようやっと観ました!
 チラシなどの情報から、「少年がひとりで収容所から脱走、母をたずねて三千里」な話なんだ、という先入観があり、なんとなく派手な展開を想像してしまっていたので、思っていたよりずいぶん淡々とした静かな話の進み具合にまずはビックリしました。
 それに、デビッドはとにかく指示されたとおりにデンマークを目指しているだけで、旅した先になにが待っているのかなんてまったく知らない状態。キャッチコピーの「母への想いを胸に、云々」というのも、観たあとではどうも的を外しているような気が…。まぁこういう宣伝文句と映画の内容がズレてるってのはよくあることなんですけど、「なんでこうなるの??」と首をかしげずにはいられませんですな。
 しかし、淡々としたなかにも逃亡の緊張感や心あたたまるエピソードがちりばめられ、最後には思いもよらぬ感動がありました。
 ベン・ティバーくん演ずるデビッドは幼いころから収容所暮らしで、“楽しい”ということをなにひとつ知らないまま12歳になってしまった少年です。ずっと思いつめたような暗い瞳をしていて、練習してもなんだか引きつったような笑いしか顔に浮かばない、そんなデビッドが、旅のなかでいろんな人々と触れあいを重ね、少しずつ収容所以外の世界の知識を身につけ、他人を信頼して心を開くまでになる過程が丹念に描かれます。
 同じ年頃の少女と出会って初めて自然に笑顔が出たことに自分で驚くところはすごくカワイイし、ソフィと出会って徐々に警戒をほどいて彼女にすがって泣くのに、それでも本当のことを打ち明けることができない様子は観てるのも辛いほど。かわいそうで泣けてきちゃいます。
 デビッドと出会う人たちは概ねいい人で、密航した船の船員さんもこずるいところはあるけど本当の悪党じゃない。でも、経験値が圧倒的に乏しいデビッドにはそういうことがまったくわからない。そこが観ていて非常にもどかしかったです。
 デビッドに脱走を指示する人間は最初は声だけしか出てこなくて、誰なのかはラスト近くまで明かされません。そこが明らかになる一連のシーンでは、それまでチラチラ登場していたシーンが一瞬でつながって、全体の絵図が見えたときには本当に驚きました。それと同時にすごーくスッキリした気分に。うーん、神経衰弱で最後の何組かを一気に当ててめくっていくときの爽快感と似た感じ!
 教会のなかで人々の歌を聞きながらゆっくりとデビッドがそれまでの経験を消化していくことで、収容所を出た当初は恐怖の対象でしかなかった自分以外の人間が、デビッドの目に暖かく活き活きと写るようになる様子はとても印象的です。
 舞台はブルガリアの収容所 → ギリシャ → イタリア → スイスと移動していきますが、けっこう大ざっぱで強引な展開もあり、少年ひとりがお金も頼るあてもなく旅をしてこんなにうまくいくものかしらと思う部分もなくはないですが、健気なデビッドを応援したい気持ちから、まぁいいじゃないか~とうい気分になっちゃいました。
 収容所で唯一のデビッドの友人ヨハンを演じたジム・カヴィーゼル、看守(?)役のフリスト・ショポフも非常に良かった! 目と目で会話して、すべてを受け入れるヨハンのまなざしが泣かせます。このふたり、メル・ギブソン監督の『パッション』でも共演してるんですよね。まだ観てないので今度チェックしたいと思います! 幼い息子を亡くすという経験があるからこそ、デビッドの心をほぐすことのできたソフィ役のジョーン・プロウライトも、暖かく包容力があって好感度大でした。
 収容所の悲惨な実態などはフラッシュバックシーンが多いせいかぼやかされ、脱走したあとはヨーロッパの美しい風景が映し出されて全体的におとぎ話みたい。観たあとはじんわりと感動できる小品でした。わたしはツボに入っちゃって、飛行機のシーンのあたりでボロボロ泣いてしまったんですけどね~。

●映画『アイ・アム・デビッド』公式サイト

●原作本
アイ・アム・デビッド
アネ ホルム Anne Holm 雨海 弘美 / 角川書店


●DVD
アイ・アム・デビッド
/ ポニーキャニオン
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by nao_tya | 2006-06-29 23:27 | 映画感想etc.