映画や本の感想アレコレ。ネタバレにはほとんど配慮してません。ご注意! 


by nao_tya
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読書感想:セシル・スコット・フォレスター 『勇者の帰還』

 「海の男/ホーンブロワー」シリーズ第7作め『勇者の帰還』を読み終えました! 前作『燃える戦列艦』のラストでフランスの捕虜となってしまったホレイショ・ホーンブロワーが、イギリスに帰還するまでを描いた脱出行です。
 ホーンブロワーはシリーズ2作めの『スペイン要塞を撃滅せよ』 (だったと思う…) でスペインの捕虜になったことがありまして、一応士官だったそのときの彼の処遇はさほど悪いものじゃありませんでした。退屈な虜囚生活に対する苛立ちや焦りはもちろんありましたけどね。
 で、今回はそのときより位も上がって艦長になってることだし、いきなり尋問で拷問されたりとか無茶なことにはなるまい。また同じような状態で、しばらくはフランス語の習得に励むことになるのかしら~などと呑気に構えて読み始めたら、どうも様子が違う。フランス本国で軍事裁判にかけられ、銃殺刑に処される怖れがあるっていうじゃありませんか。のっけから緊迫した展開に読んでるこっちもドキドキです。
 邦題が『勇者の帰還』なんで、無事にホーンブロワーがイギリスに帰り着くことは見えているのに、「次はどんな展開が?」と盛り上がっていくし、船乗りらしい脱出方法も想像を大きく超えていて、いつものような華やかで阿鼻叫喚な海戦はなくとも冒険小説として楽しかったです。しかし、先が簡単に予測できるこの邦題はいかがなもんでしょう(笑)。
 艦上では艦長としての威厳を保つため、やたら気難しくピリピリと神経質で、副長のブッシュさんに当たってウサを晴らしたりしているホーンブロワーですが、脱出の同行者がブッシュさんと艇長のブラウンしかいない状態ではそこまでしゃちほこばる必要もなく、比較的リラックスした素に近いホーンブロワーの様子が見られるのも『勇者の帰還』の見所かも。
 ブッシュさんを苛めながら(笑)、それでも彼のホーンブロワーに対する敬意や好意が変わらないことに、どこかで安心したり満足したりしてるホーンブロワーのひねくれ具合、複雑な心情は、わたしは実は共感するところがあって好きなんですけど(笑)、今回のブッシュさんは片足を失うという大きなハンディを背負うことになったのに、ホーンブロワーの態度がいつものごとくじゃあまりにも理不尽ですし。
 それと、予想していたとおり王党派のグラセー伯爵にかくまわれている間に、ホーンブロワーはしっかりフランス語をマスターしてしまいました。しかし、ここでわたしの耳にはアイタタな一文が登場…。「ホーンブロワーのフランス語は、絶えず使わざるをえないおかげで、急速に進歩していた。音痴なのでアクセントの呼吸はどうにもつかめなかったが」、ですって。そ、そうか~、ネイティブに近い外国語を習得するには、やっぱり音感やリズム感が優れているほうが有利なのね。いや、わたしの場合、発音云々以前にもっとボキャブラリーを増やすのが先なのは重々承知してるんですが、哀しいひと言でありました (しょぼん)。
 そうそう、フランス側に拿捕されていたカッターをホーンブロワーたちが見事に乗っ取り、海上封鎖をしているイギリス海軍の艦隊に出会ったときに登場したのがトーマス・ハーディだったのは嬉しい驚き! ハーディはトラファルガー海戦時ネルソン提督の旗艦の艦長で、ネルソン提督がご臨終の際に「Kiss me, Hardy」と云ったとか云わないとかで有名な人なのです。なんだってこんな知識があるのか、自分でもよくわからないんですが(笑)、小説の中で知ってる実在の人物が出てきて登場人物とうまく絡むとなんだか楽しいですよね~。
 しかし、奥さんのマリアの死はこの際横に置いておいて、『パナマの死闘』以来ぐずぐず引きずっていたレディ・バーバラとの仲も伸展しそうだし、明るい未来が開けてきたはずなのにどこか醒めていて心底浮かれたり幸福な気分になれないホーンブロワーって、 頭が良すぎて損するタイプだな~としみじみ思ってしまいました。
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by nao_tya | 2006-05-26 17:20 | 読書感想etc.