映画や本の感想アレコレ。ネタバレにはほとんど配慮してません。ご注意! 


by nao_tya
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映画感想:『善き人』

〔ストーリー〕
 ジョン・ハルダーはベルリンで文学を教える平凡な大学教授。ある日総統官邸に呼び出されたハルダーは、彼が数年前に書いた安楽死をあつかった小説をヒトラーが気に入ったことを知らされ、“人道的な死”についての論文を書くよう依頼を受け、引き受けてしまう。また、ユダヤ人の親友がいるために今まで避けてきたナチスへの入党を断りきれなくなってしまうのだった。


原題:GOOD
監督:ヴィンセンテ・アモリン
原作:C・P・テイラー
脚本:ジョン・ラサール
出演:ヴィゴ・モーテンセン、ジェイソン・アイザックス、ジョディ・ウイッテカー

 最近寒い日が続いていて、休日も外出するのがおっくうになっておりました。んがっ。久々にヴィゴが出演映画が公開されるとあっては観にいかないわけにはまいりません! とか云いつつ、公開初日にはいってないんですけど~。観たのはヴィセンテ・アモリン監督の『善き人』。この映画にヴィゴが出演するという情報はもちろん知ってましたが、日本では公開されないかも? DVDが出れば御の字だわ、なんて考えていたので、劇場数は少ないものの、めでたく日本公開となりとってもうれしかったです。

 観た感想はというとですね…。良い映画でした。観たあと心に深くずーんと重いものが残ってます。だがしかし、なんとも救いようがなく、身につまされる映画でもありました。ヴィゴが演じる主人公ジョン・ハルダーは本当にごく普通の人です。すこし痴呆がある母の介護をし、そんな母の世話に疲れて精神的にまいってしまった妻にかわって家事をおこない、子どもたちの世話も焼く善き家庭人。そんな彼が、時代の波にどんどん押し流されて、取り返しのつかないところまでいってしまうのが、非常に痛々しくこわかったです。

 ナチスが依頼してきた“人道的な死”に関する論文執筆を断りきれなかったこと、教え子アンと関係を持ってしまったこと、妻子と別れてアンと再婚したこと、病身の母に実家でひとり暮らしをさせたこと。ひとつひとつの出来事を決めたのはハルダー教授自身です。なぜこんな決断を? と聞かれたら、彼は「ほかに選択肢はなかった」と答えるんじゃないでしょうか。優柔不断で流されやすく気が小さい。でも自分が同じ立場に立ったとき、違う選択ができるかと問われたら「できる」なんてわたしには云えません。だって自分の身がかわいいし、目の前にある幸せだってほしくなるだろうから…。ハルダー教授の弱さはわたしのなかにも確かにあるもので、だからこそこわかったのです。

 ハルダー教授が自分にいろんないいわけをつけて選択したこと・やらなかったことが導いた結果が、映画の最後に突きつけられます。ただ呆然と立ち尽くすしかない彼の姿を、スクリーンの向こう側のわたしも言葉なく見つめることしかできませんでした。ナチス・ドイツ時代の話ではありますが、時代が特殊だからという言い訳は通じないですよね。なにもしないことの罪深さ、心のなかでこっそり批判しているだけでは、自分も結局加害者の一員になってしまうという残酷さは、いつの時代にも当てはまるものだと思います。黙っていることは自分の権利を手放すことだということも考えさせられました。あ~、でもあまりにも救いがなさすぎる…。

 この『善き人』はもともと舞台劇で、日本でも上演されたことがあるんだとか。舞台は時間軸が飛んだりミュージカル部分がはいったりするそうですが、映画ではそこらへんはすっきり整理されていました。もともとはミュージカルだったろう部分はとても印象的なシーンになっています。この、ハルダー教授の幻影・幻聴の音楽のシーンは、もしかすると彼の決心しだいで引き返すことができたターニングポイントなのかな?? 非常に淡々とした静かな描写だからこそ、じわじわとメッセージが伝わってくる映画でございました。

●映画『善き人』の公式サイトはコチラ
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by nao_tya | 2012-02-06 12:53 | 映画感想etc.