映画や本の感想アレコレ。ネタバレにはほとんど配慮してません。ご注意! 


by nao_tya
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31

読書感想:セシル・スコット・フォレスター 『決戦! バルト海』

 「海の男/ホーンブロワー」シリーズ第8作『決戦! バルト海』を読み終えました。第7作『勇者の帰還』のあと、うっかり飛ばして第9作『セーヌ湾の反乱』を読んでしまっていたので、ブッシュさんの元気な姿が登場したときはすごく懐かしい感じがしました(笑)。
 今回、ホーンブロワーはヨーロッパ各国の思惑が複雑に絡みあうバルト海へ、戦隊司令官 (コモドー) として派遣されることになります。旗艦はノンサッチ号。艦長はブッシュさんです! 艦長に誰がほしいかと問われたホーンブロワーが、ブッシュさんの名前を即挙げるところは読んでいてとてもうれしく、思わず顔がニヤニヤしちゃいました。
 ホーンブロワー曰く、「おそらくもっと頭の切れる艦長も、もっと才気縦横の艦長も、よりどりみどりだろうが、彼が欲しい艦長はただ一人しかいなかった」ですってよ~。
 自分がご機嫌斜めなときには八つ当たりの対象、いわば精神的サンドバッグにしてる(!)ブッシュさんですが、やはり長い作戦期間を一緒に過ごす自分の旗艦の艦長には、気心の知れたブッシュさん以外には考えつかないというあたり、泣かせるじゃありませんか。
 もちろんブッシュさんのホーンブロワーに対する友情・信頼の気持ちも変わりありません。というか、ブッシュさんは本当にホーンブロワーのことを大事にしてるのね、と思わせる一文が。「ブッシュはまるで、向こう見ずな子供を持つ心配性の親―ヒヨコを一羽かかえた雌鳥だ。彼はいつも、どう転ぶかわからないロシア人に、自分の大事なホーンブロワーを任せるのを不安がる」。で、ホーンブロワーもそのことを承知していて、虫の居所が悪いとむかっ腹を立てるんだけど、どこかでそれを嬉しく思ってるんですよね~(笑)。
 『勇者の帰還』でも有能ぶりを発揮していた艇長のブラウンも、相変わらずホーンブロワーをしっかりサポートしています。気難しいホーンブロワーの性格を飲み込んでいて、うまーく立ち回って気を利かせるところなんて、なかなかほかの人間に真似できるもんじゃないと思います。
 シリーズが始まって以来、新たな任務について海に出た当初は必ず船酔いに悩まされ、艦長になってからはそれをほかの乗務員に知られまいとけなげな努力を重ねていた (でもイマイチ功を奏してなかった/笑) ホーンブロワーが、この航海では初めて船酔いから解放されているのも特筆すべきことかと…。
 彼の船酔いは、いつでも不足しがちな乗員の頭数をそろえることや、なかなか届かない物資の調達に出帆間際まで忙殺され、体調が最悪なまま航海が始まるのが主な原因だったわけで、司令官となった今回はそういった雑事に煩わされることがないんですよね。なんとか威厳を保とうとキリキリしてるホーンブロワーを見る機会が減るのはちょっと残念な気もしますが、まずはめでたいことです(笑)。
 しかし、艦長としての苦労がなくなっても司令官としての苦労が出てくるわけで、作戦全体の責任を負って、立案した戦闘の結果をただ待つだけという重責はもちろん、艦内の指揮に関しては気がつくところがあっても口出しできないので、ブッシュにそれとなーく気付かせるように気をまわしたりと、なかなか大変そうです。
 ナポレオンの侵攻が間近で、フランスと開戦するか否かが微妙なロシアをイギリス側に引き入れるべく、ホーンブロワーがロシア皇帝を前に一席ぶつシーンなども出てきます。複雑な国際情勢が描かれて、いつもの冒険活劇とはちょっと違うところも目先が変わっておもしろかったです。ロシア皇帝の晩餐会に招かれたホーンブロワーが、勝手のわからないなかでかなり苦しい思いをするところなんかは笑えました。
 後半からはリガの陸戦が主になってしまいますが、ホーンブロワーのひらめきは変わらず、読み応えがありました。そうそう、登場人物のひとり、クラウゼビッツさんというのは実在の人物で「戦争論」という本の著者だそうな。うーん、全然ピンとこないな(笑)。
[PR]
by nao_tya | 2006-06-27 23:31 | 読書感想etc.