映画や本の感想アレコレ。ネタバレにはほとんど配慮してません。ご注意! 


by nao_tya
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映画感想:『あしたのパスタはアルデンテ』

〔ストーリー〕
 作家志望の青年トンマーゾの実家、カントーネ家は南イタリアのレッツェで老舗のパスタ工場を営んでいる。久しぶりにローマから帰省したトンマーゾは、共同経営者を招いた一家の夕食会で自分がゲイであることを告白しようと決意していた。ところが、夕食会の席で兄のアントニオが先にカミングアウト。アントニオを勘当した父親は動揺のあまり倒れてしまう。トンマーゾはローマに戻ることもできず、共同経営者の娘アルバとともにパスタ工場の運営を任されることに…。


原題:MINE VAGANTI
監督:フェルザン・オズペテク
脚本:イヴァン・コトロネーオ
出演:リッカルド・スカマルチョ、ニコール・グリマウド、アレッサンドロ・プレツィオージ

 よくいくミニシアターの会員権の更新時期になったので、手続きのついでになにかおもしろそうな映画を上映してたら観たいなぁと、サイトをチェックしたときにひっかかったのがフェルザン・オズペテク監督の『あしたのパスタはアルデンテ』。タイトルを見ただけではまったくピンとこなかったんですが、予告がね~、とても楽しそうだったの! まぁ予告で期待をあおられて、実際に観てみたらイマイチなんてこともよくあるわけなんですけど、この映画はまさにわたし好み。こういう映画、すごく好きです。

 まず、つかみがおもしろかった。映画が始まると思いつめた表情のウェディングドレス姿の美女が登場し、恋人らしき男性と拳銃を間にはさんでもみ合うという展開に、頭のなかは「???」…。だってこんなキャラクター、予告のなかには一切出てこなかったんだもん! 3つスクリーンがある劇場なので、入る箇所を間違えたのかと思っちゃったくらい予想外のオープニングでした。実はそれはカントーネ家のおばあちゃんの若かりしころの回想で、要所要所にはさまれるこの回想が今後の展開の重要なスパイスになってくるのです。回想シーンではセリフは一切なし。ただただ役者さんのしぐさ・表情で状況を読み取るしかなくて、ミステリアスな雰囲気が漂ってました。

 登場人物たちはみな悪い人ではないんだけど、ひと癖ふた癖、欠点もある個性的な人ばかりなのが楽しい。イタリア映画らしく、男性陣は濃ゆい系のハンサムさんがずら~り、女優さんも迫力の美女がせいぞろいで、目の保養にもなります(笑)。メインの流れは、突然息子にゲイだと打ち明けられた両親と、兄に先を越されてしまったせいで自分の告白ができなくなってしまったトンマーゾの葛藤ですが、ほかにも悩みやつらい過去の恋をかかえている人間がいて、アントニオの爆弾発言によって呼び起こされた波紋が、徐々に収まるべきところへ収まっていく様子がユーモラスに描かれていきます。

 でも、ただ楽しいだけの映画じゃなくて、ユーモアで全体を包みながら、けっこう皮肉がきいてたりもするのです。たとえば、突然の息子のゲイ宣言に混乱をきたした母親の「ずっとそばにいたんだからアントニオがゲイだとわからないはずはない!」という言葉。その言葉を聞いているトンマーゾも実はゲイで、幼いころからその自覚もあった。でも、母親は彼がゲイであるとは露ほども疑っていないわけです。トンマーゾ自身だって兄がゲイだってことにまったく気づいてなかった。このチグハグさ、互いの認識が見事なまでにすれ違ってるあたり、描き方が滑稽なので観てるとつい笑っちゃうんだけど、それと同時にちょっと切ない気分にさせられたりするんです。

 「他人が望む人生なんてつまらない」と、トンマーゾの背中を押すおばあちゃんがとても粋です。最後に彼女がとった選択肢は哀しいものでしたが、おばあちゃん本人は自分の思いに正直になって納得してたんだろうなぁと思います。おばあちゃんから家族へのメッセージはかなりグッときました~。ストーリーの最後になっても、家族が互いのことを理解しあったかというと多分そんなことはないのだけれど、わからないなりに相手をあるがままに受け容れようとしていること、互いに愛情を持っていることが伝わってきました。

 過去と現在が混在するラストのパーティのシーンはとても幻想的で、ダンスのパートナーの組み合わせがなかなか意味深でございましたよ。自分を偽らないで生きることは時に苦しいけれど、その苦しさも含めて自分の人生なんだよ、と語りかけてくるすてきな映画です。イタリア映画ってあまり観ないけれど、こういう映画ならまたぜひ観たいですね!

●映画『あしたのパスタはアルデンテ』の公式サイトはコチラ
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by nao_tya | 2011-09-26 12:35 | 映画感想etc.