映画や本の感想アレコレ。ネタバレにはほとんど配慮してません。ご注意! 


by nao_tya
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読書感想:エリス・ピーターズ『陶工の畑』

 エリス・ピーターズの「修道士カドフェル」シリーズ、第17作め『陶工の畑』を読了いたしましたので感想をば。

〔ストーリー〕
 ホーモンドとシュルーズベリの修道院が互いの所有地を交換し、新しく所有することになったその土地を開墾している最中、鋤が女性の白骨死体を掘り出した。「陶工の畑」と呼ばれるこの土地は、今はシュルーズベリ修道院の修道士となっているルアルドが借地人となっていた土地だった。正式な埋葬もされず密やかに葬られたこの身元不明の亡骸はいったい誰なのか。ルアルドが修道士になることに最後まで反対し、今は行方不明になっているルアルドの妻なのか? またその死因は? カドフェルの推理が始まる…。


 この「修道士カドフェル」シリーズはわりとお決まりのパターンがあって、数冊読んだ経験があれば、話が落ち着く先とか犯人がぼんやりと見えてくるようなところがあります。この偉大なるマンネリズムとも云うべきところがこのシリーズの魅力でもあるわけですが、今回はこのパターンから幾分ずれているところがあり、そのずれたところとお馴染みのパターンがうまーく絡まりあっておもしろかったです!
 パターンと違うのは、白骨死体として発見された女性の身元がなかなかわからないというところから来ます。ルアルドの妻ジェネリーズなのかと思えばそれが覆され、やっともうひとりの候補が出てきたと思ったらこれもまた…、という具合に話が二転三転していくんですね。科学捜査がない時代ならではの、地道な聞き込みによる捜査だからこその展開。実はドラマ版を先に観てしまったため、犯人やその動機なんかはわかってたんですが、それでも話の運び方がうまくて引っ張り込まれちゃいました。
 自分の愛する人間を守ろうと懸命で一途なサリエン、身体を襲う痛みに勇敢に耐えながら緩慢に近づく死を見つめつづけるドナータ、登場シーンは少ないながら初々しくも芯の強さを感じさせるパーネルと、キャラクターたちも魅力的です。
 しかし、ドラマ版を観たときも思ったんですが、やっぱりわたしはルアルドの行動が納得できない! このルアルド、神の声に導かれて妻を捨てて修道生活に入っちゃうんですよね。捨てられた妻はもちろん愛する旦那さまが突然神の道に目覚めちゃうなんて晴天の霹靂だし、この時代のキリスト教では離婚は許されていないから、ルアルドが生きている限り再婚することもできないのです。中世の時代に女性がひとりで生きていくというのは財産があればあったで、なければもっと難しいのに。これってひどくないですか!?
 畑で見つかった死体がジェネリーズかもしれないとわかり、ようやくルアルドは彼女に与えた苦痛について思いをはせるようになるわけですが、読みながらわたしは「遅すぎるわ~っ!!」とプンプン怒っていたのでありました。いっそジェネリーズがルアルドを殺さなかったことが不思議だよ…。
 もちろんキリスト教の信者でもないわたしですから、常にどこかで神さまのことを意識しながら暮らしている人たちとの差っていうのは大きいとは思います。やむにやまれぬ神への情熱なんて感じたことないし。でもそれでもな~。ラドルファス修道院長やカドフェルはかなり合理的というか現代的な考え方の持ち主として描かれてますが、最終的には彼らだってルアルドの行動を受け入れているわけだから、この隔たりの大きさは相当なものだと感じてしまいます。
 まぁこういう感情的に納得できない部分は多々ありますが、犯人探しよりも若い恋人たちの恋の行方や、いつものキャラクターたちのやり取りを楽しむことが多くなっていた「修道士カドフェル」シリーズのなかでは、珍しくミステリとしても読みごたえのある、しっかりバランスがとれた一作だったのではないかと思います。
 お次の18作めは『デーン人の夏』。久々にカドフェルの初期のころのお弟子さん、マークが司祭となって登場するそうで、読むのが楽しみです♪
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by nao_tya | 2006-05-19 23:33 | 読書感想etc.